対象の周縁
意図なく適当につくられたものを丁寧に再現すると適当なものにはならない。グラフィティを意識してつくられた街のビルボードはグラフィティではないし、物理法則を適用したアルゴリズムで波や風をシミュレーションしても波や風ではない。
適当で雑多なものを再構成をすることで、こぼれ落ちるものは何か。逆に、再構成したときに上乗せされるものは何か。
初音ミクのコピーで「気まぐれに作った曲も作り込んだ曲もすべて等しく愛おしい」というものがあったが、人間は科学的に現象だけを認識することが難しく、対象の周縁も同時に汲み取っている。勝手に想像し、解釈を加えている。このおかげで、感情や感動が生まれるのかもしれない。
人の心を動かす作品は、作品に物質的なものを超えた何かが含まれている。自分の場合、感覚で描こうとするとうまく描けない。かといって手順を決めると物質的なものになる。なので、感覚で描き、そのなかから(偶発的にできた)よいものを再構成している。いまのところ、純粋なものを作品に閉じ込めるのに、これ以外の方法が思いていない。再構成せざるを得ないのだから、そのときに何かよいエッセンスが加えられないだろうか…