the HIATUS 日比谷野外大音楽堂 8/18 2024
2024年8月18日(日)の夕方から夜にかけて、記憶がほとんどない。この日は私の敬愛するバンド、the HIATUS(ハイエイタス)の日比谷公演を観に行った。
楽しみすぎて、前日の夜から朝にかけて、ほとんど眠ることができなかった。正確には、眠りはしたんだけど、興奮で眠りが浅く、1時間か30分に一回起きるという拷問のような休息の仕方をしていた。修学旅行前の中学生や、明日好きな人とデートに行く高校生の方がまともな睡眠をとっている。
29年というそこそこ長い人生の中で、興奮して眠れなかったのは、今日と2010年8月16日the HIATUS ANOMALY tour仙台公演の時ぐらいだ。どうやら私とハイエイタス、8月は何かの縁があるらしい。
昼ぐらいには起きて、景気付けに発泡酒を開けた。ガラガラの喉に、ほろ苦い炭酸が染み渡ると、今日が休日であり大好きなバンドのライブに行くということを再認識させられた。自由ってこういう瞬間のことを指すんだと思う。
どうやら早く飲み過ぎたらしくて、15時くらいにはそこそこ酔いが回っていた。会場まで歩きも含めて約1時間程度。17時に開場なので、余裕をもって外に出た。初めての野外ステージ、熱中症や汗の対策だけはしようと、トートバッグに制汗剤と着替えとタオルを詰め込んで、さあ出陣。
最寄り駅の霞ヶ関に着いて、階段を上がると木漏れ日が差し込んで思わずニヤけてしまった。
「夏がそこまで来ちょる。いや、わしが向かっちょる。」
心の中のハグリッドがそう呟いた。
階段を登ると、コンクリートと自然の香りがした。なんとなく全部が大丈夫になった気分になり、Googleマップで会場の場所をおおよそ把握したら「よし!」と歩き出した。午後16時ぐらいに、スキップをしながら横断歩道を渡っていた変人がいたら間違いなく私である。妖怪で例えたらくねくねに近いかもしれない。目が合っても呪ったりしないから安心してほしい。
汗だくになりながら会場に到着。
もはや森で、すごく蒸し暑くて笑ってしまった。土砂降りで全身びしょ濡れになるともう笑うしかないみたいな。そんな気分だった。知らない場所に遠足で来たみたいな、ちょっとだけの不安とワクワクで胸がいっぱい。今日はいい日になるぞー!そんな予感しかしない。
入場まで時間があるのと、指定席だからどのタイミングで入っても観れる場所は変わらないため、コンビニにお酒を買いに行った。お酒を買える場所を調べたら、商業ビルしかなくてわろた。少し歩いたところにセブンイレブンがあるみたいで、ハイエイタスのTシャツを着ている酒豪達が同じ方向に歩いていくので、Googleマップは用無しとなった。
コンビニ内では、みんな冷ケース内にあるお酒をカゴに放り込んでいた。5本くらい買ってる人がいて、そんな今から飲める!?!?って思ったけど、私も3本買ったしほぼ同じか!
お酒はセルフレジで買えないから、長蛇の列だった。セブンイレブンと店員さん本当にありがとう。迷惑かけました。美味しくいただくね。
開演時間ギリギリまで、アサヒスーパードライを飲みながら過ごした。風が涼しくてずっとここにいたかったな。
いよいよ入場。
チケットと運転免許証を見せて、すんなりと入ることができた。入り口には、「Sunset on the Rails」の文字が!!この木のオブジェクトって、日比谷公演恒例なの!?めっちゃよくない??「写真を撮り終えましたら、まっすぐ中の方へどうぞ〜」と、撮る時間を想定してくれているのは、運営とスタッフからの愛を感じました。本当にいつもありがとうございます。
座席はC列で後ろの方だったんだけど、全体的にステージ見下ろす設計になっているから、全然遠く感じなかった。
広いし、森だし、ビルだし、自分が東京にいることを忘れてしまった。なんだここ。日常から切り離された特別な場所のような、神隠しにでもあったかのような感覚だった。
あと、暑いほんと笑
ここで一回着替えればよかったと後悔する暇もなく、ステージの向こう側から聞こえた彼らの馬鹿デカい掛け声を皮切りに、ライブが始まった。
5年ぶりにみた5人組の姿は、とても強くて美しかった。アルコールと、感情の爆発で、恥ずかしながらライブの内容をあまり覚えていない。でも、何箇所か私の眼と脳味噌が、彼らに向かってシャッターを押していたみたいで、断片的に記憶が残っている。これが風化してしまう前に、ここに残そうと思う。
一曲目の「Lone Train Running」から涙腺が崩壊。緩くなった缶チューハイを流し込んで誤魔化した。1stアルバム「Trash We'd Love」の発売から15年。私とハイエイタスの物語はこのアルバムから始まったのだ。今回はジャズ箱ツアーの延長戦ということもあり、しっとりしとしたアレンジで演奏されたが、楽曲が持っている芯の太さはそのままに届けられた。受け取った時に、私の脳みそがキャパオーバーを起こして、歓声をあげる前に涙が溢れた。一曲目からこの情緒で大丈夫かよほんと。
