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【読書のきろく】金閣寺

「70年前のきょう(7月2日)、京都で金閣寺が焼失した。」

毎日読んでいるメルマガで、そんなコラムが紹介されました。
放火犯人は、寺の青年僧。彼を主人公にしてこの事件について書かれたのが、三島由紀夫の『金閣寺』。三島由紀夫作品も読んでみたいと思っていたので、ここで目にしたのも何かの縁ということで、手に取りました。

とても重厚な作品。テーマも、登場人物も、描き方も。
それが、第一印象でした。
そして、幼稚な表現になるのが恥ずかしいけど、この作品を31歳の時に書き上げた三島由紀夫は、ものすごい人だと思いました。

放火事件のことは詳しく知らず、人物像も分からない状態で読み始めてみたら、葛藤や苦悩、快楽の渦に巻き込まれてしまいました。静かに深く潜って、ゆっくり戻ってきた感じです。

実物を見る前から、父に聞かされて心に抱き続けた金閣の美しさ。戦中戦後の時代背景。吃音を抱えて生きる宿命。イメージと現実、本音と建前、意思と表現。
いろんな相対するものの中で、心がゆれ動き、ゆがみ、深いところに落ちていく様子が描かれています。

金閣寺への放火は、突発的に思い至った行動ではあるけど、その瞬間だけで決定されたものではなく、人との出会いや出来事の偶然がつながって導かれたものなんだと感じました。どんな行為も、その表面だけでは語れない、背後にある深い物語に目を向けてみたくなります。
主人公が抱く美への執着や、暴力的な想像は、程度の差があるにせよ、その種は僕の中にもあるのではないか。そう考えると、恐ろしくもなりました。

この重厚さは、読み応えがありました。
もっと若い頃なら、読めなかったかもしれません。

ほかの作品も読んでみたくなりました。

読書のきろく 2020年43冊目
「金閣寺」
#三島由紀夫
#新潮文庫


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