「肉離れは安静が鉄則」の誤り⑶
肉離れと診断を受けると、多くの場合「安静にして下さい」と言われます。患者さんも『痛めたからには動かさない方がいい』と考えているので、基本的にここで会話は終わります。時々「運動はやめた方がいいですか」と質問される方もいますが、医師から「そうですね」と言われたら、それ以上食い下がるケースは稀です。
しかし、運動を禁止する必要はありません。怪我した部位を酷使しなければ、何をやっても構わないのです。
例えば、ふくらはぎの肉離れ。この場合、怪我した箇所さえ動かさなければ、何をやっても構いません。股関節から上は勿論、両側の太腿や、怪我していない側のふくらはぎ等は、どう動かしても問題はないのです。この様なAlternative Training(代替トレーニング)はウェイトトレーニングでは一般的で、部位別トレーニングを日常とするトレーニーには、すんなりと受け入れて頂けます。
問題は、中高生の運動競技者です。トップアスリートと呼ばれる一部の方を除き、一般的にこの年齢では自主的にジムに通ったり専属トレーナーを付けたトレーニングを行うことは稀で、学校に十分なトレーニング環境がない方が多いです。
学校の先生が故障選手のケアにまで目を向けることは難しいのに加え、ご両親も自身が何かスポーツに打ち込む背景がなければ、どんな運動を勧めて良いか分かりません。
その為、上記の様にAlternative Trainingの説明を行っても、専従競技への不参加指示は、まるで死刑判決の様に聞こえてしまうようで、表情を曇らせたまま診察室を出る中高生が多く見られます。
ここはもはや医学の力が及ばない場所である為、綿密なコミニュケーションを通じて繰り返し理解を促す他ありません。通院の手間はかかりますが、細かく来院頂き、トレーニング方法の説明や、本人・家族が望む復帰経過のヒアリングなどを行うことが重要と感じています。
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