彼らのおかげでいろんな旅をしてきたけど、今日は日比谷野外大音楽堂という、当時のバンドスタイルでは想像できない場所まで連れてきてもらった。細美さんは、活動後期ぐらいからよく「旅」というワードを使ってると思う。15年一緒にいるけど、今日ほど遠くに連れてきてもらったことはない。一瞬一瞬は始まりと終わりのように見えて、でも句読点のように繋がっていて、全部結ぶと長い旅路のような、一つの物語のような、ハイエイタスとの日々を思い返すとそんなことを想う。長い旅にご一緒させてもらって、今日一個の区切りを迎えられて、本当によかった。
二曲目の「Deerhounds」で大きく胸が高鳴ったのを覚えている。この曲が収録されている「A World Of Pandemonium」は一番好きなアルバムだ。魂の解放、そしてそれを在るべきところに還すみたいな、全体的にそんなイメージがある。一曲目の「Lone Train Running」と、二曲目の「Deerhounds」で私の心は丸裸にされた。ボス戦でバフを剥がす魔法使われて、攻撃をもろで食らうみたいな。たぶんこの辺りで最後の缶チューハイを開けたと思う。酔っぱらうと涙もろくなるというより、泣くとめっちゃ酔うタイプなので、ここら辺からもうかなり酔っていたと思う。隣の人が、静かに乾杯してくれて本当に嬉しかった。多分うるさかったよね、ごめんなさい。
時は遂に訪れた。一番待ち望んでいた曲「Sunset Off The Coastline」が演奏された。公演のタイトル的にほぼ確定でやるとは思っていたけれど、実際演奏されるとまぁ食らってしまった。もう号泣。我慢しても声が漏れてしまったから、周りの人には本当に申し訳なかったです。持ってきていたタオルが涙でびしゃびしゃになってしまった。演奏と開場内で聞こえてくるひぐらしの鳴き声で、異世界へと飛ばされた気分だった。参戦した人に聞いて周りたいんだけど、セミの鳴き声の異常さすごくなかった?なんか自然と音楽が一体になっていて、完全にthe HIATUS feat.ひぐらしだった。こんな経験、この先もう無いと思う。
10曲目?くらいで「Silver Birch」が演奏されて、ふと現実に戻される。一緒にハイエイタスを聴いた友達のこととかを思い出しながら、そろそろこの夜も終わりかーなんて考えていたら、細美さんが「ここで一部が終わりです。10分休憩するので、トイレだったりお酒を買い足したりしてください」とアナウンス。えぇ!?一部??二部もあんの?とびっくりした。酔って時間の感覚がよくわからなくなっていたのと、楽曲がひとつひとつ濃密すぎて、もう満足していた。お酒の買い足しはやめて、トイレだけ済ませて席に着いた。
二部の記憶が本当に抜け落ちていて、もったいないことをしたなぁと少し後悔。言い訳じゃないんだけど、本当に楽しかったことって、覚えてなくない?覚えているのは、陽が落ちているのにも関わらず、めっちゃ暑かったこと。まじで永遠とひぐらしが鳴いていたこと。MCで泣いたこと。
うろ覚えです。細美さんが「昔よく見た夢で。たぶん会場はここだと思う。曲を演奏する度にみんなが背を向けて去っていく。今日はみんないなくならないでほしい」みたいなことを話してくれて、客席からは大丈夫だよーとかいなくならないよーと声があがった。こういう時、今までの私だったら、達観したふりをして黙って聞いてたんだけど、今回だけは「ずっと一緒だぞ!!!」と叫んだ。雑音としてでも構わない。私の声が本人たちに届いて欲しかった。
感極まりすぎて、アンコールを呼ぶときに座ることができなかった。今までの人生であんなに本気でアンコールを呼んだのは生まれて初めてだと思う。全力で呼んでいたら、女性が一人振り向いて、にっこりと笑ってくれた。その人も立ち上がって、一緒になって呼んでくれた。(暑さと長丁場で疲れて座っている人もいたと思うし、うるさかったらほんとごめんなさい。)
最後の曲は「Ghost In The Rain」だった。ハイエイタスの始まりの曲。この曲をライブで聴くと、ハイエイタスと私の歴史が区切りを迎えること、そしてまた新しい歴史が始まることの合図だと捉える。十周年の国際フォーラムの一発目の時も同じ気持ちだった。
この先どんな未来が待っているかわからない。ここ最近の自分の生活と社会を見比べると不安でしかない。ただ、どんだけ隅っこに追いやられても、何らかの形で社会的地位をなくしたとしても、大切な人たちから見放されたとしても、私はこの曲を聴いて立ち上がろうと思う。中学生の頃にハイエイタスを見つけた時のように。
本人たちの姿が完全に見えなくなるまで、ステージを見つめた。あぁ、この夜が終わってしまう。寂しいけど、どこか解放的な、そんな特別な夜だった。ただ一つの区切りを終えただけで、私とハイエイタスの関係はどこまでも続いていく。本当に良い夜でした!
