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悪意で人を傷つける「厄介な人」を見抜き身を守るヒント#1
はじめに ~実はあなたも狙われてる?~
ふと気づくと、困った人、嫌な人、面倒な人、厄介な人のことが頭に浮かんで気持ちがモヤモヤすることってありませんか?
いくらあれこれ考えても、その人のことを改心させられるわけでも存在を消すこともできない。だったらら、物理的にも頭のなかでも、そういう人とはなるべく関わらないようにするしかないということは十分にわかっているけど、やっぱりその人のことが頭から離れないみたいな……。
普段、「毒親」「機能不全家族」の影響によって心に深い傷を負い、生きづらさを抱えている方々のパーソナルサポートや、職場の心理的安全性の向上やハラスメントに関する研修をしていて気になるのは、なんら落ち度がないにも関わらず、身近な人から理不尽なことを言われたり、嫌がらせ的なことされて精神的に追い詰められ一人途方に暮れているかたが実は少なくないという現実です。
中には、一方的に被害を受けているのに「わたしが悪いのだからしかたないんです」と自分を責めるようにマインドコントロールされているケースもあるのです。
たとえば、こんな経験に心当たりはありませんか?
・仕事で自分が困っているときだけ見て見ぬふりをされてしまう。
・大切な情報を自分だけ知らされずに職場で恥をかかせられる。
・デスクからモノがなくなっていたり、関係のないところに移動していて探し出すのに苦労させられる。それをやんわり指摘すると「デスクの上に置いておく方が悪いでしょ。そんなに大切なら鍵をかけてしまっておけばいいのに」とキレられる。
・お酒の席で同僚たちと会社や上司の愚痴を言って盛り上がった翌日、なぜか自分だけ上司から呼びつけられ叱責される。
・「応援するよ」と言ってくれていたのに、突然、梯子を外される。
・苦労して手に入れた成果を、無断で横取りされる。
・まったく身に覚えのない噂を広められ、誤解を解こうとしても「火のないところに煙は立たないでしょ」と周りに取り合ってもらえない。
・上司にアドバイスを求めると「それくらい自分で考えて」と言われる。でも自分で考えて仕事していると「違うでしょ。どうして相談しないの」と叱られる。
・遠回しに「自分は劣っている」というメッセージを浴びせられる。
……などなど。
でも、いくらこうしたことを気に病んで誰かに相談しても、「ただの勘違い」「たまたまじゃない?」と軽く流されてしまう。
「わたしが悪い方に考えすぎなだけなの?」と気持ちを切り替えようとしてもやっぱりモヤモヤが晴れない。やがて自分のことも周りのことも信じられなくなる……。
もしかするとそれは考え過ぎなどではなく、周到に仕組まれた「精神攻撃」なのかもしれません。
実のところ、職場、学校、家庭、趣味の仲間、ママ友の集まりなど、日常のいたるところに、わたしたちの平穏な生活を脅かす「厄介な相手」は潜んでいます。
日本でも大ヒットした海外ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティー」の中で、フレンド(友達)とエネミー(敵)を合わせた「フレネミー(友達の仮面を被った敵という意味の造語)」という新しい言葉が、文化の違いを超えて広く一般に受け入れられたのも、身近にいる困った人の存在に誰もが少なからず心当たりがあったからと言えるのではないでしょうか。
彼ら彼女らは微笑みを浮かべながら相手の懐深くに入り込み、その人の親切心や責任感、罪悪感などを巧みに利用し、執拗に精神的ダメージを与えることでコントロールしてきます。さらには、被害者に「悪いのは自分の方だから」とマインドコントロールすることで加害責任を逃れることに、なんの罪悪感も感じていないのです。
近年問題になっている「カスハラ=カスタマーハラスメント」も厄介な人という意味では同じです。
厄介な相手から身を守る主な対人戦略
細道で犬に出会ったら、権利を主張して咬みつかれるよりも、犬に道を譲った方が賢明だ。たとえ犬を殺したとて、咬まれた傷は治らない。
エイブラハム・リンカーン
身近にいる困った相手のタイプ別対処法について書かれた本が毎年数多く出版されています。仕事柄そうした本を何冊も読んできた結果、対処法は概ね次の3つの戦略に分類できるようです。
