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[想像に眠るあなたへのメッセージ]夢叶えるカンパニー

「では、あなたの夢を教えてください。」

「はい、私はこの会社で働く事が私の夢でした!
人の夢を応援できる仕事ができるなんて、素晴らしい事だと思います。」

「そんな夢じゃなくてさ、もっと子供の頃からの夢とか、
くだらない事でもなんでもいいんだ。なにかあるかい?」

「えーっと、自転車で日本一周はしてみたいと考えたことはありました。」

「おぉ!それじゃあ、その夢叶えてから、またここに戻ってきてよ。」

「えっ、でも。。。
こんなこと、言うの恥ずかしいんですけど、
私、貯金もなくて、今すぐ働かないと生きていけないんです。
自転車で日本一周してる場合じゃないんです。」

「本当にそう思うのかい?
お金がないから夢が叶えられない?
夢を叶えている暇が無いから、夢が叶わないんだと思うのかい?
僕はそうは思わないよ。
じゃあさ、夢を叶えて戻ってきたら、
日本一周でかかった費用を教えてよ。
僕が全額払うから。それなら、どう?」

 高層ビルの上階にオフィスを構えている
『夢叶えるカンパニー』へ面接に行った。
「こんなところで働けたらカッコイイ〜!」と
浮かれて面接に行った数時間前の私を
引き止めらえるのであれば、今すぐにでも、引き止めたい。
面接に行ったことに後悔しかない。
「はぁ。時間の無駄だった。面接なんていかなければ良かった。」

私は、お金がなくて生きるだけで必死なんだよ!
夢を叶えるなんて、そんな優雅なこと言ってられない状況なのに、
あの社長は一体何を言っているのだろうか?
もー!むしゃくしゃする!

数日後、『夢叶えるカンパニー』へ、辞退の連絡を入れることにした。

「そうでしたか、事情はよく分かりましたが、
もし、明日、お時間があるようでしたら、
もう一度オフィスまでお越しいただけないでしょうか?」
と、電話越しの社員に伝えられたので、
少しだけ期待しながら行ってみることにした。

面接の記憶が蘇る。デジャブだ。
同じ会議室、同じ長机、そして、社長。
ニンワリ笑みを浮かべて座っていた。

「ごめんね〜。また呼び出しちゃって。
自転車で日本一周できなかったんだってね。
まぁ、座って。」

「夢ってさ、叶えるのも難しいけど、描くのはもっと難しいんだよ。
テレビや映画で見た記憶とか、
知り合いが話していた夢の話の記憶とか
それがさ、いつの間にか自分の夢にすり替わっていることもあるんだよ。
本当に叶えたい夢は、見失いやすいのさ。
あ、そう、そう。今すぐに叶えられそうな君の願いは何?」

「すぐに叶えられそうな事ですか?んー。
このビルの近くにあったドーナツ屋さんで
完売する前にドーナツを買うこと。ですかね。ははっ。」

「じゃあ、その願いは、君がどう行動したら叶うのかな?」

「すぐにドーナツ屋さんに走り、行列に並んだら?
もしかしたら、買えるかもしれないです。」

「そうだよね!本当に願った事は行動に移すと絶対にいつかは叶うんだ!
ここのお客様の中にも、夢を叶えたいと言っているけれど、
本当に叶えたい夢じゃなかったと気づく方が山ほどいるんだよ。

もし、よかったら今日からここで働かないかい?

お客さんの夢を叶えるプロセスに寄り添っていくうちに、
自分の内側と向き合わざるを得ない状況が自然とやってきて、
絶対に叶えたいと思えるキミの夢が見つかるはずだよ。」

社長の言葉は一切届いていなかった私だったが、
仕事をもらい、お金の心配からの開放感で
「はい!よろしくお願いします!」と、満面の笑みで返事をした。

この時の私にはまだ、
願いがまた一つ、叶っていた事に気づけていなかった。






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