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レコードショップをオープンした日の話(2/2)

あいまいな音楽・場所・お店づくりの話②


はじめに/SALOについて

神奈川県大磯町の海岸近くに、2022年末オープンしたスペース SALO(サロ)。
STUDIO AND LIBRARY OISO」の頭文字から名づけられたこの場所は、録音スタジオからなる2-3Fと、ライブラリー部分の1Fをコンセプトにスタートした場所です。

●録音スタジオ/ライブ・イベント会場
●レコードショップ
●食堂とコーヒー、ナチュラルワイン
●ギャラリー

…といった様々な要素を持っていて、一言では説明が難しい場所でもあります。
昨年から1Fの運営に参加することになった私が、控えめなオーナーになりかわり(笑)、ここでの諸々を日記のように書き進めていきたいと思います。
不定期、できれば週一回程度の更新を目標とした記事ですが、よろしければお付き合いください。

SALO外観/特色の異なる3フロアで構成


いよいよ、オープンの日


ここからようやく、SALO 1F内にレコードショップをオープンした日の話。

とはいえ、オープン日の12時にドアを開けると、あとは怒涛に飲み込まれるのみ。
多くの方が棚を覗いてくれて、試聴したり、目の前のレコードやそこから繋がる音楽について話ができる幸せ。

音楽を誰かと一緒に聴いて、会話できる場所。
前回からの繰り返しになるけれど、やりたかったのはこういうこと。
昔はそれなりにあったこういう場所が、近年少なくなる一方だということを、とても寂しく思ってきたのだった。

偶然同じ時間帯に鉢合わせしたお客さん同士が、一緒にコーヒーを飲みつつ、そのとき流れている音楽について話をしたり。今度誰々のライブがあるから一緒に行く?そんな会話が漏れ聞こえてきたのも嬉しかった。

一番最初のお客さま

一番最初のお客さんは、大磯内の近所に在住のSさん。
かつて都内の有名レコード店にも勤めていた筋金入りの音楽ファンで、たびたびSALOに来てくれては、レコ屋やってくださいよと声をかけてくれていた。

そのSさんが、始めてくれてありがとう、と帰りしなに握手を差し伸べてきてくれた。このことは忘れないと思う。

たくさんの知人たちもご祝儀代わりにきてくれて、開店祝いのお花もいただいてしまう。
飲食営業やライブ営業は去年からやっていたので、自分としてはとっくに開業している気分ではあったのだけど、お祝いのお花を見ると、ああ、本当にオープンしたんだなあとしみじみ思う。

一部にて失礼。沢山いただいたのに、写真を撮る暇がない!


売上、そして売れたレコードの傾向について


気になる売上も上々。
とはいえ知人の割合も高かったので、ご祝儀購入の意味合いも強かったと思う。
同時に相手はかなりのレコード通であり、審美眼の厳しい彼ら彼女らの幾人かが、10枚以上もまとめ買いしていってくれたのは嬉しいようなびっくりするような。
在庫の半分以上はもともと私物コレクションというスタートにもなったので、旅立つわが子を一斉に見送る気持ち、ほんの少しの寂しさもありつつ。
嫁ぎ先でも元気にやるんだよー。

ちなみにこの日売れたレコードの内容を見ると、
価格的には1,000円+税のバーゲンプライスが一番多かった。
お店のボリュームゾーン的にも、いちばん多い価格帯は1000-2000円代。
次に3000-5000円未満。
商品ラインナップの目安として、現在の新品レコード価格よりも平均的に安く抑えたかった。

バーゲンプライスとはいっても、一枚一枚は稀少なものがけっこう含まれる。
個性的な音楽で、それゆえプレス数は少ないけれど、今はまだあまり注目されていないレコードたち。
まとめ買いの対象になったのもこうした商品が多かった。
Record Shop NRTは、セレクションはかなり個性的だと思うけれども、高価なレコードはむしろ少ない。

世間の評価が定まっていないレコードも多く、それゆえリスナー目線では冒険にもなるけれど、
感性のまま気軽に連れ帰り、自分の耳で楽しみを見つけていく。そうした購買行動がしやすい値段設定にしたかった。

もうひとつ、低価格にこだわったのは、SALOという場所の特徴もある。
ライブを見たり、西湘素材の美味しい料理、コーヒーやナチュラルワインの提供に力を入れているから、レコード以外の目的で来店される方が元々の客層でもある。
数万円の高価なレコードをずらり揃えることで、自分には関係ない世界、骨董品の類いと思われることも避けたかった。
レコードは、何世代にも渡って聴き継ぐことのできる日用品なのだから。

