デッドエンドの思い出
あとがきに、泣きました。
たまたまたどり着いた、noteの記事で知った一冊。同名タイトルの作品を含む、5つの短編が収録されています。
よしもとばななさんご自身が
これまでに書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。
と語られていると知ったら、そりゃあ気になります。
それぞれの物語の中には、婚約者の裏切り、不倫、レイプ、友人の死、毒物混入、など、言葉だけを並べると自分とは距離を置きたくなる出来事が描かれています。それが、特殊な条件が揃って起きた特別な事件というよりも、日常と同じ流れの中ですぐ隣にさらりと存在するように描かれていて、ニュースの見出しのようなインパクトがない分、リアルに迫ってくるように感じました。
つらい出来事と、ふとした幸せ。どちらも、現実に存在するものだとしたときに、どうバランスを取ったらいいのかを示唆してくれているような気もします。人と触れ合ってぬくもりを感じたり、安定した幸せの空間にちょっと距離を置いてみたり。選択できることも、大事なんでしょう。
この作品に描かれている出来事は、ひとつもご自身の身に起きたことはないそうです。
出産をひかえて、過去のつらかったことを全部あわてて精算しようとしたのではないか?と思われる(人ごとのように分析すると)。
とも書かれていました。それまでに感じた心の動きや周りの印象を、ぐっと凝縮して、小説という作品にして表現されたんだと思います。もしかすると、体験談から物語を作ろうとすると、思い出深い出来事を強調してしまうのかもしれません。あえてそのままを書かないことで、冷静に描くことができるので、読み手の心に響きやすくなるのではないか。そんなことも考えてしまいました。
この小説集に関しては泣かずにゲラを見ることができなかったですが、その涙は心の奥底のつらさをちょっと消してくれた気がします。
こう語る、吉本さん。その姿を思い浮かべて、もらい泣きです。
(引用は、すべて「あとがき」より)
※この本の出会いをくれたのは、こちらの記事です
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