1、スルー戦略
攻撃を受け流す、とにかく相手にしない、できる限り関わらない、最終手段としては環境を変える など
2、リフレーミング戦略
悩ましい状況を脳内でポジティブに変換する、気の持ちようで乗り切る など
3、モデリング戦略
悪役っぽい人、鈍感な人、意志の強い人を演じることで攻撃対象にされないようにする など
確かにどの戦略も有効に働くと思います。ですが、これらの戦略はすべて「後手の対処法」と言えます。
さらにいうなら、自分にはなんの落ち度もないにも関わらず、身に覚えのない攻撃を一方的に仕掛けられる善意の被害者に対し「我慢してスルーする」「気持ちを切り替える」「自分から居場所を変える」といったさらなる自己犠牲を強いることは精神衛生上かなりよろしくないはず。
また、「内向的で繊細な人」「優しくて共感力が高い人」にとって、いくら「悪役っぽく振る舞った方がいい」「意志が強い人のように振る舞った方がいい」と本に書いてあったとしても、実践することはかなりハードルが高く、うまく対処できないことがストレスとなって二重の苦しみを味わうことにもなりかねません。
そもそも厄介な相手はいくら避けても執拗に追ってくるし、攻撃をスルーしたらしたで「無視された」と被害者アピールによってさらに攻撃してくるケースもあります。「困った人」はそう呼ばれるだけの理由があるのです。
実際、わたしのもとに相談に訪れるクライアントの中には、相手の悪意に気づいた時には既に深いダメージを負っていて、執拗な攻撃に対応する余力が残っていないというケースは少なくありません。
だとしたらそうした厄介な相手から目をつけられないよういつもに小さくなって過ごす以外に方法はないのでしょうか? もしも目をつけられたら嵐が過ぎるまでじっと耐え忍ぶ以外に希望はないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。
今回からシリーズでお届ける記事では、いつ、どこで遭遇するかわからない厄介な相手から攻撃を仕掛けられる前に、相手の言動から悪意の有無や手口を見抜き攻撃される前にすばやく無効化し封じ込める戦略を中心に、
・タイプ別見抜き方
・回避できない状況での実践的なサバイバル術
・相手に舐められないメンタルを手に入れるトレーニング方法
について紹介します。
これまでずっと一人でいわれなき攻撃に耐え、しんどさを抱え続けてきたかた。人間関係は大切にしたい。でも、いいように人に利用されたり、ギクシャクした人付き合いで悩みたくない。かといって損得勘定だけの冷たい人間関係は寂しい……。
そんなかたにお役に立てば嬉しいです。
平穏な日常に潜む厄介な人
人の不幸を喜ぶ人たち
私たちの日常に突如として現れる困った人たち。
彼ら彼女らは、自分の目的達成以外には興味がなく、人の気持ちを踏み躙っておきながら、その痛みに共感するつもりも、罪悪感を感じるつもりもないように見えます。
被害者側がハラスメントを明確に主張することが難しい巧妙な手口を使ってくるばかりか、被害者自身に「嫌な思いをするのは自分に落ち度があるから」とマインドコントロールし加害責任を逃れてしまうこともあります。
また、たとえ万がいち悪意がバレても「ダマされる方が悪い」「こちらの方が被害者だ」と身勝手な理屈で開き直り、さらなる攻撃を重ねる始末です。
かと思えば、なんの悪意もなく人を傷つける言動をしておきながら、それにまったく無自覚な人もいます。
いずれにしても攻撃されてから防戦するといった後手の対応では遅いと考えた方がいいでしょう。実際、「やられた!」と気づいた時には、ときすでに遅しで状況は取り返しがつかないところまで悪化していることが少なくないのです。
しっかりと認識しなければならないのは、厄介な相手の中には「人の不幸ほど最高のご馳走はない」といった価値観を持っている人が少なからずいることです。
これはなにも極端なケースをことさら拡大して言っているのではありません。仕事柄、気づいた時には心に深い傷を負い、人間関係に自信を失ない、社会に適応することが難しくなって苦しんでいる方々をたくさんみてきた事実を、ありのままにお伝えしているだけです。
そこでこのシリーズでは「攻撃される前に気づく(見抜く)」ことを軸にお話ししたいと思います。