とはいえ他のちょっと情けない事情もある。
開店に必要な品出し準備が遅々として進まず、作業は当日の早朝ぎりぎりまで続いた。
店頭に最初から並べる数はもちろんのこと、万が一売れ行きが良いときに、すぐ補充できるだけの分量もあらかじめ準備しておく必要があると考えた。
そうはいっても数人しか来店しないのではないか、そんなに上手くいくわけがないだろう……
と、しじゅう睡魔の声が響いたけれど、結果的には多めに準備したことが功を奏した。

とにかく準備中は眠気で頭がまわらず、終盤は丁寧にコメント書きする余裕を失い、思考停止も相まって1000円+税のプライスを連発。次々に低価格の値札を張り付けていく、、
という暴挙によってそれなりの量がようやく確保できた。
通な人たちはさすが、この辺りのレコードに目をつけて次々キープしていった。

たとえば、マニアックかつ最高の選曲がレコードで聴ける鎌倉の名店BARのKさんもそんな一人。
値札とこちらを交互に見て「本当にいいんですか?」と、にやり。
Kさん、オープン日は用事で来れないって言ってたのにー。
でもまあ、Kさんのお店に行けばまたそれらのレコードを聴くことができるかも。そうやって考えることができるのもレコードの良さかもしれない。


買わなくても良いレコード屋/マニアだけの場所にあらず


来てくださったのは、マニアな人たちだけというわけでもなく。
レコードプレイヤーを持っていない友人夫妻が、お店の様子を見に立ち寄ってくれて、ワインを飲みつつ棚を覗いていってくれた。
レコードプレイヤーを買おうかな、と帰宅後に話していたとも耳にした。その後どうなるかはともかく、こういう機会を持てたことがとても嬉しい。


レコードって楽しいですよ。
とくにここで扱っているような、現代の一般的な音楽とは趣を異にするものーーあいまいな音楽、明瞭でない音やムードをまとった音楽は、CDやデジタル配信で聴くのとは別物の手触り、生き物のような表現力がある。

古い音源と現代のそれとでは、そもそも録音や制作方法の違いが大きくあることも前提にあるが、さらにレコード盤と再生機器の組み合わせそのものが、生楽器に近いからかもしれないと思っている。

レコードショップについては、お店のコンセプトと品揃え、仕入れ、オーディオについてなど、書くべきことが色々とあるので、また追って。


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店舗情報

Record Shop NRT
@ SALO (神奈川県中郡大磯町大磯1665-2)

営業日:第1・2・3 土/日
詳細はSALO hp、Instagramにてご確認くださいhttps://www.mynameissalo.com/
https://www.instagram.com/salo_oiso/


取り扱い商品について

SALO 1F内に、レコードショップを常設オープンしました。
アナログ盤を中心としたレコードの販売を行います。

取り扱う音楽の内容はさまざまですが、
キーワードをあげるとすれば
「現代のフォークロア」、そして「あいまいな音楽」
2020年代のいま、フレッシュに聴ける音楽を集めました。

例えば…
アルゼンチンブラジル北欧のフォークロア音楽
近現代の器楽曲ーーポルトガル印象主義アメリカの現代曲日本の国民楽派
ニューエイジ・ジャズーー80年代ECM
SALOに縁の国内外アーティストの作品も、今後少しずつ取り扱いを増やしていければと思っています。

人間の手を介して作られた、その土地の風物を反映した音楽たち。
あるいは、曖昧さ・不明瞭なサウンドとムードをまとった音楽。
EC販売は当面行わず、店舗のみでの取り扱いとなります。

店頭在庫は数百枚程度と、お店を名乗るには決して多くないですが、これから少しずつ出品していければと思っています。

SALO 1Fでは、地元・西湘素材の美味しい料理、ナチュラルワインやクラフトビール、シングルオリジンコーヒーを提供しています。
レコードまたは飲食のどちらかだけでも、気軽にご利用ください。

2024年4月からは、第1・2・3週の土日が営業日です。
詳しくはSALOのカレンダー、インスタグラムをチェックしてください!

https://www.mynameissalo.com/
https://www.instagram.com/salo_oiso/

ランチの定番、西湘素材の魚のフライとサラダのプレート
コーヒーやナチュラルワインのグラス提供もあります


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