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悪意で人を傷つける「厄介な人」を見抜き身を守るヒント「心理戦に負けない技術」#9

本シリーズ記事では、いつ、どこで遭遇するかわからない「厄介な相手」から人格攻撃(モラルハラスメントなど)を仕掛けられる前に、普段の相手の言動から悪意の有無や攻撃手口を見抜き、攻撃される前にすばやく相手の意図を封じ込めるサバイバル戦略として、
・そもそもなぜ狙われやすい人、狙われにくい人がいるのか?
・タイプ別悪意の有無の見抜き方
・実践的なサバイバル術
・相手に舐められないメンタルを手に入れるトレーニング方法
について紹介していきます。

本シリーズの一回目「悪意で人を傷つける「厄介な人」を見抜き身を守るヒント#1」でもお話ししたように、「厄介な人とのコミュニケーション」を扱った本の多くは、基本的に「君子危うきに近寄らず」といった「逃げ」の文脈で語られることが多いようです。

実際、関わらなくて済むならそれに越したことはありません。

本記事でも「早期発見→早期見極め→早期対策」を基本としており、積極的な反撃は推奨しません。

ですが現実には、いくら関わらないように注意していても、悪意で人を傷つけ人が苦悩するさまを見て喜ぶような【変質性】の高い人たちは存在します。

そうした相手にどうしても仕返しをしてやりたいという気持ちを抱くのも人としては自然なことのように思います。

ただ、闇雲に反撃を目論んでも、相手は百戦錬磨の心理戦に長けた相手です。下手したら大怪我をする可能性だってあります。

心理戦と言えば、1988年に当時アメリカの大統領候補だった共和党のジョージ・ブッシュ候補と民主党のマイケル・デュカキス候補の二人が「死刑制度」に関するテレビ討論をした際のこと。

ブッシュ候補(死刑制度擁護派):「仮にあなたの奥さんがレイプされて殺害されたとしたら、その犯人を死刑にすることに賛成しませんか?」

デュカキス候補(死刑制度反対派):「いいえ、反対です。私が生涯を懸けて死刑に反対してきたのはあなたもご存じでしょう。それに、もし犯人を死刑にしても妻は生き返らない」

ブッシュ候補は極めて不適切で失礼な質問をぶつけたにも関わらず、デュカキス候補は感情的になることなく冷静に返答しました。

もしもこの討論を見ていたなら、どちらの候補者の意見に賛同しますか?

このテレビ討論をみた多くの人たちは、デュカキス候補に対して「冷酷」「合理的で人間味のない人物」と評価し、結果としてデュカキス氏は大統領選で記録的な惨敗を喫することになります。

このように心理戦ではロジックや合理性よりも「感情的な印象」がものをいうというところはおさえておく必要があるといえます。

それと運よく勝てたとしても、相手の「逆恨み」を買ってしまい、そこから泥沼の戦いに発展しないとも限りません。

そこで本記事では、仕掛けられた心理戦に効果的かつスマートに反撃するためのノウハウをお話ししたいと思います。

【注意書き】
本記事で紹介するテクニックは、あくまでも悪意で人を傷つけるような要注意人物を想定したものであり、それ以外の人にテクニックを使ってしまうと、逆にあなたが「厄介な人」と誤解を受ける可能性があります。
使用する際には、くれぐれもご留意いただき自己責任でお願いします。


「ノー」と言えない心理圧力に反撃するヒント


理不尽な要求を上手に断ることは、相手にとっては意外と手痛い反撃になります。

というのも、「ノー」と言われたにも関わらずさらに何かを強要しようとすることは、「ハラスメントの加害者リスク」を背負うことになるからです。

そのため厄介な人は、相手が心理的に「ノー」と言うことに抵抗を感じるような心理戦を仕掛けてきます。

たとえば、あなたが急いで会社に向かっている最中、突然「街頭署名活動にご協力お願いします」と声をかけられたらどう反応しますか?

ビックファイブの因子で誠実性や協調性の高いかたなら、「なんの署名活動ですか?」くらいは確認して、内容によっては署名するかもしれません。

ですが、多くの場合は「急いでいるので」と通り過ぎるのではないでしょうか。

ではこんなケースならどうでしょうか?

ときは2011年3月後半のある日(東日本大震災の直後です)。急いで会社に向かっている最中、突然「東日本大震災の被災者支援のための街頭署名活動にご協力お願いします」と声をかけられた。。。

大震災の悲惨なニュースを知っているあなたは「署名くらいなら」と急いでいる足を止めるのではないでしょうか。

ただ問題はここからです。

署名だけで済むと思っていたら突然「金額はいくらでもいいので募金に協力していただけませんか?」と言われたら、あなたはその依頼を断ることができそうですか?

ぶっちゃけ、「他人さまに募金するほど財布に余裕はないけど、署名くらいならいいだろう」と思って署名したというのが本音だったとしても、最初に署名依頼を受け入れてしまった場合、次の募金依頼に対しても、心理的に「ノー」が言いづらいと感じてしまうのではないでしょうか。

このように、最初の承諾が人の心を拘束する現象を「コミットメント」と呼び、これをコミュニケーションに応用したテクニックを「フット・イン・ザ・ドア」と呼びます。

フット・イン・ザ・ドアは「段階的要請法」と訳され、相手に対して何かの要求を通す際には、「大したことと思えないような小さな要求」から始め、徐々に要求を大きくしていくというシンプルなテクニックです。

テクニック自体はとてもシンプルなものなのですが、このテクニックを使われると、人は心理的に「ノー」が言いにくくなり、結果として相手の要求を受け入れてしまうように誘導されてしまうのです。

とはいえ、一度依頼を受け入れてしまうと、大きな依頼も断りにくくなるという心理的なカラクリさえ理解してしまえば、こうした心理的圧力にも抵抗することは難しくありません。

そこで、難易度レベル順にいくつか抵抗するためのテクニックを紹介します。

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