ツナグ【読書のきろく】
「誰か」のことを、考えずにいられなくなる物語
もしも、死んだ人にもう一度会えるとしたら、誰に会って、どんなことを話したいですか?
大切な人を亡くしたとき、できればもう一度会って話したいと、多くの人が考えたことがあるのではないでしょうか。そんな願いを叶えてくれる案内人が、この物語の主人公。
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれる「使者(ツナグ)」。
ただし、生者も死者も、会えるのは一度だけ。そして、一人だけ。
もし、そんなことが叶うと言われたら、・・・。誰を選ぶか、どのタイミングで、どんな目的で会うのか、僕はすごく悩みます。
その人に会うという選択は、この先ずっと他の誰かにはこの仕組みを使わないと決めること。会いたくなるのは、きっと確かめたいことがあるから。生きてるうちに伝えられなかったこと、聞けなかったことがあって、後悔しているから。
でも、会えたとしても、望んでいる答えを言ってくれるとは限らない。そもそも、相手から自分を選んでもらえないかもしれない。相手にとっても、たった一度の貴重なチャンスだから。
興味本位でやれるような、甘いものではありません。誰かのこと、自分のことを、真剣に考えさせてくれます。心のどこかで知っていた自分勝手な気持ちにも、向き合わされてしまう。だからなのか、その依頼ができるところまでたどり着けるかは、巡り合わせ。
実際、この物語に登場する人たちも、すごく悩んで、人生をかけて「使者(ツナグ)」に依頼します。すべての依頼人が、幸福な結末を迎えられるかは、分からない。葛藤、決断、喜び、絶望、一人一人のいろんな心の動きがあり、命の儚さが迫ってきて、読み手の心も揺さぶられます。
「ツナグ」は、2012年に映画化されています。その年、縁あって、この映画の特別試写会に行くことができました。
そこまでの道のりが、また、とても思い出深いんです。
まず知ったのは、仲良くさせてもらっているママさんの投稿で。同級生が、監督をつとめる映画ということでした。その投稿に反応したら、パパ友から「試写会招待券が当たるキャンペーンがあるから、興味があるなら応募してみたら?」とメッセージが来て、どんな強運だか当選。ペア鑑賞券だったから、当時お世話になっていたハンドマッサージの先生を誘って観に行ったのです。
物語では、生者と死者をつないでいる「ツナグ」。僕にとっては、生きている人と人とのつながりの大切さやおもしろさも、実体験とともに教えてくれた恩人です。
映画を先に観ていたこともあって、小説を読んでいるときには、頭の中でその役者さんたちの声が響き、表情が重なりました。
今、生きている者として、いずれ死んでいく者として、登場人物の生き様に重ね合わせながら、自分にとっての「誰か」のことを、考えずにいられなくなる物語です。
◇
この記事が参加している募集
最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでもお役に立てたら嬉しいです(^-^) いただいたサポートは、他の誰かのお役に立てるよう使わせていただきます。 P.S. 「♡」←スキは、noteユーザーじゃなくても押せますよ(^-^)