人は愛するに足り、真心は信ずるに足る
昨年12月、アフガニスタンの地で凶弾に倒れた中村哲医師。
僕はその時のニュースで中村医師の存在を知りました。
まだまだ自分の知ってる世界が狭いなと思いました。
医師としてアフガニスタンに赴き、ハンセン病治療をはじめとして医療活動にあたる。
ただ、現地の現実は水不足に悩まされていて医療だけでは限界があり、井戸や用水路の整備に取り組む。
30年間も現地で活動し、1万6500ヘクタールの砂漠化してしまった土地に緑を取り戻し、多くの人々の生活を救った。
その活動期間中には、ニューヨークの9.11同時多発テロも発生し、アフガニスタンに対する報復爆撃も始まりました。
誤って米軍に標的にされたこともあるそうです。
常に危険と隣り合わせで、文字通り命を懸けて活動を続けられました。
その中村さんの生い立ち、活動にかける想い、現地で感じる憤りなどが、ノンフィクション作家によるインタビューを通じてまとめられたのがこの本です。
僕自身、目にしたニュースだけでアフガニスタンに対する悪いイメージを抱いていたことを思い知らされました。
一方的な正義の恐ろしさも、改めて突き付けられました。
力で押さえつけるのではなく、生きる意味を一緒に探る。
解決策は見えているのに、力を振りかざす人に届かないのは、とても空しくもどかしいものだと思います。
でも、そんな感覚も乗り越えて、ひたすらに活動を続ける。
とても大きなものを見せていただきました。
本には、挿し絵の写真として、荒れた土地と、水路が開通して緑が蘇った様子が載っています。
小さな写真だけでも感動なのに、現地で目の当たりにした時の感動は言葉にならないものがあるでしょう。
自然の姿に触れながら、人間の希望と絶望、武力の無力さ、宗教の根底にあるものを、読みながら感じさせてもらえます。
この本を読んでいたら、中学3年の長男が中村哲さんを知ってると話しかけてきました。
学校の道徳の授業で出てきたそうです。
残念ながら、中村さんの命は奪われてしまいました。
若い世代に、その精神を語り継いでいかなければと感じています。
改めて、中村哲医師のご冥福をお祈り申し上げます。
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読書のきろく 2020年4冊目
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」
#中村哲
#澤地久枝 (聞き手)
#岩波書店