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【リレー】あなたの好きな映画は?

最も聞かれて困る質問が、”一番好きなアーティストは?”と”一番好きな映画は?”だ。どちらも口頭で聞かれたら何となく相手に合わせて答えてきたが、今回『翻訳者のリレーブログ』で“好きな映画”がテーマとして回ってきたので、ちょっと自分なりにガチで考えて書き記しておこうと思う。

と言ってもやはり迷うものだ。「スタンド・バイ・ミー」には思い出がたくさん詰まってるし、「リアリティ・バイツ」も大学生だった私はかなりの刺激を受けた。でもやはり私にとって最も大切な作品は、映画好きの原点を作ってくれた、1980年代のジョン・ヒューズ作品だろう。(結局一本に絞れてないが…)

ジョン・ヒューズはティーン映画の歴史を変えたと言われている。10代の心情に寄り添い、あそこまでリアルに描いたアメリカ映画はそれまでなかったからである。
私が最初に観たのは「プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角」(1986年、ジョン・ヒューズ脚本/製作総指揮)だったと思う。母親を亡くして父親と慎ましい生活を送っているアンディ(モリー・リングウォルド)が、裕福な家庭出身のブレーン(アンドリュー・マッカーシー)と恋に落ちるが、アンディを見守る幼なじみのダッキー(ジョン・クライヤー)も彼女に想いを寄せていて…という三角関係を描いている。ダッキーのキャラがとにかく愛おしくて、すごい美人ではないのに目が離せないモリー・リングウォルドに完全に魅了された。
次に観たのは、そのモリー・リングウォルドが注目されるきっかけとなった「すてきな片思い」(1984年、ジョン・ヒューズ監督/脚本)である。その後、彼女はジョン・ヒューズのミューズと言われるようになる。
続いては、「プリティ・イン・ピンク」のエンディングに納得がいっていなかったヒューズが、高校生の三角関係を改めて描き直した「恋しくて」(1987年、ジョン・ヒューズ脚本/製作)。"納得がいっていなかった”部分には、思わずガッツボーズをするはずだ。
そして最後は「ブレックファスト・クラブ」(1985年、ジョン・ヒューズ監督/脚本)だ。この作品が大人になった今となっては最も好きかもしれない。

各作品のストーリーは割愛させて頂くが、どれも10代の彼らが直面する“格差”や”アイデンティティ”が土台となっている。私は当時、小学生高学年~中学生でアメリカに暮らしていたのだが、そんな幼い年齢でもやはり同級生の間に存在する生活の格差は感じていたし、周囲にどう受け入れてもらえばいいのか悩む場面も多々あった。だから、同じように苦悩する年上の彼らを映画の中で見て、“自分らしく生きればいいんだ”と救われた気持ちになったのを覚えている。

またジョン・ヒューズ作品はサントラなしでは語れない。彼はいわゆるアメリカの旬のアーティストやヒット曲を使わず、USランキングには登場しないようなUKロックを用いていた。Simple MindsやPsychedelic Fursも、彼の映画によって全米に知られるようになったと言っても過言ではないだろう。姉の影響でUKロックをよく聴いていた私は、マイナー扱いされていたUKロックがメジャー級のティーン映画で使われていることに興奮した。今でも「プリティ・イン・ピンク」や「恋しくて」のサントラは名作だと思うし、街中で「Don't You Forget About Me」の”Hey, hey, hey, hey!"が聴こえてくると心が躍る。

そして映画のシーンが明確に頭に蘇ってくるのである。下記の記事もある通り、彼は感情を音楽で表現するのが本当に卓越していたのだと思う。

ジョン・ヒューズ作品との出合いがあり、サントラが好み=きっといい映画という基準が私の中で出来上がっていった。それはスパイク・ジョーンズ、マイク・ミルズ、ソフィア・コッポラ好きに繋がっていき、最近では「mid90s」や「WAVES」もその部類に入るだろう。

と語り始めたら正直きりがないのでこの辺りで止めておくが、普通の人の普通の喜びや苦しみを、いい音楽に乗せて描いている作品が私はやっぱり好きだなあと、こうして書きながら改めて感じている。実は2023年に日本で公開される作品の中に激推しの一本あるのだが、その話はまた別の機会に。

2023年もいい映画とたくさん巡り合うことができますように。
皆さん、どうぞよいお年をお迎えください。
そして来年もどうぞよろしくお願いします!


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