【教育】インターナショナルスクールのあれこれ④ 『人気校への入り方 - 幼少期編』
シンガポールの高層マンション。窓の外には、朝日に照らされたマリーナベイ・サンズが、まるでSF映画の宇宙船のように輝いている。
僕は、冷えたアイスコーヒーを飲みながら、このnoteを書いている。キーボードを叩く音だけが静かに響く部屋の中で、子どもたちがまだ小さかった頃、インターナショナルスクールの入学に奔走した時を思い返していた。
今回のこのnoteのトピックは、タイトルだけを見ると、幼少期からインターナショナルスクールに子どもを入学させようとしている、もしくは、すでに入学させているもののアカデミックキャリアの観点で更に上を目指している保護者の方は、興味を示すかもしれない。
僕も同じ状況であれば、おそらく開いて読んでみると思うので、その親心はわかるつもりだ。だからこそ、僕は期待を裏切らないように、最初に断っておきたいことがある。
それは "必ず入学させられる方法など存在しない" ということ、そしてもう一つ大事な入学できた場合に覚えておいてほしいことは「人気校だから素晴らしい環境とは限らない」ということだ。
それを前提に、僕の経験を綴ってみたいと思う。もしこの方法で、誰か一人でも希望の進路を進む機会を得ることができたなら、それは人生にとって幸せなひとときを経験できることになると思うので、第三者である僕もまた素直に嬉しい。
人にはそれぞれ異なる幸せに感じるツボがあると思うが、僕はそのツボを押すことができた人が世の中に少しでも増えれば、それは世界が平和になると信じている楽観主義者であるからだ。
さて、まず人気校の定義を僕なりにしてみたいと思う。定義というほどのことでもないが、僕はただの凡人で、僕が考えることはおそらく誰でも思いつくことであるものなので、ここはシンプルに以下の2点に絞りたいと思う。
人気校の定義:
1.インターネットで検索すると人気校のカテゴリで紹介されているインターナショナルスクール
2.毎年入学待ちリスト(Waiting list)が長く、願書を提出してもなかなか入学試験にたどり着けないインターナショナルスクール
つまり、人気と言われていて、実際に入学するのが難しいインターナショナルスクールというわけだ。
僕の子どもたちは、幸いにしてこの類のインターナショナルスクールに通うことができている。だからこそ、そこにたどり着くまでの経緯を僕はこうしてnoteに言語化できるのだ。
断っておくが、僕の子どもたちが幸運にもそういう環境に恵まれているのは、僕が頑張ったからではない、子どもたちが頑張ったからだ。あと、もう一つは運が良かった、ただそれだけの話だと思っている。
インターナショナルスクールへの入学は概ね以下のようなプロセスを踏むことになる。
インターナショナルスクールへの入学プロセス:
手順1)学校説明会に参加する、もしくはキャンパスツアーに参加する(オプショナル)
手順2)過去のスクールレポート(通知表)と願書を準備して応募する
手順3)入学試験を受ける
手順4)入学試験に合格後、オファーレターを受け取り、入学意思表示のためのサインをする
必ずやらなければならないのは手順2と手順3ではあるが、前回のnoteにも書いた通り、手順1からプロセスを踏んでおくことを、僕は強く推奨する。
手順2について、もう少し詳しく思いつくことを書いてみる。おそらく僕のこのnoteを読んでいる人にとっては、ここが一番重要な点になるかもしれない。
手順2に関して大切なことは「過去のスクールレポート」「願書の記載内容」「応募のタイミング」の3つについて、僕の考えをまとめてみる。
1. 過去のスクールレポート
おそらく人気校を受ける上では、これが最も大事な情報になるかもしれない。なぜなら、人気校には入学志願者はたくさん集まるので、その中でもできるだけ優秀な生徒である可能性が高い人を集めたいからである。人気企業がトップタレント、つまり過去のキャリアにおいて優秀な成績を収めてきた人を採用したいのと同じであるからだ。
今通っている学校や担任との関係にもよるとは思うが、人気校を受ける前に、スクールレポートを書く先生に、「◯◯を受けたいのですが、スクールレポートがとても大切だと聞いているので、記載方法は配慮いただけますと助かります」と、直接お願いをしてもいいだろう。もし、すでにスクールレポートを受け取っていて、その内容を応募前に確認できるのであれば、表現の変更依頼もお願いできるかもしれない。
スクールレポートの表現を工夫して書いてもらったとしても、それは成績自体を変更しているわけではない。仮に多少の成長エリアがあったとしても、書き方一つで印象は大きく変わるので、入念に準備しておいても損はないはずだ。
上記の文章がまさにその例で、「成長エリア」と表現した部分を「問題」と僕が表現した場合、それを読む側の印象は少しは変わるのではないだろうか。
就職活動や転職活動でいうResumeに相当するスクールレポートは、インターナショナルスクールの入学審査職員(Admission Officer)が、じっくり時間をかけて読み込むものではない。数秒で判断されるだけの読み物であるのであれば、たとえ同じことを意味していたとしても、少しでもポジティブな表現で印象に残る方がいいだろう。
