自然現象としての音楽 古代ギリシャのピュタゴラス
ピュタゴラスと数、音の調和
音楽を構成する音というのは自然現象であり、地球上において空気の振動を人間の感覚器官である「耳」を通じてキャッチしその判別を行う事ができるからこそ可能な原理といえます。
現代では「国語」「算数」「理科」「社会」「外国語」がいわゆる教科とされますが、古代ギリシアでは「哲学」「音楽」「幾何学」「天文学」が四学と言われていました。
音楽において初期の研究を成したとされるのが紀元前 580年ごろに生まれた有名なサモアの賢人とも言われたピュタゴラスでピュタゴラスの発見で有名なのは数学でも必ず出てくる直角三角形の比率を表す「ピュタゴラスの定理」と言われる物があります。
ピュタゴラスは「万物は数なり」という思想の元、自らの教団を作り、様々な現象を数字で表すことに力を注いでいました。
ピュタゴラスの定理も3:4:5という比率ですね。
ピュタゴラスの教団の紋章であるテトラテュクスは多くの現象をそれだけで説明しています。
テトラテュクス
後の哲学、幾何学や数学でも多くの影響を残したピュタゴラスですがその中でも音楽の中に絞って説明していきます。
ピュタゴラスはある日鍛冶屋の前を通りがかった際、そのハンマーの共鳴音が美しい事に気が付き鍛冶屋の中へ入っていきました。
そこには5本のハンマーがあり、それを見てみると12 : 9 : 8 : 6という比率の重さで、残りの1本は不協和音を出すという発見でした。
この発見をしたピュタゴラスはそれを当てはめようと弦を張り駒を動かす事で弦の長さを調整できるモノコードという楽器を製作します。
この時発見した美しいとされる和音3つ、オクターブ、完全五度、完全四度とし以下の弦の長さを比率に表しました。
オクターブは2:1
完全五度は3:2
完全四度は4:3
これによると、ハンマーの比率12:9:8:6は完全四度の積み重ね、いう事になります。
また完全5度を含んでいます。
今だと音楽理論で出てくる五度圏と言われる物になっています。
また中国では三分損益法、邦楽では順八逆六という方法があり、このピュタゴラスの音楽における比率と同じ原理を使用しています。
「三分損益」は弦を2つに割り1つをたたむ事でオクターブ、3つをたたむ事で完全五度、1/3を1つを足す「三分益一」とされる方法により完全四度を作るという方法で弦楽器が構成されていました。
三文損益法は紀元前91年に書かれたとされる中国の「史記」の中に出てきています。
ピュタゴラス音律
ピュタゴラスの作り出したこの原理は現代でも使われておりますが実際今あるピアノで使われている「平均律」と呼ばれているものとは違いピュタゴラス音律とされる物でした。
たとえばドを起点に5度づつ音階を積み上げていくとこうなります。
ソ#とラbの音律は通常、異名同音と呼ばれピアノの鍵盤上は同じ黒い鍵盤の位置になります。
が、ピュタゴラスの言うように3:2の比率、完全五度を積み重ねていくと、ずれがでます。
この部分をピュタゴラス音律ではウルフの五度と呼び、まるでこの音程がオオカミのうねり声の様なのでそう命名されています。
後の純正律や現在の平均律はこのピュタゴラス音律を元にして作られています。
*純正律はピュタゴラス音律できっかりした割合にならなかった三度、六度、七度を再設定しこのうねりを無くしたものになり、平均律はウルフの5度を12等分して均等に割り当てた物になります。
このように、西洋文明は自然の中からこうした理を見出すことにより発展して行きました。
中でも古代ギリシャの賢人達、ピュタゴラスや、後のプラトン、アリストテレスなどの発見などを基に大きく発展していきます。
次回は、続古代ギリシア、ピュタゴラスの提唱した天文学と音楽の関係「天球の音楽」について書いていきます。