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京大英作文完全解説 (6,275字)[1998年後期英語第3問(2)]
近くにあるものを長い間見つめることは、目を疲れさせる原因となります。
およそ6メートル以内にあるものを見るときには、目の筋肉の緊張が高まるためです。
コンピューターを使うときに限らず、読書や工作のように近くにあるものを見続けなければならないときは、ときどき遠くにあるものを見て目を休ませるようにしましょう。
「次の文を英訳しなさい」(25点)
一回読んでスッと理解できる平易な文章です。
スマホ全盛の現在においては、1998年当時と比べて、もっと皆さんの身に染みることでしょう。
私は最近、コンタクトを外したあとに目を洗ったり、眼球を動かす運動をしたりしています。
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大気汚染により目も汚れますし、四六時中スマホやパソコンに触れることにより、目をかなり酷使していますから。
加えて「6メートル以内のものを見るとき目の筋肉が緊張する」ということは、私たちが学校や職場や家にいるとき、目は常に緊張状態にあるわけです。
たまには外に出て、空や海などの自然をぼおっと眺めることも大切です。
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第1文
近くにあるものを長い間見つめることは、目を疲れさせる原因となります。
「近くにあるもの」が書きにくいでしょうか。
「近く」は near や close です。
close の方が「かなり接近しているイメージ」です。
問題文は「6m以内」の話なので、 near でも構わないかもしれません。
Staring at something close (to us) for a long time tires our eyes.
直訳だとこんな感じです。
「見つめる」なので、stare at でいいでしょう。
look at や watch でもいいですね。
see は、ぼんやり見るイメージなので、適さないでしょうか。
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Looking at a nearby object for too long strains the eyes.
形容詞 neaby も使えます。
a near object はダメだけど、the nearest object は OK ということで、near の使い方も勉強になります。
動詞 strain (酷使する) を使えたらいいですが、なかなか難しいですね。
Watching a nearby object for too long makes our eyes tired.
↑第5文型を使ってもいいですね。
When we keep looking at something close for a long time, our eyes get tired.
「◯◯なとき」と分けて考えると、もっとシンプルに表現できます。
keep looking at とすると「見つめる」のニュアンスが出るでしょうか。
第2文
およそ6m以内にあるものを見るときには、目の筋肉の緊張が高まるためです。
「およそ6m以内にあるもの」ですが、within は知っておきたいところです。
an object within about 6 meters
an object within a 6 meter range
something closer than 6 meters
「目の筋肉の緊張が高まる」は難しいですね。
「筋肉」は「マッスル」だとしても、スペルを正確に書けるかどうか怪しいし、「緊張が高まる」も難しい。
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こちらは「完全意訳」の形で書いて、「ある程度の意味さえ伝えられれば OK 」という風に割り切りましょう。もちろん減点覚悟にはなりますが。
Tension in the eye muscles increases.
Our eye muscles become (get) tense.
直訳だとこうですが、なかなか難しいですからね。
we are overworking our own eyes.
overusing
「目の筋肉の緊張が高まる」→「目を酷使する」と意訳して考えると、上のようになります。
overwork や overuse といった、今どきのワードを使えるといいですね。
we use our eyes too much (badly) .
もっと簡単に書けばこんな感じです。
試験本番で直訳がどうしても思い付かない場合は、こんな風に上手く逃げましょう。
問題文の全部を完璧に訳すことは不可能なので、こういう適切な「ごまかし方」が、合格するために最も重要な技術のひとつであると言うことができます。
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なお「筋肉の緊張が高まるためです」とあるので、文頭に This is because をつけておきましょう。
This is because tension in the eye muscles increases when looking at an object within about 6 meters.
第3文
コンピューターを使うときに限らず、読書や工作のように近くにあるものを見続けなければならないときは、ときどき遠くにあるものを見て目を休ませるようにしましょう。
特別難しい表現はないけれど、いざ英語で書こうとするとなかなか難しい。
いかにも京大といった問題です。
主節部分が簡単なので、まずはそちらから処理しましょう。
ときどき遠くにあるものを見て目を休ませるようにしましょう。
we should occasionally look at objects in the distance to rest our eyes.
we need to give our eyes a rest from time to time by looking at something far away.
