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【読書のきろく】復活の日
今、このタイミングで読んでおきたい、どえらい作品があったもんだ。
読みながら、何度も恐ろしさを感じ、「希望を信じたい」と強く願いました。
最初に出版されたのは、半世紀以上も前の1964年だそうです。
人を確実に死に至らしめる細菌兵器によって、人類が滅亡してしまう物語。なんとか生き残ったのは、南極にいたごくわずかの人だけ。
感染症状が出始めた時は、「ただのかぜ」とか「たかがインフルエンザ」という扱いで、これは普通じゃないと気づき出したときにはもう手遅れ。あっという間に全世界に広がり、人間も動物も次々に死んでいきます。一般人も、政治家も、軍人も、同じ。それぞれの最期の瞬間に、胸が締め付けられていきます。
映画化もされていますが、おそろしい描写は、小説の方が心に深く刺さりそうだと思いました。映画であれば目をつぶって耳をふさげばいいけど、小説は読んだ時点で頭の中にその映像が浮かび、叫び声が響きます。
ちょうどここ数日、新型コロナウイルスの新規感染者がどんどん増えているニュースが続き、どちらがリアルなのか分からなくなる感覚を味わいました。
SFだから、起きてほしくない、でも、起きる可能性がある悲惨な出来事やその結末を疑似体験できます。
相手に対する疑いや憎しみから、武力がどんどん膨れ上がり、極秘に研究が進められたおそろしいウイルスも生まれ、やがてコントロールできなくなり、自らを滅ぼしてしまう。
これを架空の物語だと笑えないのが、現代の状況かもしれません。
知恵や力を、破滅の道を歩む方向に使うのか、理性的に分別をもって活用していくのか、本当はどうすべきか知ってる。でも、それを語る勇気を持たず、妥協して過ごしている。それを悔いながら語り、死んでいく教授の姿は、心に響きました。
最期の瞬間に、誰かに希望を渡すのか、絶望を残すのか。
その瞬間に立つ前にも、普段の生き方でどちらを選びたいかを考えさせてくれます。
Amazonのレビューにも書かれていますが、「今こそ読むべき」と僕も思いました。
大人として生きるための教科書のひとつに推薦したい作品です。
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読書のきろく 2020年44冊目
「復活の日」
#小松左京
#角川文庫
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