感動を一緒に味わいたい【憧れの地】
「グランドキャニオン!カーズに出てくるような、壮大な感じのところに行ってみたい。」
妻が答えてくれました。
一度は行ってみたい場所はどこ?
憧れの地に行くなら、一人旅よりも妻と一緒がいい。その景色を見た瞬間を一緒に味わいたいし、旅をまるごと楽しみたい。
妻が言ったカーズは、レーシングカーが主人公の映画。ふとしたきっかけでさびれた田舎町に迷い込んでしまい、そこでの出会いや体験を通じて心の温かさを手に入れる物語です。丘の上で遠くまで見渡しながら会話が生まれるシーンで、こんなセリフがあります。
車は楽しみにいくために走ってたんじゃなくて、楽しみながら走ってたの。
目的地を決めて、少しでも早く、効率よく、わき見もせずにそこにたどり着く。それではもったいないよねと教えてくれるのがカーズの物語。
妻と行く旅行でも、目的地を見るだけではなく、そこに行くまでのの道中や、計画や準備のあれこれも楽しみたいです。
こうやって旅のことを考えていると、最近読んだ本のことを思い出します。作家の城山三郎さんが、奥様との思い出を綴った『そうか、もう君はいないのか』。出会いの場面から、普段の様子、そして、旅の思い出。一番印象に残っているのが、オーロラを見に出かけたお話です。
年間250日もオーロラが出ているアラスカのフェアバンクスに、一週間も滞在すれば大丈夫だろうと旅程を組んで出かけた城山夫婦。磁気のグラフでは確かにオーロラが出ていたけど、白夜の時期だったために見えなかった。そこまで調べてなかったことを後悔し、奥様に呆れられたり愚痴を言われるだろうと覚悟もした。でも、奥様の反応は、「あら、そうだったの。残念ね。」と言っただけ。
でも、その2、3年後に、奇跡が起きます。
別の機会に、夜行便でヨーロッパに旅行された時のこと。奥様もほかの乗客も眠りの中にいて、城山さんだけが読書灯を本を読んでいた深夜。巡回してきたCAが、窓の下にオーロラが出ていることを小声で教えてくれたそうです。慌てて奥様を起こし、夫婦で窓に顔を寄せてのぞき込むと・・
二人とも、声が出なかった。
この世の物とは思えぬほど、美しく巨大な光の舞い。
色と輝きを刻々変えながら、空いっぱいにのびやかに、光の幕はゆれ動き、舞い続ける。それも、ふと伸ばした手が届いてしまうような距離で。
まるで私たち夫婦のためにのみ、天が演じてくれている。
私たちは手を握り合い、夫婦で旅してよかったと、あらためて胸を熱くした。
■新潮文庫
城山三郎 著『そうか、もう君はいないのか』 p.96・97より引用
グランドキャニオンは、時間とお金を確保出来たら、確実にその景色を味わえます。オーロラを見ようと思ったら、ちょっとハードルが上がりそうです。場所と時期を調べて計画を立てる必要があります。空の上から見るとなったら、時間帯とフライトの経路を計算し、そこを通過する際の運も大きく影響します。
でも、城山さんの胸を熱くしたのは、その条件をクリアできた運のよさだけではないはずです。隣に奥様がいたから。一緒に旅をしてよかったと思える関係を築けていたから。感動を大きくしてくれたのは、毎日の積み重ねがあったからだと思います。
一度は行ってみたい場所について話しながら、「夫婦で旅してよかった」と言い合える夫婦でありたいと思いました。
◇
毎週テーマを決めて共同運営を続ける日刊マガジン『書くンジャーズ』。
今週のテーマは、【 憧れの地 】でした。
憧れの地には妻と一緒に行きたいと思っているのは、土曜日担当の吉村伊織(よしむらいおり)です。
今週も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
メンバー一人ひとりの憧れの地、そこにかける想い、ぜひチェックしてくださいね。
それではまた、お会いしましょう。
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