余韻に浸りながら、とぼとぼと出口に向かうと人集りがあって、覗いたら今日の公演が後日スペースシャワーで放送決定とのこと!MCで円盤化はされないって言ってたけど、スペシャで放送はするのね!自身でカメラいれたり、映像化するってなるとお金がかかるとかなんとか。嬉しいとは裏腹に、この夜を自分たちだけのものにしたかったというエゴが頭をよぎる。そんな気持ちに対して首を横に振り、素直に放送の日を待ちわびようと思う。二次会できるね!
そしてもう一個、ハイエイタスから素敵な贈り物が。入場の時に飾ってあったオブジェが変わってる!!これあれか!!扉開けると中にお花が入ってるのね!!めっちゃ綺麗。最後の最後まで私たちを楽しませてくれる。惚れ惚れとする。こんな漢達のようになりたい。
この日が満足すぎて、もうお酒とかいいかなって思ったんだけど、飲んだほうがあとがきが書けそうだったので急遽買ってきました。
このライブに参戦した人も、音漏れの人も、チケットがとれなくてツイッターを眺めながら現地の様子を見守っていた人も、全ての人に乾杯。ハイエイタスについて語ることって余りないから、ちょっと失礼するね。
ハイエイタスが結成された時から彼らのファンで、一緒に歳をとってきました。アルバムを出す度に音楽性が変わって、彼らがより開放的になればなるほど初期のいわゆる激しくノリやすい音楽とはかけ離れていく。特に「ANOMALY」から「Haching Mayflies EP」の変化は私を含めたくさんのファンがびっくりしたのではないだろうか。かといって、ファンが離れていくわけではなかったよね。感覚としては、「A World Of Pandemonium」で試されて(本人たちは絶対その気はないだろうけど)「Keeper Of The Flame」でバンドもファンもより深く繋がったみたいな。
私の中で、「Haching Mayflies EP」は強烈だった。当時、部活動や先輩、教師との上下関係で円形脱毛症を発症するほどストレスを抱えていた私にとって、このEPは救いそのものだった。聴けばすべてを忘れられるし、優しい抱擁のような楽曲は、田舎の狭いコミュニティー特有の汗臭さみたいなのを払拭してくれた。「大丈夫だってわかってる/大丈夫だって知ってる」そう繰り返される歌詞に無条件で救われた。このEPからもう心の底からこのバンドを愛している。いや、依存に近いかもしれない。
Keeper Of The Flameツアーを今は無きZepp Tokyoで観た時は、余韻のあまりしばらく会場から動けなかった。何が原因かはわからないけど、そのまま胃腸炎を発症して、滅多に休めないブラック企業を数日休んだ。腹の痛みはすぐに消えて、残りの時間は自分と向き合うために使った。このままじゃだめだ、辞めようと決心したのはその時だったと思う。結局一年ぐらい辞められなかったけどな!!
このツアーあたりから、ハイエイタスがより強いバンドになっていくのを感じた。チケット代を抑えるために、機材の持ち込みや撤収、機材車の移動を自分たちで行っていた。これは、ハイエイタスの映像作品にドキュメンタリーとして残っている。
この頃から、ただただチケットがとれなかった笑。
Hands Of Gravityは自分で当てたかな?Bend the Lensとかはツイッターの譲りますツイートにリプして手に入れたはず。これもどうかと思うけどね。モノクロームは全滅。Our Secret Spotは後輩が当てて同行。十周年の国際フォーラムは、ツイッターでフォロー外から声をかけてくれた青年のおかげで参戦できました。本人曰く、誰に譲るか悩んでいて、たまたま私のツイートをみて、過去の発言とかもみて声をかけてくれたらしい。本当にいい子だった。今でもドラム頑張ってるかな。なんかの縁でまた繋がれたら声をかけてほしい。当時は、内臓の不調で乾杯できなかったけど、次はお酒奢るよ。
5年振りに日比谷という特別な場所でハイエイタスが観れてよかった。幸せもんですわ。この時代に生まれてきて本当に良かった。音楽が聴けて良かった。ライブに行けて良かった。そう思います。改めまして、ハイエイタスどうもありがとう!これからもよろしくね。