お笑い自民食堂 秋の料理祭り(フィクション)

自民食堂の総シェフは日本料理組合の理事長を事実上兼ねている。広島風お好み焼きを得意とするキッシー総シェフが自民食堂の裏金料理人続出でケチがつき、客離れ防止のため辞任を表明した。秋の料理コンクールで優勝した料理人が後継者となる。

コンクールの投票権を持つのは自民食堂料理人と4000円の年会費を2年以上払った登録会員。1回目投票で過半数が取れなければ上位1、2位にによる料理人と都道府県代表による決戦投票となる。

一番人気は「鳥取風・梨ゴレン」のゲル・バシイ料理人。自民食堂では出戻り組である。過去4連敗してるので最後の戦いと位置づける今回は、5連敗のイメージを避け鳥取名産「猛者エビ」でエントリー。非常に美味なのだが、鮮度が落ちるのが早く地元でしか食べられない「幻のエビ」と言われている。果たして全国民に食してもらえる日が来るか。

二番人気はシンジロー料理人。親父さんは激辛路線の「横須賀変人カレー」で総シェフとなったが、倅は「横須賀エコカレー」のマイルド味で勝負する。誰にでも受ける口当たりマロヤカさが逆に災となり、中味のない「ポエムカレー」と揶揄され人気急落との評が出ている。ちなみに、親父は三度目の正直で優勝した。

三番人気はサナエ・タカ料理人。「奈良・三輪素麺」保守風味を掲げる。口当たりは滑らかだが、コシが強い。推薦人20人のうち13人が裏金料理人であるものの、人気は急上昇中。日本料理組合財務部の緊縮路線には反対、同銀行部の利上げにも反対。リーフレット30万部を郵送(一部250円だと郵送料だけで7500万円)したと批判されている。

あとはドングリの背比べだが、コノタロ料理人は「平塚ベルマル・ハンバーガー」。ジョージタウ料理学校出身で、お品書きは英語で書いてある。各種バーガーの中にはコオロギの肉があったり、中華風味だったり、自民食堂の伝統客層からは批判もある。キッシー総シェフが解散宣言した食堂内流派の中でアッソー流派を鮮明にしている。

流派弱体化の中で自民食堂内最大勢力となったのが魔の4回生。逮捕者やスキャンダル辞任組が数知れない中で、若手の圧倒的な支持を受けて出馬したのが、コバホーク料理人。「千葉・なめろう」で勝負。白メシに合う、美味しくて皿まで舐めてしまうところからその名がついた。鷹の爪が隠し味。ハーバト料理学校ケネデ学科(HKS)出身。大化けする?

かつて「岡山風カツ丼」を掲げた橋龍元総シェフは「ポマードの臭いがする」とイチャモンをつけられ、「横須賀変人カレー」に敗れたことを覚えているだろうか。今回「岡山風チャツネ入りスパイスカレー」をお品書きに掲げるのがカツ・カトー料理人。大変美味なのだが、名前が長すぎて広がりがない。「岡山風カツ丼」の方が良かったかも。

アッソー元総シェフに担がれて一時話題になった上ヨーコ料理人は「静岡うなぎの白焼き」。現在、日本料理組合外務担当理事でウナギの素材は抜群に良い。惜しむらくは塩もタレもついていないので「味気がない」と言われていること。HKS出身。モッタイナイねの声が流れる。

超高級「下関フグコース」をお品書きに掲げるのが林ヨシ料理人。フグ市場もファミリーが経営してる? 伊藤博文と李鴻章の下関会談をご先祖がセットしたと言われる。HKS出身なので英語は抜群に上手く、ピアノを自分で弾きながらジョン・レノンのイマジンを歌うなど、多才。ただ、人気がない。

おっと、忘れてました大物候補。自民食堂ジェネラル・マネージャーのトシミツ・モテギ料理人。お品書きは「足利ポテト入り焼きそば」。素揚げしたジャガイモがゴロゴロ入って太めの甘い麺と絡み、地元ではソールフードとなっている。HSK出身で文書も映像で記憶すると言われている異才の持ち主。ただ、人望がない。

というわけで過去最多の9人が立候補した「自民食堂 秋の料理祭り」なのだが、決戦投票になると、キャスティング・ボートを持つのは裏金料理人たちかも知れない。

(このコラムはフィクションです。参考文献は「食べログmatome」他。原作は吉崎達彦氏。今から20年以上前に吉崎氏からヒントを得て、私が「夕刊フジ」に連載したことがあります。)






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