「攻撃されてから気づく」のではなく、「先に気づき、攻撃を無効化する」ための重要なパートとなりますので、ぜひ身近にいる悩ましい人を思い浮かべながらお読みいただければと思います。
ビック・ファイブから見た厄介な人の特性因子とは
会社の人事部で仕事をしていた頃に遭遇した「陰湿なハラスメント」「イジメ案件」、そして研修やマンツーマンのセッションで相談を受けた厄介な人間関係案件について、それらの人物像や具体的な手口(言動)をビック・ファイブの5つの因子に当てはめ整理していくと、困った人は4つのタイプに整理できます。
具体的なタイプ説明に入る前に、ビック・ファイブについて簡単に解説します。
「ビッグ・ファイブ(The Big-Five factor structure)」とは、アメリカの心理学者であり、オレゴン大学の名誉教授であるルイス・R・ゴールドバーグが提唱した、個人の性格特性に関する学説です。
人の個性は5つの因子の高低(強弱)がそれぞれ違うために生じているというのがビッグファイブの主張で、現在、パーソナリティ理論の中では最も信頼性が高く有効なものとして広く活用されています。
5つの因子は「外交性」「神経症的傾向」「誠実性」「調和性」「開放性」に分類されます。
●外向性(Extraversion)
(高い)他者との関わりを好む、野心を持つ、ステータスを持つことや注目を浴びることなど他者承認につながることに喜びを見出す、目標達成のために極めて活動的(衝動的)になる など
(低い)物静か、一人が好き、他者承認に関心が薄い、内的動機付けによって行動する など
●神経症的傾向(Neuroticism)
(高い)ネガティブな情動(恐怖、不安、恥、罪悪感、嫌悪、悲哀など)への反応閾値が低くストレスを感じやすい、自尊心が脆い、脅威や自分への挑戦に敏感に反応する など
(低い)強引、攻撃的、社会のルールを逸脱する、行動の結果に関心が薄い、リスクに鈍感 など
●誠実性(Conscientiousness)
(高い)衝動(思考や行動)をコントロールする、良心に従う、責任感が強い、決めたことを最後まで遂行する、熟慮する、執着心が強い など
(低い)衝動的、気分屋、意志が弱い、依存性のあるものに手をだす、悪習慣をやめられない など
●調和性(Agreeableness)
(高い)他者への共感力や配慮の姿勢、思いやりの姿勢、協調性、他者への親切や貢献、対立を避ける、空気を読む など
(低い)自分の利益への執着、メンタライジング(他者の信念や欲望、期待など心的状態を類推する気持ち)に関心がない、共感力が希薄、強い自己中心性、嫉妬深い、冷淡、不服従、競争的、支配的、不正直、敵意をあらわにする など
●開放性(Openness)
(高い)知的好奇心が強い、新しいものやアイデアを生み出すことを好む、想像力豊かで革新的 など
(低い)ルールを守る、決められた通りに進めることを好む、保守的で慎重 など
これらビックファイブの5つ因子と、これまで見聞きしてきた困った人の陰湿な手口を付け合わせしてみたところ、次のような特徴が浮き彫りになりました。
・「外交性」「神経症的傾向」が総じて高い
・「誠実性」「調和性」が総じて低い
・「開放性」は顕著な傾向は見られない
これらの特性を身近な生き物にたとえて「コウモリタイプ」「キツネタイプ」「ハイエナタイプ」「ハゲタカタイプ」の4つのタイプに分類しました。
次回はこれら4つのタイプについて「表面的な人物像」「主な攻撃手口」について概観していきたいと思います。
その人が単に「虫の居所が悪かっただけ」「相手の立場で考えることが苦手なだけ」など、厄介だけど別に悪気はない人なのか、それとも悪意を隠し持ち人をコントロールしようとしているのかを判別するポイントについてもお話しします。
判別ポイントを理解しておくだけでも「次の一手」が予測しやすくなり、余計な不安や混乱を防ぐことができるはずです。
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
〜毒親・愛着問題・アダルトチルドレン・ミッドライフクライシス〜
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