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柴犬(婆)日記 〜認知症も悪くない〜

【むかしむかし発行していたメルマガの記事から】 
柴犬の祖母は、92歳まで長生きしたけど、80代からボケはじめ、なかなかのボケっぷりを発揮していたので、彼女の言動を日記に書いていた。読み返してみると、なんて楽しい日々だったのだろう、と懐かしい。(=^・^=)

 柴犬(婆)は明治42年5月5日、福島県生まれ。明治、大正、昭和、平成と4つの時代を駆け抜け、92歳で波乱の生涯を閉じた。

男勝りの性格で、自分の子以外に多くの子どもを親代わりに育てた。柴犬にとっては、唯一の祖父祖母で、可愛がってもらったと思う。

 食べることが大好きで、特にラーメン好き。晩年、かなりボケてからも、クルマでラーメンを食べに出かけた。

 これは柴犬がメルマガのためにつけていた「食べ物&豆柴日記」からの抜粋。90歳以降、最晩年、柴犬(婆)の名言集。

99.5.29
 先日満90歳になった柴犬(婆)は、今日の昼食にトンカツを食べながら、こういった。

柴犬(婆)「オレ(と自分のことをいう)は、背が1メートル50センチなんだけど、柴犬は2メートルぐらいか?」

 「四捨五入すればね」と答えたが耳が遠くて聞こえなかった。

99.6.16
 柴犬(婆)@90歳は、今日、メロンを美味しい、美味しいといって食べて、食べ終わってから、

柴犬(婆)「これはうまいスイカだな」

 と言ったそうである。柴犬(母)はめんどうなので、訂正しないでおいた。もう、ほんとにお茶目なんだから、、、。(∩.∩)

99.6.24
 柴犬(婆)@90歳。朝起きると柴犬(父)に

柴犬(婆)「おれはもっと長生きしたいんだけど、いいだろうか?」

と尋ねる。柴犬(父)も答えようがないので、「うん」とか「ああ」と答えると、一時は納得するが、すぐまた質問を繰り返す。それが延々続いたあと、柴犬(婆)は、今度は柴犬(母)に、

柴犬(婆)「○○(父の名)はいつもああなのか?」

と尋ねる。「どうして?」と柴犬(母)が聞くと、柴犬(婆)は

柴犬(婆)「だって、同じ事ばかり言うから」。

 そりゃあんたでしょ。(^_^.)

99.6.29
 夜、お茶の間でお茶を飲んでいると、柴犬(婆)が

柴犬(婆)「浜松にはまんじゅうはないみたいだな。」

と突然言い出す。ないって、昨日も食べたばかりじゃない、と言うと、首を傾げている。柴犬版「まんじゅうこわい」でした。おあとがよろしいようで。(^_^)

99.7.1
 柴犬(婆)@90歳は、柴犬(父)に向かって、こういった。

柴犬(婆) (東北弁で)「おめ、おれのことをちょっと呼んでみろ、、」

柴犬(父)「???」

 柴犬(婆)「日本人なんだからおかあさんと呼べよ。子供の時はママと呼んでもいいけど、、、」

 柴犬(父)「???」
 その後、柴犬一家で家族会議が開催されたが、柴犬(婆)の真意は謎に包まれたままだった。
 ちなみに柴犬(父)は子供の頃、柴犬(婆)を「かーちゃん」と呼んでたそうです。(^^)V

99.7.05
 うーん、食べ物ネタがない、、、。(^_^.)ということで恒例ばばネタ。夜、柴犬(婆)は、寝転がってテレビを観る柴犬(父)に向かってこんこんと説いていた。

