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【完】P・F・ドラッカー氏の『イノベーションと企業家精神』を読んで考えたこと③

ピーター・F ・ドラッカー『ドラッカー名著集5 イノベーションと企業家精神』 ダイヤモンド社、2007。(原著1985年出版)

これを読んで考えたことの3つ目。

正確に言うと、もっといろいろと考えたことや、折に触れて読み直し、考えたいこともあるのだけれど、現時点ですべてをここに残すことはできないので、印象深かったことを残している。

その3つ目は、「第11章 イノベーションの原理」について。

この章を読んでみた全般的な感想として、「ヒントがところどころある」というレベルではなく、全体としてすごくしっくりする内容であったところが、noteに残しておきたくなった理由である。

この章は本書の「第1部 イノベーションの方法」の最後に位置付けられる章であり、イノベーションにおいて何をなすべきか/何をなさないべきか、そしてイノベーションを成功させるための条件が述べられている。

「全体としてすごくしっくりくる」けれども、それをどのように伝えたらいいか現時点では分からない。(なので、以下まとまりのない文章となる可能性が高い)

それでも、今思うところを、とにかく何か残しておこう。

◆印象に残った点について

どのように伝えたらいいか分からないので、とりあえず印象に残ったフレーズとそれについて自身の経験上もその通りだな、と腹落ちした点について以下に記載する。

・「イノベーションは分析と知覚からなる」
ドラッカー氏によると、イノベーションは分析と知覚から見出されるものとしている。

未来に向けて何かを計画的に進めていく上で、「分析すること」が重要であることは、決して真新しい主張ではない。

だが、ここでの「分析」というのは、今流行りのビッグデータを用いたデータ分析などを意味するのではなく、あくまでも「イノベーションの7つの機会」に即した分析である点は興味深い。

また、分析だけでなく「知覚すること」も同時に重要なコトであるとしているのは一考に値する。

それこそ、近年のトレンドとしては「ビッグデータを駆使したデータ分析で、これまで見えてこなかった顧客の特徴が…」といった手法に対して、ドラッカー氏は知覚すること、すなわち、実際に目で見たり、現場で直接話を聞いたりすることを通じて得られる知見を考慮する必要性を訴えている。

イノベーションは、既存のビジネスの枠組みの外にあるものであり、したがって、データ分析が必ずしも適合しない場合があると考えられる。

これまでの常識的なものの見方を脱するために、「一体全体顧客は何を感じ、何を求めているのか」はつまるところ、知覚するしかない。

・「イノベーションは単純でなければならない」 
これもまさにその通りである。そして、これに関係して本文では、

イノベーションに対する最高の賛辞は、「なぜ、自分には思いつかなかったか」である

と、ドラッカー氏はいう。

これは一般アマチュアゴルファーの上達のための方法論として、世の中にあるものがどんどん複雑化されているのに対して、自分自身のそれが至ってシンプルだという点でも納得のいく主張である。

おそらく、イノベーションの萌芽なるものを見つけた人にとっては、それがあまりに単純だし、あまりに当たり前すぎることで、「なぜ、何十年もこのことに誰も気付かなかったのか?」といたといった疑念に駆られたり、「それが実は自分の勘違いであり、誤りではないか?」といった不安に駆られることがあるのではないだろうか。

もしも、そう思っているのなら、その人は正しいのかもしれない。

・「イノベーションは小さくはじめなければならない」
イノベーションは、改良に改良を重ねて出来ていくものだと、イチゴルは考えている。いきなり大規模に展開したりできるような類のものではない。

なぜなら、顧客とのやり取りや彼らの行動を注意深く観察することで、徐々に商品やサービスの中身が練り上げられていくからである。

この点、いちごる自身も、最初から本業でゴルフレッスンを提供しようとしていたら、今のサービスレベルには到達できなかったと思う。

副業で小さくはじめ、試行錯誤し、一般アマチュアゴルファーの困りごとに寄り添ってきたからこそ、見えてきた世界がある。

・「未来のために行ってはならない」
これも世の中のイノベーションのイメージと、イチゴルのイメージの乖離を説明してくれる主張の一つ。

高度なテクノロジーを活用した、ムーンショット的なイノベーションは、概して「この先進技術が完成すれば、将来○○できるはず」という形のものが多く、それは未来の需要のためのイノベーションである。

