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家庭で出来るハズバンダリートレーニング

Karen Pryor Academy ライブエピソード#18は、家庭での医療ケアトレーニングについてローラ・モナコ・トレリが語り、点耳薬、点鼻薬、内服薬を与えるトレーニングデモを見せました。


ローラ・モナコ・トレリは、イリノイ州シカゴにあるAnimal Behavior Training Conceptsの創設者です。1991年にシカゴのシェッド水族館に入社し、ベルーガ、イルカ、ラッコ、アザラシ、カワウソ、ペンギンなどのトレーニングを担当てきました。シェッド水族館で10年近く働いた後、サンディエゴ動物園、ブルックフィールド動物園に移り、主任トレーナーとして活躍しました。動物園では、霊長類、大型猫、猛禽類、馬、オウム、樹上のカンガルー、キリン、レッサーパンダ、犬など、さまざまな陸生動物を担当しました。

ローラは、カレン・プライヤー・アカデミー(KPA)の教授陣の一員であり、スーザン・G・フリードマン博士の「Living & Learning with Animals」オンラインコースのアシスタント教員を務めています。また、シカゴのダウンタウンにあるWest Loop Veterinary Careでプライベートトレーニングを行っています。ローラは、米国、イタリア、スウェーデン、英国、シンガポール、日本、カリブ海諸国で開催された数多くの専門家会議で発表し、セミナーで教えてきました。また、アメリカ獣医師会大会、中西部獣医師会大会、Penn Vet Working Dog Conferenceに招待講演を行いました。また、WGNやNBC 5のニュース、WGNラジオ、WCIUのYou & Me This Morningなど、さまざまな放送メディアに出演しています。また、Fear Free Professional Trainer Certificationプログラムや、Karen Pryor Academy Better Vet Visitsオンラインコースにトレーニングビデオを提供しています。

特別なトレーニングではない

お薬を飲ませたり、治療をすることが必要となってからトレーニングをするのでは遅すぎる。ハズバンダリートレーニングはそれが必要となる日を想定して、できるだけ早く始めるのがおすすめです。ただ、特別なトレーニングとして構えなくても、ハズバンダリートレーニングは日々のトレーニングに組み込まれたものなのだとローラは語っています。

マットに行く
キューで行動する
リードを弛ませたお散歩
来客をお迎えする
これはほんの一例ですが、全てがハズバンダリートレーニングとなります。

獣医師との連携

ハズバンダリートレーニングをするにあたって、獣医との連携は最も大切なものとなります。経口薬の与え方も、混ぜてはいけないもの、動物にとっていいもの悪いものを獣医師の指導のもとにする必要があります。

経口薬の練習で使う空のカプセルや、シリンジも、動物病院で支給していただける場合もあります。また、どのようなケアが動物病院で行われるかを想定してトレーニングするためにも、そして家庭で練習したことを病院で活かすためにも、獣医師との連帯は欠かせません。

経口薬の練習

薬を隠しこめる食材を普段から見つけて練習しておきましょう。うまく食べ物の中に隠し込めて、それを気が付かないまま食べてくれるのならそれに越したことはありません。

ローラがラッコで経験したことがあるように、すんなり食べ物に隠したものを食べてくれるとは限りません。ラッコはとても掌が敏感で、その手でまさぐって食べ物を探します。しっかりと食べ物にくるんで渡した薬を、いとも簡単に見つけ出し、食べ物だけを食べて薬を吐き出してしまった経験から、ローラが試みたのは、「飲み込む」という行動を強化することです。

選択し行動できる力 Agency

Agencyとは、単に自分で選択するだけでなく、自分の意志で独立して行動する能力のことです。例えば、現在の選択が満足できない場合に新しい選択をすることも含みます。近年のアニマルトレーニングでは、動物がこのAgency を持つ事が動物福祉においてとても重要だと考えられています。

例えば、承諾を意味するチンレストをしていてる時、そして医療行為をしようとして動物が頭を上げた(チンレストを止めた)としたら、ローラはその時もクリッカーを鳴らしトリーツを出すと説明しています。それは選択して行動できることを尊重するためです。

間違えてはいけない条件付け

動物が拒否を示した時、基準(クライテリア)を下げて、刺激を何かいいものと組み合わせて強化する古典的条件付けを使います。その時に気を付けなくてはいけないのが、キャシー・スダオが書いている「ペアにすべきでないもの:結果をごちゃまぜにすることの結果 What Not to Pair: The Consequence of Mixing Consequences」 

ーーー抜粋ーーー
トレーニングの中に古典的条件付けが別の形で入り込んでくることがあります。私達はこれを容易に見逃してしまいがちです。古典的条件付けは、どの刺激が強化子で、どの刺激が弱化子かについての動物の見方を変えてしまうのです。そして強化または弱化の結果として情動的価値に起こった学習による変化はしみつき長く続くものになります。

口の中に異物が入ってきたとき、吐き出そうとするのはごく自然な反射です。それをお薬を飲ませたいがために、トレーニングを続行してしまう危険性がそこには潜んでいます。

レジリエンスを養う

レジリエンスとは、困難な問題、危機的な状況、ストレスといった要素に遭遇しても、すぐに立ち直ることができる力です。レジリエンスを養うのもハズバンダリートレーニングの一環です。

例えば、普段と違う触感や味のものを食べ物の中に感じても、それほどストレスに感じない、またはストレスを感じてもすぐも回復できるように、トレーニング用の食材の中にあえてすっぱいものを入れる等、普段と違う何かの触れておく練習が有効です。

お薬を毎回同じ場所で与えない、あえて場所を変えて与えるのも、動物に容易にお薬を想像させない配慮になります。

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