いずれにせよ、生徒を失うことになる今通っている学校にとっても、人気校への生徒の排出という実績が残ることにはなるので、すべてがマイナスではない。きっと協力してくれるはずだ。
2. 願書の記載内容
願書は保護者が書くことになると思う。願書の項目には「親の目から見てどのような子どもなのか」、「どのようなことに興味を示しているのか」、「なぜそのインターナショナルスクールの生徒になりたいのか」、などを書く欄があるかもしれない。
ここは親の表現力が試される重要なポイントだ。プロのコンサルタントに依頼して一緒に考えてもらうのも一つの方法だし、僕のような経験済みの保護者に意見を求めてみるのもいいだろう。よほど自信がない限りは、調べるなり人に頼るなりして、少しでも工夫した内容で願書を準備しておくことを強く推奨する。その理由は、万が一うまくいかなかったときに、後悔するのは子どもではなく、その努力を怠った保護者であるあなた自身であるからだ。
僕のおすすめとしては、例えば子どもが興味を示すことは、学校で学ぶアカデミック科目とリンクさせておくことだ。ものすごくゲームが好きでゲームばかりやっている子どもだったとしても、「ゲーム」とは書くべきではないだろう。例えばマインクラフトであれば、「3Dコンピューティング環境を利用した建物の設計」と表現しても、それは嘘ではない。そのほか、スポーツや芸術(お絵かきを上品にした表現)など、子どもが興味を示すものは意外といくらでもある。
僕の子どもは低学年の頃から、よく「なんだこれミステリー」を見ていた。そして、そこで学んだことを自分で楽しそうに絵本にして、僕や妻にその内容を説明してくれた。彼は学校の勉強でも、そこで学んだストーリーを学校の作文で再利用していた。シンプルに表現をすればただの「テレビっ子」ではあるが、彼のこの興味について、What(何を)の観点だけでなくHow(どのように)の観点を含めて、子どもの興味ポイントを言語化してあげることで、意外と日常生活をアカデミックに表現できるのかもしれない。
3. 応募のタイミング
続いて応募のタイミングについて、僕の経験を書いてみる。
人気校は、言うまでもないが応募が殺到する。基本的に常時受け入れをしてくれる学校が多いと思うが、応募してから入学試験に進むまでの期間はタイミングに大きく依存するはずだ。
例えば、僕の子どもが通うインターナショナルスクールは、毎年9月1日に次年度(8月スタート)の募集を開始する。僕は本職がエンジニアなので、この仕組みをシステム面から考えて、応募のタイミングを工夫した。
学校にもよるのですべての学校が同じでないことは大前提として、僕の子どもが通う学校は、応募する前にその学校のWebサイトにログインするアカウントを作成し、そのアカウントを通じて応募をする仕組みになっている。
僕は、この仕組みを逆読みし、いくつかシステムのボトルネックになる部分を考慮して、それを回避する方法で誰よりも早く応募することにした。その理由は、応募順で願書を見てもらえると思ったからである。
僕がどのようにシステムのボトルネックを考えたのかと言うと、システムが一番混むのはオンラインショッピングで言えば注文が殺到するタイミングであるところからヒントを得た。限定◯個のような日本人心をくすぐるようなものは、残念ながら殺到し、多くの場合、注文にたどり着くことができないのが事実であるからだ。
人気校への応募も同じで、仮に9月1日午前0時に次年度の願書の応募が自動開始するようにタイマーがセットされていたとしても、そこからアカウントを作って、願書をアップロードしてなどをしていては、もしかしたら他の保護者のアカウントの作成プロセスと重複して、システムが思うように動かないかもしれない。他の保護者がすでにアカウントを作成済みであったとしても、ログインのタイミングが重なって正常にログインできないかもしれない。
だとすれば、8月30日や31日などの空いている時間に事前にアカウントを作っておいて、9月1日午前0時を迎える15分前からログインも済ませておけばいい。そこにITの専門知識は必要ないし、早く選考に進ませるためにできる努力を惜しまない理由もない、僕はそう思っている。
僕はエンジニアなので世の中にあるNTPサーバー(システム同士が正確な時間を取得するために使っているインターネット上に公開されている標準時間)とにらめっこをしながら、9月1日午前0時を迎えたことを今でも覚えている。さすがにそこまでしなくても素早く応募して選考に進むための順位を上げることはできるはずだ。
最後に、入学試験を受ける時の準備として、偶然だけどうまく機能した僕のラッキーパンチについても書いておく。
幼少期の入学試験は、国語(英語)や算数のような試験ではなく、ただ教室に集められて好きなように遊ばせるというものかもしれない。もちろん教室には採点をする教員が候補者となる子どもたちを見ているわけだが、正直にいえば、何を見ているのかよくわからないというのが僕の印象だ。
