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短歌

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#口語短歌

【短歌】うら寒きまちかどにプールのにおい かつてぼくらは守られていた

うら寒きまちかどにプールのにおい かつてぼくらは守られていた 行きしなに傘を忘れる とつとつと風は夢境の草原をゆく どこへも辿り着けずじまいの孤独 冬の抱擁の処方箋 寝つけずに覗いたひみつ 4時の光は太陽のいろをしている 天を衝く雲の彩度に驚いてああなんだ、ただの現実か 直視すらままならぬまま親愛は茶碗の底でみるみる腐る 死にたいに早く死ねるといいねって返すあなたに愛をされたい 私がいなくなったあとのきみ いずれ遺品になる文庫本は希望

【短歌】人生の意味とかを問う資源ごみ置き場でひかるペットボトルに

人生の意味とかを問う資源ごみ置き場でひかるペットボトルに あの人を悪者にして強くなるきっと裁きはわたしに下る 空白が身を焦がすたび花は降るうつむきがちなあなたの頬に 神とかの慈悲は律儀にスルーする救うに値しないおまえを なにもかも蹴り飛ばしてよかんらんのひとみ、あなたの罪状は希望 這ってでも進みたいのにうずくまる僕を笑い飛ばしてみせてよ 車掌の礼でやっと気づくいつからか見送られる側だったわたし 冬の夜に青く燦々と輝く最後の砦みたいなスーパー この愛はとうにダメ