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『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』を読んだ
『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』を読んでみた。著者は、ちょっと前に読んだ『日本農業の真実』と同じ生源寺眞一さんだ。2010年の10月発行だから、こっちの本のほうが先に書かれたものになる。
全体を通して
この本は、高校生向けに食と農の経済学入門というスタンスで書かれている。そのため、語りかけるような口調で柔らかい表現が使われている。一方で、広範囲のテーマを扱いながらも少し踏み込んだ内容まで取り上げられているので、読み応えがあった。社会のしくみが見えてくるというと広すぎるけど、社会の食のしくみは少し見えてくるかも知れない。
授業を見立てて食と農について取り上げる
本文は授業を見立てて、5時限までの構成でつくられる。1限目は食糧危機。世界的な食料価格変動についてだ。2限目は先進国と途上国の農業。北米やEUが労働生産性を高めた農業で自国消費分を越える農産物を生産し、輸出している傾向があることがわかる。また、工業とは異なり、農業はその国の気象環境に大きく影響を受ける。そのため、途上国の労働力が低賃金であっても先進国の農業に対して単純に優位に立つことは出来ないことにも触れられている。この部分については、2010年と現在ではかなり変わっているかもしれない。3限目は食料自給率。自給率の理解の仕方や、自給率以上に気にすべき自給力について説明してくれている。4限目は日本の農業の特徴、5限目は日本でも農業を行う重要性について書かれている。
二冊読んでみて感じること
前回読んだ、『日本農業の真実』と比べると、この本は広範囲の内容をザァーっと書いてくれているので、日本の農業の全体的な雰囲気をつかむにはこちらの方が良いなと感じた。先にこっちを読めば、『日本農業の真実』をより面白く感じたかもしれない。
あまり間をおかずに同じ著者の書いた本を読んだこともあって、著者の重視していることが分かりやすかった。生源寺さんは、農村コミュニティの良さをすごく強く感じているのだと思う。農村コミュニティが助け合いながら、農業用水などの地域インフラを維持しているということにとても感銘を受けているようだ。確かに、農村では家はポツンポツンと離れているけど、ちょこちょこ一緒にバーベキューしてみたり、ふとした時に立ち寄ってみたり、作った野菜を交換してみたりと密接な関係性を築いている。一方で都会は家と家の距離はピッタリくっついているくらい近い割に、関係性は希薄だったよなぁと思う。
この差がなにか重要な価値を生み出せるのかなぁ。
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