「遠くにあるもの」は、こんな風に書きたいところです。
「目を休ませる」は rest を使いましょう。
「ときどき」も様々な書き方が可能です。
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コンピューターを使うときに限らず、読書や工作のように近くにあるものを見続けなければならないときは…
問題はこの従属節です。
日本語で読むとスッと理解できますが、英語で書こうとすると意外に厄介です。
コンピュータ・読書・工作の関係性が複雑だからです。
実は複雑なのに一見簡単そうに見える、こういった文章をさりげなく出してくるところがやはり京大です。
試験当日は、無理に全部入れ込もうとすると、テンパってぐちゃぐちゃになってしまう危険性が高い。
普段の練習の段階から、無理に全部を入れ込もうとせず、減点覚悟でシンプルに処理する方法を工夫しておきましょう。
「コンピューターを使うときに限らず、読書や工作のように近くにあるものを見続けなければならないときは」
この従属節をいっぺんに書くのは大変なので、まずはその中心部分を確実に押さえます。
「近くにあるものを見続けなければならないときは」
この部分に注力します。
When we have to keep looking at something close,
これだと簡単に書けますね。
ここが書ければ最低限の合格ラインはクリアできるので、まずはこの部分を丁寧に書き、その中心線を絶対に崩さないよう意識しながら、ほかの部分を肉付けしていきます。
「コンピューターを使うときに限らず」を足しましょう。
「〜なときに限らず」ですから not only A but also B 「Aだけに限らずBも」が使えそうです。
not only when 〜 but also when 〜
こうすると、形式的に構文に当てはめるだけなので、書く方も書きやすいし、読む方も読みやすいでしょう。
Not only when we use a computer,
but also when we have to keep looking at something close,
試験本番では、これだけ書ければ十分です。
「読書や工作のように」の部分はスルーして次に進むのも得策かもしれません。
この段階でまずまず上手く書けているので、下手に入れ込んでバランスを崩すことだけは絶対に避けなければなりません。
「読書や工作のように」という日本語そのままのニュアンスを、英語そのままの表現で書こうとすると泥沼にハマってしまうので、「本」や「工作物」という単語だけでもどこかに入れよう、というスタンスで書くのもいいかもしれません。
Not only when we use a computer,
but also when we have to keep looking at something close,
この文は「近くにある物を見続ける例」として、コンピュータ・読書・工作を挙げているのですから、コンピュータのあとに、読書と工作をさりげなく入れておくのもよいでしょう。
Not only when we use a computer,
read a book,
and make a craft,
but also when we have to keep looking at something close,
この書き方だと「コンピュータに限らず」からはズレてしまいますが、減点覚悟で「これでよし」とするのもアリです。
Not only when we use a computer,
but also when we have to keep looking at something close like books and crafts
また、このように something close の具体例として like books and crafts を付け加えると、より日本語に即しているでしょうか。
本や工芸品のような近くにある物を見るとき…
「とってつけた言い方」すぎて、あまり上手ではありませんが、全く何も書かないよりいいでしょう。
あと「工作」ですが、craft はなかなか思い付きませんよね。
「工作はcraft だよ」と言われてみたら確かにそうなのですが。
本番ではスルーするのもアリですが、「読書」だけ書いて「工作」だけ書かないのも寂しいので、何とか捻り出しましょう。
それこそが京大英作文の面白さ・醍醐味ですから。
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顔を上げて、深呼吸して、問題文の言うように遠くを見つめて、少し考えを巡らせましょう。
「工作」と言っても色々あります。
「図画工作」とも言いますが、絵を描いたりすることも含めて「物を作ること」ですよね。
しかも、「近くにあるもの」なので、あまり大きな物を作るのではなく、「手作業」というか、比較的小さな物を作るイメージ。
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「作る」は make でいいとして、「小さな物」ですね。
a small thing だと抽象的すぎてよく分からないので、item や goods とするとイメージが増すでしょうか。
small items
small goods
「手工芸品」のことを handicraft / handiwork といいますが、「手作りの」といったイメージも入れられると、より詳しい説明になります。
make a small handmade item
make small handmade goods
このように「手作りの小さな品を作る」とすると、「工作」のイメージを表現できます。
Not only when we use a computer,
but also when we have to keep looking at something close like books and small handmade items
このように書くと、京大の採点官の先生方に対して、誠意をアピールできるでしょうか。
「工作」を全く書かなければ確実に減点されますが、こんな風に書くことによって、最小失点で切り抜けられるかもしれません。
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Not only when we use a computer, but also when we have to keep looking at something close like reading books and making small handmade items,
ここまで工夫すれば、おそらく大丈夫でしょう。
「reading books」が「読書」を表していますし、たとえ「make a craft」を知らなかったとしてとも、「工作」の意味を充分に補えているのではないでしょうか。
↑京大英作文は、自分の個性を前面に出す表現力が求められます。そのメンタルの持ちようをまとめました。必読です。
最後に、もう一つだけ解答例を紹介しておきます。
Whenever we have to keep looking at something close,
,not only when using computers,
but also when reading books or making crafts,
こんな風に書くのもアリです。
Whenever から始めて、その同格として when を2つ並べました。
ちょっとした工夫でかなり読みやすくなります。
こういう「ひと工夫」も京大英作文では重要です。
いずれにせよ「When we have to keep looking at something close,」が従属節の中心なので、この部分をしっかりと際立たせましょう。
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解答まとめ
読みやすく理解しやすい日本語ではあるけれど、いざ英語にしようとするとなかなか手が進まないという「いかにも京大的」な問題でした。
難しい単語や構文を使わないシンプルな書き方で解答をまとめると、以下のようになります。
近くにあるものを長い間見つめることは、目を疲れさせる原因となります。
When we look at something close for a long time, our eyes get tired.
およそ6メートル以内にあるものを見るときには、目の筋肉の緊張が高まるためです。
This is because we are overworking our own eyes when looking at objects within about 6 meters.
コンピューターを使うときに限らず、読書や工作のように近くにあるものを見続けなければならないときは、ときどき遠くにあるものを見て目を休ませるようにしましょう。
Not only when we use a computer, but also when we have to keep looking at something close like reading books and making crafts, we should rest our eyes from time to time by looking at something far away.
皆さんも、自由に書いて、色々試してください。
当塾では添削指導も行なっています。
数をこなすことで見えてくる道があります。
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