「南国少年パプワくん」の魅力
久しぶりに、柴田亜美先生の「南国少年パプワくん」を読みたくなって、kindleで大人買いしました。
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「南国少年パプワくん」とは?
いやはや、懐かしいですね。
当時は「月刊少年ガンガン」の牽引役の一つとして、大人気だった作品です。
「月刊少年ガンガン」といえば、エニックスが出している雑誌ということもあって、ファンタジーもので有名だった雑誌。
最近新シリーズが終わりましたが、『ロトの紋章』の初代が全盛期だったころ。
他にも、『ハーメルンのバイオリン弾き』や『魔法陣グルグル』がアニメ化され、ゲームやCDも出されました。
後には、『鋼の錬金術師』が大人気になったのも、ガンガンですね。
ガンガンの作品は、ファンタジーテイストの中に、シリアス要素とギャグ要素が混在しているのが魅力でした。
少年誌らしい健全さと、通好みのギャグが見事に融合していたと思います。
そんな中の代表作の一つが、「南国少年パプワくん」だったのです。
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「南国少年パプワくん」との出会い
私が最初に「南国少年パプワくん」と出会ったのは、アニメだったと思います。
アニメだけだと、なんとなくシリアス:ギャグ=1:9くらいだったので、ギャグアニメのイメージでした。
もちろん、おもしろかったのですが、なんとなくエンディングが腑に落ちない感じでした。
その後、『魔法陣グルグル』にドハマりした私は、「月間少年ガンガン」を読むようになり、そこでパプワくんに再会することになります。
ところが、その時のパプワくんはは、まさにクライマックス。シリアス:ギャグ=9:1になっていたので、我が目を疑ったのを覚えています。
そして、原作の持つ、絵の力、セリフの力に圧倒されたのです。
また、アニメは原作の全てを放映するわけではないという、アニメ界の真実を知ることになるのです。
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魅力1 個性的すぎる登場人物
パプワくんの魅力は、何といっても個性的な登場人物です。
主なレギュラーメンバーは、パプワ島に暮らす唯一の「ヒト」であるパプワくん、犬のチャッピー、そこに流れ着いたシンタロー。
三者の関係性が段々と変わっていく様子が、とても楽しい。
三者の関係性の変化が、コマ割りやギャグのキャッチボールによって、巧みに表現されています。
ただ、ここで紹介したいのは、その他のキャラクター達です。
カタツムリのイトウくん、タイのタンノくん、ニワトリのクボタくん、ミミズのシミズくん、といった、人語を介するパプワ島の「友達」達が、なんとも魅力的。
それぞれが、友人として、囃し手として、被害者として、時には食料として(笑)、登場します。
何とも素直な友人達は、まっすぐにシンタローと向き合います。
彼らを見ていると、おおらかな気持ちになってきます。
小さいことに、くよくよなんかしていられない、と思わせてくれる。
彼らの多くは、自分の人生、生き方をちゃんと受け止めているように感じるのです。
一方で忘れてはならないのが、シンタローを追ってくる「ガンマ団」の皆さん。
ミヤギ、トットリ、アラシヤマ、等々。
いや、地名じゃないんです。人物名です(笑)
登場当時は、出オチだと思っていたのに、後半に従って魅力あふれる人物として描かれていきます。
物語の中でチョイ役だと思っていたキャラが、後半でしっかり活きてきたりするから、すごいです。
そう、とんでもなくキャラが多いのに、モブがいないのです。だから、どのキャラにも愛着が沸いてしまいます。
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魅力2 ウィットに富みすぎたギャグ
この作品のギャグは、マニアックです。
少年漫画ですが、私は少年だった時に理解できないギャグが多かったです。
例えば、こんなセリフ。
…………わからない。何がおもしろいのか、わからない。
穢れなき少年少女は、どう受けとめれば良いのでしょうか。
でも、これが病みつきで、今でもその一つひとつを思い出せるほど。
そもそも「ウィット」という言葉と初めて出会ったのも、パプワくんだったかもしれない……。
慣れてくると、何とも快感なんですよね。これもまた、柴田ワールドのなせる業だと思います。
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***この先、少しネタバレあります***
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魅力3 毎回が印象に残ってしまう前半
さて、いよいよストーリーに参ります。
前半は、第1話~第34話とします。
「序・破・急」の「序」の部分です。
物語は、謎の南国の島、パプワ島にシンタローが漂着する所から始まります。
シンタローは、凶悪な殺人集団「ガンマ団」のエリートです。
ガンマ団が大事にしている「秘石」を持ち出し、追われる中で、パプワ島に来たのです。
そこで出会ったのは、島の唯一の「ヒト」パプワくんと、チャッピー、愉快な友だちの皆さん。
前半の魅力は、一話毎に表れる独創的なキャラクターと、それに対処するシンタロー達のウィットに富んだやり取りです。
登場するキャラクターを大きく分けると、パプワ島の友だちと、ガンマ団の刺客がいます。
それぞれが、おもいもよらない生態や、特技を持って、私たちを楽しませます。
そんな中、ガンマ団の総帥の出現とともに、ストーリーは変化していきます。
そして、第34話では、シンタローはパプワ島を離れることになります。
そこに至るまでの感動ポイントが多いのも、魅力です。
なお、アニメ版はここまでが描かれます。
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魅力4 シリアスとギャグで高まる中盤
第35話~第43話を中盤とします。
ここからが、「序・破・急」の「破」にあたります。
シンタローの死という驚きの展開が、いともあっさり描かれた後、物語は急展開を迎えます。
死んだシンタローは、ガンマ団の親戚一同と、パプワ島に戻ります。
そこで、自分の正体に気付いていくのが、主なストーリーです。
そんな一見シリアスな展開にあっても、ギャグ要素は忘れません。
シンタローの親戚、すなわち「青の一族」の皆さんの人間関係を整理しておくのに、ぴったりな場面です。
ここでしっかり整理しておかないと、後半でついていけなくなります。
これまでモブだと思われていたキャラクターが、重要になってくるのもこのあたりです。
一見単調に見えた前半の、単発ゲストに思えたキャラクター達が、じわじわといい味出してきます。
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魅力5 急展開すぎるシリアス展開の中で、感動あふれる後半
第44話~最終話を、後半とします。
「序・破・急」の「急」です。まさに、急展開です。
復活したシンタローですが、いろいろな所で、更なる新事実が発覚します。
一話一コマをしっかり読んでいかないと、ついていけなくなります。
それら全てを理解したとき、読者は「青の一族」の悲劇に気づいていきます。
そしてなお、そこからあがき、乗り越えようとする登場人物達。
ここまでくると、毎話涙なしには読めなくなります。
また、この感動が、どんどん高まって、最終話で極限に達します。
もう、涙ですよ。
ネタバレしてしまうと魅力が半減なので書けませんが、読んだ方はおわかりいただけるはずです。
アニメしか観たことがない方も、ぜひ最後までお読みいただきたい。
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以上、あくまで概要ですが、説明させていただきました。
とにかく、ご覧ください!
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