僕の子どもたちが今のインターナショナルスクールを受けたときも同様で、僕は親として何を準備しておけばいいのかアイデアはなかった。だからこそ、あえて何の仕込みもせず、自然体で臨むように子どもたちを促したのを今でも覚えている。
試験前日の夜、偶然ではあるが、子どもたちは寝る前までお絵描きを楽しんでいた。とはいえ、翌日は試験だったので、僕は子どもたちをいつも通りの時間に寝かせるようにした。子どもたちはお絵描き途中だったものを途中で切り上げなければならず、少し悶々としていたことだろう。
試験当日の朝、僕はいつもどおり子どもたちを起こし、準備をして、学校へ向かった。そして、案内係の人に連れられて、子どもたちと一緒に教室に向かった。
教室の中には、積み木のおもちゃ、本、お絵かき、工作など、幼少期の子どもが学校で授業中に使うものが並べられていた。保護者である僕達は教室の外で見守るしかなかったわけだが、僕の子どもは教室に入ると、真っ先にお絵かきのコーナーへ向かい、無心にお絵かきを始めた。そう、前日夜に途中だったお絵かきの続きがしたかったのだろう。
普段ならそれほど一つのことに集中して遊ぶということは少なかったと思うが、その日はまるでアーティストにでもなったのかのように教室内で集中して無邪気に絵を描き上げていた。そして残った時間で他のおもちゃなどを手に取り、いつものように遊んでいた。
結果は、合格だった。
そこで僕が思ったのは、幼少期のインターナショナルスクールの入学試験は、与えられた環境に興味を持ち、集中して遊ぶことができるのかを観察しているのかもしれない、そう思った。もちろん僕は採点基準を知らないので、今でもそれが理由だったのかどうかはわからないが、結果は結果だ。
一人目の子どもを人気のインターナショナルスクールにいれる方法で僕が思いついたことはこれくらいであるが、もう一つ思いついたことを書いておこうと思う。
それは、入学待ちリスト(Waiting list)のからくりだ。僕は内部の人間ではないので確証はないが、一つの考え方として、僕の経験を語るとするならば、おおよそ以下のような優先順位で入学試験の案内がされているのではないかと思っている。
結論から言うと、願書を提出した順番だけではない。少なくとも、僕はそう思っているし、そう感じることを何度も経験してきた。
人気のインターナショナルスクールの保護者になると気づくのだが、校内にはそのインターナショナルスクールで働く教員の子どもが非常に多い。
学校によっては、福利厚生で学費が免除になるところもあるし、そもそも人気校であれば教員であっても他の保護者と同じように、我が子に少しでもいい学習環境を提供したいと思うだろうから、そこに情報通の教員の子どもが集まるのは理解できる。
そして、どうやらこの「教員枠」というのが、何よりも優先されているのではないかと思う。
続いて、インターナショナルスクールの保護者になると、兄弟で同じ学校に通わせている保護者が多いことにも気づく。人気校にそんなに何名も入学させることができるのは、もしかしたらなにかテクニックがあるのではないか。そう思う方もいるかも知れないが、これは単純に「兄弟枠(Sibling)」で、僕の考えでは、これは「教員枠」の次に優先されているのではないか、そう思っている。
僕の考えでは、「教員枠」「兄弟枠」の後が、ようやく一般応募で願書を提出した順になっているのではないかと思っている。
仮に新規で1クラス増設するため23−25名くらい募集となった場合、最初の数名は、おそらく「教員枠」「兄弟枠」で抑えられてしまうため、実質残るのは20名程度となるのかもしれない。
その20名を国籍のバランスを考えながら配分するとなると、「日本人枠」として残る席は、せいぜい2−3席のみだろう。もしかしたら、その枠はすでに「教員枠」「兄弟枠」で消費されてしまっているかもしれない。
これこそが、蓋を開けてみないとわからないし、なぜ誰よりも早く応募したのに、入学試験の案内すらこないことがあるのかの裏側の理由なのかもしれない。
こんな経緯を経て、今も僕の子どもたちは楽しくいわゆる人気校といわれるインターナショナルスクールで勉学に励んでいる。保護者の僕としては、彼らの努力と実力と運には、感謝しかない。
今回は、インターナショナルスクールにまつわる話の中でも、最も興味をひくかもしれない「有名インターナショナルスクールへの入学方法」について、僕の経験とテクニックを書いてみた。僕はこの分野ではそれなりに経験してきたので、これまでの4つのトピックだけでなく、学校にかかる学費と学校以外で必要な費用、子供の英語力の伸ばし方、子どもの日本語力の維持など、意外とnoteにできるものが多い。
上の子が約10年インターナショナルスクールに通っているということは、僕もインターナショナルスクールの保護者を10年近くやっていることになる。どおりで白髪が増えてきたわけだ。
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