「意味不明」だからこそ面白い黒死館殺人事件
※画像は黒死館とは関係ありませんのでご注意を。
ども。
PC3台・スマホ2台という何だがすごい状況になっている吉史です。
先月、ある本をようやく読破することができた。
その本は、日本三大奇書の1つに選ばれた「黒死館殺人事件」という本である。
この本、なぜ奇書と呼ばれるのか。
理由1.宗教学や歴史学、神話など様々な知識や異常なほど詰め込まれている
理由2.ルビが振られている分がやけに多く、読みにくい
一言でまとめるならば、「ペダンチックな気分に思う存分浸れる難読ミステリー小説」だろう。
(人生で初めて、ペダンチック(学者ぶる様)なんて言葉使ったわ・・・)
「黒死館殺人事件」は、異常なほどの情報量とルビの多さにより、難解かつよく分かんない本である。
それ故に、自分も一度挫折してしまった。
なぜ挫折したのかというのには、理由がある。
それは、いちいち膨大な情報を理解しようとしたためだ。
賛否両論あると思われるが、正直に言おう。
この本、毎回情報を理解してたら結構頭が疲れるぞ・・・
「意味不明」が快感へ
「いやいや、そんな適当に話を読んでもいいのか?」と思う方もいるはずだ。
しかし、安心してほしい。
難解とはいえ、ある程度話の流れは理解することができる。
しかし、主人公がトリックを暴いた理由といった詳しい内容を解読するのは難しい。
「でも、結局しっかりと理解できていないのに面白いの?」という疑問もあるかもしれない。
確かに最初は意味不明のため苦痛に思えてくる。
ただ、それでも頑張って読み進めると、苦痛が快楽へとつながっていく・・・。
何言っているのか分からないと思うかもしれないが、膨大な情報量に飲み込まれ続けて、脳が「もっとくれ!」と欲しがっているのだ。
いつまでも続く無数の文章、全く知らない分野のマニアックな知識・・・。
「黒死館殺人事件」は、なぜなのかはわからないが、「詳しくは分からないけど、なんか好き」という不思議な気持ちにさせてくれる。
このような気持ち、自分は別の作家でも感じたことがある。
フランツ・カフカの快楽
よく分からない本と言えば、すぐ浮かぶのがフランツ・カフカだ。
「変身」や「城」などの数々の名作を生み出しており、不条理文学の代表的人物と言われる(カミュの方が代表的人物と言われたら、まぁそうだけど・・・)。
そんなカフカの小説も、基本的には「よく分からない」ものが多い。
「皇帝の使者」のようにスムーズに話が進むものもあるが、「巣穴」や「掟の前で」などは、最初から最後まで読んでも「えっなにこれ・・・?」と思ってしまう。
恐らく、カフカの中では一番読みやすいかつ万人受けしやすいのが「変身」であって、それ以外は意味不明なものばかりだ。
しかし、それにも関わらずなぜか面白いのだ。
『城』は、難解な小説としても有名である。
事実、途中までは何が起こっているのかさっぱりわからなかった。
『城』を読み終わってしばらくたつと、「わからない」という感覚が恋しくなった。
これは、カフカの中毒性のようなものだろうか。
または、「小説を読む」ことの中毒だろうか。
(それおもしろいねより引用)
カフカも結局のところ、一体どういう意味なのかを考え出すと止まらなくなってしまう沼である。
そのようなことをしてしまうと、一向に読書が進まなくなってしまう。
「審判」においては、最初から最後まで謎の連続であり、考察すればするほど脳が非常に疲れてしまうほどだ。
だからこそ、ある程度は分からないままで進めなくてはならない。
しかし、それが次第に面白く、快感になっていく。
その快楽は、他の本では感じられないものだ。
そのような気分が、内容は大きく異なるとはいえ、「黒死館殺人事件」でも感じられた。
難読小説は永遠に忘れられない
「分からないけど面白い」という不思議な体験を感じつつ、ようやく今年2月に本を読み終えた。
最初は「えっ・・・なんだこれ・・・」と思った印象も、今では「絶対忘れられない本だった」と思っている。
膨大な情報に難解なトリック、黒死舘に住む降矢木家の闇など、どれもが魅力的に感じられるようになる一冊だ。
そして読んだ後は、なぜか「物足りない」感覚に陥る。
最初と最後で捉え方が変わってしまう点も、「黒死館殺人事件」の面白さだろう。
「分からないのに読むとか中二病かよwww」みたいな意見もあるかもしれない。
しかし、そんなこと言われたとしても、この「分からないけど面白い」という経験はたまらないものになってしまうのだ。
今回は作者やあらすじに関しては省いて、物語の個人的考察についてまとめた。
青空文庫のおかげで、無料で読むことができるため、気になる方は是非読んでもらいたい。
では、この辺で。閉幕(カーテン・フォール)。