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【楽曲解説】Suite for Xylophone Trio No.1-5

バッハの組曲をイメージした以上、遅いテンポの曲も入れておきたかった。けれど、木琴で遅いテンポの曲をするのはとても難しい。サスティンの少ない木琴の場合、音と音の間が長いと、音楽をつなげるのが難しいからだ。案外聞いている側は気にならないかもしれないけれど、演奏する側としてはテンポ感が取りづらいし、フレーズ感も難しい。

もう一つ難しいのが、伴奏だ。遅いテンポの曲であっても、管弦楽器や鍵盤楽器の伴奏であれば、和音を伸ばしたり刻むことで対応できる。ところが、今回はスネアドラムとライドシンバルだ。リズムと音色とダイナミクスでどんな伴奏ができるのか。ただ、ライドシンバルについては、ちょっとずるい気もしたけれど、お許し願いたい。ジャズでも利用されるくらいに、ライドシンバルの伴奏力はハンパないからだ。

結果行きついたのは、フレーズ感の補強だ。あくまで木琴だけで完結しながらも、それだけでは難しいフレーズ感を補強するように音を配置した。

基本的にはメロディーに重ねて音を配置することで、表情をつけやすくした。例えば強弱一つとっても、一つの楽器だけで表現するよりも、三つの楽器で表現した方が幅が広がるはずだ。

こだわりポイントは23小節目から25小節目のフレーズ入りにかけての木琴のソロ。あえてスネアドラムとライドシンバルの存在に甘えず、単音一つで表現する。自由にルバートに演奏するもよし、気持ちフェルマータ気味に演奏するもよし、あえて淡々と演奏するもよし。

そして、最後は急にリズム伴奏的なスネアドラムとライドシンバルになる。よく考えたら、前半のややおおらかな演奏が、最後は三拍子を感じさせるものになって終わるというつじつまの合わなさ。まあいいか。

全体に小さな音を要求されているのもポイント。六曲中二曲以上は、小さな音を楽しむものにしたかったので、これもその一曲。

ピアノ、メゾピアノで、ゆったりしたテンポ。これは木琴での演奏の難易度を爆上げする。メロディーはまるでピアノを習いたての練習曲のようなかわいらしいものにしたので、かわいく可憐に演奏していただきたい。


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吉村ジョナサン(作家)
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