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【詩】あるヴィジョン

銀河の子どもたち
宇宙の揺籃に
遠い記憶を孕み
この透明に膨らんだ
黎明の空気を呼吸する

忘却のヴェールは
繰り返される
胎児のイニシエーション
剥奪された天使の羽の代わりに
赤く熟した智慧の実を授かる

巨大な地軸のN極とS極に
ぽっかりと穿たれた穴を
ある日君は見つけた
僕らは覗く
その空洞の向こう側を
隠された秘密の契約を

鳴り響くのは
地鳴りのような警告音
その秘密に近づいてはならない
体躯の大きな光の存在が
巧妙に張り巡らした結界
不用意に近づけば
それなりの代償を支払うことになるだろう

体躯の大きな者たちは
かつて神の名を持っていた
何千年も昔のこと
時代ごとに
文化圏ごとに
異なった複数の名があった
どこからしら音の似た
別の名前が

彼らは時の管理者
星のゲートを守っている
時空を超える権限は
僕たちには与えられていない
一部の例外を除いて
その例外を決めるのは
「神の炎」と呼ばれた存在

天空の彼方を見て
君が涙を流したのは
何か大切なことを
思い出したから
具体的な事象ではなくて
何かの感覚のようなものが
心のどこか奥の方で疼いたから

星の子どもの涙を見て
ある本の一節が頭をよぎる
『記憶とは、すでに知っていることに
 しがみつくこと』

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