誰と、何を体験したかということの価値
アートの世界って、
2回半のバブルがあったんだと思う。
それは、新しいマーケットが
生まれたことによって起こった。
1回目は、20世紀のはじめ、1910年代くらい。
アメリカというマーケットが生まれて、
歴史的な意味からはなれた印象派が売れた。
ちょっとして、ピカソがスターになった。
その後、80年代に日本というマーケットができたけど、
購買層という部分はそれほど大きくはなく、
所蔵品を持たない、貸出先としてだった。
結局のところ、百貨店の催事だった
ということかもしれない。
セゾン美術館は、それなりの美意識もあったと思い好きだったけど、
ウィーンの美術史美術館が作品を貸し出す時に、
デパートの催事に貸し出すつもりはないと言ったという話を
聞いたことがある。
とはいえ、
この時代、東京に集められた美術品は膨大だった。
一般の人が、世界の一ヶ所で見ることのできた
美術品の質と量としては、
世界史のなかでも、
屈指のものではなかったかと思う。
それは、所有型でなかったおかげともいえる。
そして、2回目のバブルは、
中国というマーケットが生まれた今なのだろう。
結局のところ、作品を所有できる富裕層が
まとまって生まれることで
アートの世界が活気づくというのはわかる。
そんななかで、塩田千春展を見て、
今、日本で価値を生み出すのは、
こういう表現なんだろうなと思った。
たぶん、本人は日本のこととか
あまり意識してはいないかもしれないけど。
美術展が、モノを集めることから、
その場で何を体験させるかという方向になっている。
もちろん、インスタレーションは昔からあったけど、
それが今、本当の価値をもってきたんじゃないかな
と思うようになった。
メキシコの壁画運動とかともつながるものとして。
モノ(の所有)から体験へというのは、
いろいろなところで行われている変化だけれど、
「本当の価値とは何か」と考えると、
それは、本質的な変化なのではないかと思う。
誰と、何を体験したか
ということ以上の価値は
存在しないのではないかと。
(写真は塩田千春展より)
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