「静かに生きて考える」Thinking in Calm Life
『静かに生きて考える』森博嗣 著
この本を読みました。
著者の森博嗣さんは、以前私のnoteでもご紹介したミステリー小説「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」などの作者さんです。
多数のミステリー小説をはじめ、ビジネス書や専門書も出しています。
ご自身のことを「小説家」とは自称していなくて、あくまでも本職は元大学助教授であり工学博士。
現在は小説も書いていなくて、この本のようなエッセイなどの文章を細々と書きつつ、静かに生活しているみたいですね。
広大な土地(森)を購入して、一軒家で趣味を楽しんで暮らしているようです。
趣味というのは鉄道模型。
とは言ってもプラレールのような室内の小さな模型ではなく、敷地内に数百メートルにわたる線路を引き、実際に人や犬が乗って走ることができる鉄道模型を自作しているみたい。すごいですね。
実際に人や犬が乗って走っているYouTube動画も上がっていました。
https://www.kodomonokagaku.com/morihiroshi/
「庭園鉄道」というジャンルがあるらしく、その方面の著作も何冊か出されています。
毎日、ほぼ屋外工事や模型の工作をしつつ、ドライブも趣味で、たまに犬と一緒に車を走らせているような生活をしている、とのことです。
「静かに生きて考える」という本
さて、この本はエッセイ集のような形式で、ジャンルがバラバラなテーマについて、1つのテーマで1~2ページくらいの短い「散文」を集めたようなもの。
社会問題もあれば、文化や慣習のこと、作者の若い時代のこと、生き方、働き方、死生観など、多種多様な内容。
合間で、現在の日常生活について、今作っている工作のこと、飼っている犬の話などの話が挟まっています。
一貫性がない本。
これこそがタイトル通り「静かに生きて考える」をそのまま体現しているような感じです。
実を言うと、この本の内容(作者の見解)自体は、共感できることもあれば、作者特有の偏屈な考え方もあり、「ちょっと変わった人だな」というエピソードも少なくありません。
なので、本の紹介というわけではなく、注目すべきはそのライフスタイルそのものです。
大学研究者時代は貧乏な暮らしをしていた作者が、アルバイトのつもりで執筆した小説が大ヒット。
その後も異常なハイペースで出版する小説がどれもヒットして、大富豪と言えるほどの収入を手に入れます。
で、ある年齢になると、まだ体も健康で、遊ぶ意欲も残っているうちに、一線を退いて、森の中で静かに趣味に生きる、というライフスタイル。
誰もができるわけではないけど、ある種の「理想的な生き方」のひとつとして考えることができます。
もちろん、誰にとっても理想というわけではないと思います。
そんな隠居生活のような田舎暮らしはいやだ、という人もいるだろうし、一生現役で働いていたい、という人もいるでしょうね。
私自身も、森博嗣氏の生き方が「ベスト」かどうかは分かりません。
ただ、私自身がすでに早期退職した身なので、セカンドキャリアの1つのモデルケースとしては参考になる気はしています。
この本から分かることは、作者は「今の生活が気に入っていて、楽しんでいること」「いつ死んでもいいと思っていること」。
何よりも、これが一番大事なのだろうと思います。