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【読書のきろく】夜のピクニック
仕事でお世話になっている人に、おススメの本を聞いてみました。どれがいいかな・・と悩むことなく、即答で教えてくれたのがこの作品。
「高校生が感じていることを、高校生が話すことばで書かれているから、すごく共感できるんです。」と語ってくれました。
恩田陸さんの小説は、読んでみたいと思っていたけど、どれがいいか迷っているうちにその機会を逃したまま・・・。だったので、仕事帰りに即購入です。
青春どっぷり!いいですね!
物語の舞台は、高校生活最後の行事となる『歩行祭』。一昼夜をかけて、80キロを走破するイベントです。生徒にとっては、友情と恋愛の大イベントでもあります。
金曜の朝に出発し、暑い日差しがふりそそぐ昼を過ぎて、だんだん日が暮れて夜になる。市街地から田園風景を抜けて、海沿いの道を歩く。景色も、生徒たちの体調やテンション、話す内容も、時間の経過に合わせて変化していく。昼間は話せないようなヒミツのことは、もちろん暗くなってから。
因縁とも呼べるつながりをもった二人の主人公と、個性豊かな友だち。ズルいあの子も、お調子者のあいつも、そう言えば同級生にいたよねと振り返らせてくれます。それぞれが抱える物語があるのは、僕たちのあの頃も同じ。
話しながら微妙に移り変わる距離感とか、心の奥にあるものがとけていく感覚も味わいながら、一緒に歩き通した気持ちになりました。
ただまっすぐに、急ぎ足で駆け抜けるんじゃなくて、「もっと雑音も聞いておけよ」と語った親友の言葉は、大人になった今なら理解できる気がします。
うまくいくこともあれば失敗もして悶々と悩んだり、めんどくさいことに振り回されたり、意味のないようなことに夢中になってみたり、きれいに敷かれたレールの外におもしろさが転がっているものです。切り捨ててしまったらもったいない。
これは高校時代だけでなく、大人になってからも日常生活にある雑音は大事なんだよと、語りかけられている気もしました。
時間の流れと思い出。
強がりと弱さ。
心の動きと周りからの印象。
人と人との関係性。
体験してわかる青春のおもしろさを凝縮して、やさしく並べてくれたような作品です。
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読書のきろく 2020年39冊目
「夜のピクニック」
#恩田陸
#新潮文庫
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