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自著論文等紹介「天武・持統・文武天皇の富本銭発行」

吉原啓「天武・持統・文武天皇の富本銭発行」(『万葉古代学研究年報』第18号、2020年)

この論文は、天武・持統・文武天皇三代の富本銭発行を、統治理念の表象とその継承という観点から考察したものです。

私はこれまで、富本銭だとか貨幣経済だとかを専門にやってきたわけでは全くありません。
この論文は、奈良県立万葉文化館に勤務していた歴史系研究員として、館の地下に眠る飛鳥池遺跡(飛鳥池工房遺跡)に関わる研究を、何か残しておかなければならないだろう、という使命感のようなものに駆られて書いたものです。
かなり無理やりテーマ設定をし、いつもはやらないジャンルの研究をしたので、とても苦しみました。

この論文では、富本銭の発行目的についての諸説を整理し、以下の3種類に分類してみました。

①厭勝銭説
②流通貨幣説
③統治理念の表象説

私は、このうち③の立場をとりますが、その中身は論文をご覧いただければと思います。

こうした先行研究の整理は第一節に書いてありますが、実は論文執筆中はここまで詳細に載せるかどうか迷っており、書いたり削ったりしていました。
あまり成果の大きい大論文ではないので、そんなに枚数を増やしてもいかんなぁ、と思っていたからです。

しかし、論文執筆最終段階で、この論文に関わる講演を行ったのですが、その時にオマケ的に先行研究の詳細なまとめを紹介しました。
すると、同僚たちやお世話になっていた先生から、この先行研究のまとめがとても有益だから、論文には当然載せるよね?載せてね!といった感想をもらったので、載せることにしました。
確かに、この論文で一番利用されるのは、この先行研究のまとめの部分かもしれないので、載せて良かったと思っています。

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