柴犬(婆)「毎日毎日ぶらぶらして、、、、、職業安定所に明日行って、ちゃんとした仕事に就くように、、、。小さな会社でもいいから、、、。」

 あのー、柴犬(父)は、やっと仕事をリタイアできたばかりなんですけど、、、。

柴犬(婆)「ちゃんとした職につかないから、嫁がもらえないんだぞ!」

 あのー、もういらないと思うんですけど、、。ばんざーい。ヽ(^,^)丿

99.7.09
 柴犬(両親)が旅行に出かけたため、柴犬(婆)@90歳は近所の老人保健施設にショートステイでお世話になることになった。
 面会は午後8時までなので、仕事が終わってから行ってみる。柴犬のことも、熊このこともすぐ分かった様子で、部屋だと他の方にご迷惑なので、広間に出て話をする。
 柴犬「ここはどう?」

柴犬(婆)「ここに配達してもらえるのか?」

 柴犬(婆)「???」「ここに泊まってどう?」

柴犬(婆)「おれはラーメン」

 柴犬「ご飯はもう食べたでしょ?」

柴犬(婆) 「そうか?」

  、、、、。さすが柴犬の祖母、食べることしか考えていない。(^^)V

99.7.16
 先週から老人保健施設のショートステイのお世話になっている柴犬(婆)@90歳。毎日、夜に面会に行くと、お茶目ぶりを発揮。
 今日は、来てから一度も風呂に入ってないと主張。今日は入ってないけど、おとといは入ったよ、といくら言っても入っていないと言い張る。

柴犬(婆)「だって、顔を触ってみろ、こんなにがさがさだ。」

 って、あんた90歳でしょ!!(^_^.)

99.7.18
 柴犬(両親)の海外旅行により、近所の老人保健施設のショートステイを利用している柴犬(婆)@90歳、、、。
 毎日20~30分は面会に出かけているのに、

柴犬(婆)「おまえが時々来てくれるので助かるなー」

 って、あのー毎日来てるんですけど。(^^.)

柴犬(婆)「それにしても、○○(柴犬(父)の名)だって一度ぐらい来てもいいのに、何故来ない」

 って、あのー、そのせいでここにいるんですけど、、、。(^^.)
 おばーちゃん、ナイスナイス(^^)V

99.8.09
 柴犬(婆)@90歳。昨日は桃を食す。一口食べて、

柴犬(婆)「んー、うまい。これは椰子の実か?」、、、。(^_^.)

 夜は、柴犬の顔も見て、

柴犬(婆)「柴犬か?違うか?」

 というので、「そうだよ」と答えると、首を傾げていて、後から

柴犬(婆)「違うな、柴犬じゃないな、、、。」

 とつぶやいている。Who am I?(T.T)

99.11.05
 今日は食べ物ネタに乏しい一日だったので、とっておきの婆ねた。
 3日ほど前に、柴犬(婆)@90歳ボケ進行中、が朝、起きると、履き古しの靴下を持って台所にやってきた。柴犬(母)がどうしたの?と聞くと、靴下をみそ汁に入れると聞かない。
 やっと靴下を取り上げると今度はトイレに行ったきり帰ってこない。心配していると、、、。戻ってきた柴犬(婆)は、細かくちぎったトイレットペーパーを握りしめて、

柴犬(婆)「このかつおぶしをみそ汁に入れてくれ、、、」

  ばんざーい、ヽ(^,^)丿、、、(^_^.)

00.02.20
 柴犬(婆)@90歳は大分ぼけが進んでしまっている。ほとんど言葉が出なくなってしまったんだけど、昨日は、トイレに行って、介助している柴犬(母)に

柴犬(婆)「夜が明けたー!」

 と言ったらしい。ちょっと違うでしょ!バーチャン。

00.03.09
 今日は豆柴の退院の日。仕事はお休みして、病院へお出かけ。(∩.∩)
 無事退院して、まずはおうちへ。柴犬(婆)@90歳に一目見せようというのが目的。最近は、食べ物を要求する以外は、ほとんど自分から言葉が出ないぐらいぼけている柴犬(婆)なんだけど、少しは反応して欲しいと思っていた。
 すると、動物と子供は特別な力があるのか、にっこり笑って

柴犬(婆)「かわいい」

 とか

柴犬(婆)「いつ生まれたんだ」

 とか言うので、家族で驚く。でも、見せて良かったとみんなほのぼのした気分になっていると、いきなり

柴犬(婆)「私がもらっていいの?」

 って、あのね、ばーちゃん、、、。(^_^.)