しかしながら、その未来は果たして本当に来るか分からず、仮に想定していた技術が確立されたとしても、そこに需要があるかは分からない。

ドラッカー氏のこの戒めは、そのようなことを伝えようとしているのではないか。イノベーションは、あくまでも現にいる人々が求めるものであるはず。

それは、「見過ごされてきた価値」みたいなもので、その価値に気付いている人が既に一定規模存在していて、それがより多くの方に気付かれたときに、イノベーションが大きく花開くことになるのだと思う。

重要なのは、未来を予測することではない。今すでに存在する日の当たらない場所に光を与えるようなものだと思う。

・「経済や社会を変えるものでなければならない」
ありきたりなコトバのように思えて、実際にイノベーションを体現しようとするときに、その深遠さを痛感するというか、納得感が強くあるコトバ。

「イノベーションとは何か」という問いに対する答えは、人それぞれあるかもしれない。

「イノベーション」というコトバの持つ一般的な意味は、「何か真新しいもの」「テクノロジー」のようなものが含まれている気がするが、僕としては、すでにあるジャンル(例えばコーヒーショップ)を、新たな視点から見つめた時に見えてくる世界が、イノベーションに繋がっているのだと思う。

つまり、いちごるがこの問いに答えるなら、「今までのやり方・考え方から抜け出して、新しい文化なり、価値観を世の中に広めていくこと」だと思っている。

このような取り組みの具体例を言えば、スターバックスの元CEO、ハワード・シュルツ氏が成し遂げてきたことがその一つである。

彼は、コーヒーの本場であるイタリアでの自身の体験をもとに、本格的なエスプレッソコーヒーを、それが存在しないところ(アメリカには、シャバシャなアメリカンコーヒーが主流だった)に根付かせたといえ、アメリカのコーヒー文化を変えたのみならず、シアトルから全米に広がったそれは、よりグローバルに展開することで、スターバックスの文化・価値観を世界に広めていったのである。

イノベーションは、現にある困りごとを解決するものであったり、気付かれていなかった価値を見出すものであり、それがたとえ最初小さく始まったとしても、当初意図していた以上のインパクトをもたらすものだと思う。

人々の生活を豊かにするものであるからこそ、必然的に経済・社会に変革をもたらすものになるのだと思う。


◆要約と原典を読む違いについて~筆者の信念に触れよう~

最後に、この章を読んで、改めて痛感したこと。それは、要約されたものを読むのと、原典を読むのとの違いである。

上に書いた通り、この章自体を読んだときは「なんだかすごい!」と感じて、上に文字として残してみたものの、未だにしっくりする形で表現できていない。

これと関連して、世間一般の趨勢としてかねてより気になっていたことが、「要約サイト/まとめサイト」的なコンテンツにニーズがあるということである。

「(経済的に/ダイエットが/ゴルフが…etc)絶対成功するたった3つの方法!」

といったものが、書籍やSNSのコンテンツとして採用される場合が多いことは、皆様も感じ取っているコトかと思う。

だけど、本当に役に立つ情報はそんな手っ取り早いものとして存在はしていない、とつくづく思った。

情報は、それを伝えたいと思った人が、一生懸命に表現したその全体に直に触れてみることでしか得られない、と思う。本当は、face to faceの対話を通じて行うのが一番良いのだが、物理的にそれが出来ないことも多い。そのために書籍やインターネットを媒介した情報が代替的な方法になる。

ただ本人が伝えようとしていることを要約したものは、その情報の大切な部分がどこか抜け落ちてしまう。

その人がその人の表現で語るからこそ「言外の意味」のようなものも含めて、情報が意味を成すような気がする。

伝え手が表現しようとした信念は、原書からしか得ることが出来ない。

本当に有用な情報は、そのような信念ともいうべきものに触れてこそ手に入る可能性があるということを、ドラッカー氏の著作は教えてくれるようだった。

※ただし、要約的なことが必ずしも忌避されるべきものではなく、一度全体に触れているなら、ポイント(キーワード)となることを思い出し、そのポイント(キーワード)から、自分自身で伝え手の表現していた言外の意味まで含めて、想像できるようになればより一層よいのであって、そのために要約を利用するのなら効果的なものになると思われる。

なお、その意味では、今回紹介した「第11章 イノベーションの原理」は、以下のサイトにおいて、上手にまとめられているので、上述の活用法(要約から全体像を再構成)をされる方は参考にしてみてください。

中小企業診断士 大崎高宏さんWebサイト「イノベーションの原理」の要約☞https://takahiro-oosaki.com/innovation/innovation-principle/

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