00.05.05
 (略)そーいえば、柴犬(婆)の91回目の誕生日という記念すべき日だったけど、本人はすでに恍惚の人になって、ちょっぴりかなピー。('-')

00.08.17
 今日は柴犬(婆)の見舞い。肺炎は良くなったんだけど、ものが飲み込めなくて、これはもう回復の見込みはなさそう。柴犬も分からないぐらいぼけてしまったのに、

柴犬(婆)「ご飯食べる」

 とだけは言える柴犬(婆)だけに、管で栄養をとるだけでは可哀想だと思う。

00.09.16
 今日は、豆柴の受診に午前中に病院へ。終わってから、今度は、柴犬(婆)の入院している病院へ、病院のはしご。(^_^.)

00.10.20
 今日は柴犬(母)が栗ご飯をしたので、朝、食べる。温かい栗ご飯も美味しいけど、柴犬は冷えたのや、塩味をつけて握ったおにぎりとかが大好物。そーいえば、柴犬(婆)@長期入院中が大好きで、よく作ってくれたっけなー、と思う。

01.08.14
 朝食は昨日のカレーの残りを冷や飯にかけて食べる。今日は一日お休み。柴犬(妹1号夫婦)とお出かけ。まずは浜北の老人病院に柴犬(婆)のお見舞い。

01.11.04
 深夜、柴犬(婆)が入院している病院から、容態が悪化したとの連絡が入って、家族で病院に行く。着いたときには柴犬(婆)は亡くなっていて、最初は眠っているのか、と思ったくらい。
 92歳まで生きたし、21世紀まで生きたし、明治・大正・昭和・平成と生きたし、ボケるまで生きたし、柴犬ともずいぶんラーメンを食べに行ったし、悪くない人生だったのではないか、、、と思う。
合掌。

01.11.05
 朝食はコンビニでおにぎりを買って食べる。おーいお茶。
 仕事は午前中で帰って、柴犬(婆)の通夜の準備をする。
 (略)
 午後から親戚が来て、家もにぎやかになる。夕食は、うおてるで買ったお寿司、つまみ、お酒。まぐろのかぶとをオーブンで焼く。
 豆柴はみんながくるので、興奮気味。夜もなかなか寝なくて困る。

01.11.06

 柴犬(婆)のお通夜が明けて、今日は火葬の日。
 (略)
 朝食後にすぐにお坊さんが来て読経をし、出棺。柴犬(婆)が生前好きだったお茶、ラーメン(カップ麺で代用)をお棺に入れる。豆柴にも「おおばーば、バイバイ」と教えると、その通り言いながら、花を添えた。
 斎場会館では、おいなりさんとお菓子、飲み物が出る。
 1時間10分ぐらいで、柴犬(婆)は骨だけになって、骨壺には、柴犬(両親)と柴犬、柴犬(妹)で納める。

01.11.10
 (略)
 今日は午前中お仕事。終わって帰ってきて、急いで支度をして田舎の福島に向かう。明日は死んだ柴犬(婆)のお葬式をお墓のある福島でやることに。

01.11.11
 (略)
 お昼から柴犬(婆)の葬式。20年ぐらいぶりに会う親戚もあって、時の経つ早さに驚く。お寺を借りて、酒と簡単な料理で故人をしのんでいただく。最後に親戚代表でお二人が柴犬(婆)について語っていただいた時は少しじーんとする。
 (略)
 豆柴は葬儀の間中、別室でお菓子や料理を食いまくってたらしく、今日は3回もうんちが出る。(^_^.) それでも墓に骨を納めるとき、「おおばーば」だよと教えると、「おおばーば、はい、はい」といいながら、砂利を拾っては、線香と同じようにお供えしていた。

ばーちゃん、本当にありがとうございました。(=^・^=)


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