【いちごる読書note】良書を再読して気付くこととは~『SHOE DOG』を読んで~
『SHOE DOG』
これはNIKEの創業者フィル・ナイト氏がNIKEの前身となるブルーリボン社(日本のスポーツシューズメーカー、オニツカ・タイガーの販売代理業を営んでいた)の創業から、社名をNIKEに変更し自社ブランドを製造・販売し、1980年に株式公開するまで、すなわち、今の一大企業の素地を作るまでを語ったものである。
僕自身この本をはじめて読んだのは2022年3月。その後いつかは再読しようと1年半が過ぎた。今回改めて読んでみたところ、最初に読んだときとは印象に残るところは案外変わるもので、そこに自分自身の興味の変遷なり、ある種の成長が反映されるのではないだろうか。
この点についてここで書き残しておこう。
1.良書を再読することによる発見~自己の興味・成長の形跡~
再読することによって、今回初めて目に留まった点は2つ。
一つ目は、本を開いた最初のページに『禅マインド ビギナーズマインド』という本の一節
が引用されていた点。これにはいきなり度肝を抜かれた。
まだそれを読んではいなかったが、ちょうどタイミング良く手元に図書館から借りたその本が家にあったからだ。全く違う経路で辿り着いた『禅マインド・・・』が実は過去に読んだこの『SHOE DOG』の冒頭の冒頭(見開いたところ)に引用されていたとは!
2つ目は、同様に本書のかなり前半部分(p.31)に、ナイト氏がドイツ人哲学者オイゲン・ヘリゲル氏の『弓と禅』を引用していたことだ。この本に至っては、ついその10日前に読み終えたばかりだった。
この2点に現れているように、『SHOE DOG』を読み進めてみると、確かに禅の精神に関連したナイト氏の思索が見え隠れする部分が散見される。1年半前に初めて本書を読んだときは、僕自身、「禅精神」的なことに興味がなく、それらの印象は全く残っていなかった。
一方で、副業ゴルフコーチを通じて、一般アマチュアゴルファーにゴルフを楽しんでもらい、そして上達してもらう上で、技術的な観点よりも精神的な観点が重要ではないか、という点に薄々気付きつつあったのもその時期であった。(実際に、ゴルフスキルの習得法をまとめたブログにおいて、『ココロの整え方』に言及したコンテンツを2022年8月に初めてリリースしている)
さらにその後読んだPatagoniaの創業者の自伝において、「経営の神髄は禅の精神と同じ」といった主張に触れたことなどから、徐々に、僕の中で禅の精神について関心が深まっていった。
『弓と禅』を読む直接的なきっかけになったのは、『コーチングのすべて』という本を偶然本屋で目にしたをきっかけに読んだ際に、その参考文献として挙げられていたからだ。
これらはかいつまんで言うと、以下のように言える。
「ゴルフを通じてより多くの人に豊かな人生を提供するにはどうしたらいいか」、という自分自身が立てた《問い》を突き詰めていく中で、過去の偉人達の残したメッセージを反芻することで、以前の自分では気付くことが出来なかったことを発見したのだ、と。
それは単に上辺だけの興味の移ろいなのではなく、より深く真理を探究できていると言えるのではないか、そして、これが成長の証なのではないか、と。
自らの立てた《問い》の答えを追い求め、道なき道を進むプロセスは、チャレンジングであるとともに孤独に感じることもあるのだけれど、だからこそ良書の再読により、以前の自分が気付けなかったことを発見できた時、偉大な先達に肩を叩かれ、こう言われる思いでいる。
「キミの進んでいる道は間違えていない。その信念を貫き通せ」
という風に。
2.ココロに残ったフレーズ集
◆家族や仲間の愛情
フィル・ナイト氏が最初に思いついた事業(日本のアスレチック・シューズメーカー、オニツカ・タイガーの靴を米国で売り歩く仕事)をしようと父親に相談したが受け入れられなかったときに、母親がとった行動。
同様に、事業拡大でどうしても現金が不足していた時に、苦肉の策として知人に借金を申し出るも断られて途方に暮れていた時、下半身に障害をかかえ車いす生活を余儀なくされているナイト氏の同僚ウッデルの母親が、息子の治療費などのために取っていた貯金を全て切り崩し、ナイト氏に手渡したときのやり取り。
なお、この時ウッデルの両親が貸した8,000ドルは、その約20年後の株式上場を経て、ウッデルに600万ドルの株となって戻ってくることになる。
◆情熱にかけた商社マンのコトバ
売上高が倍増しながら拡大するNIKEには、常に資金不足の問題が付きまとっていた。拡大する需要を見込み、仕入れを拡大するが、それが在庫となって、販売、債権回収するまでの間に、仕入れた商品代の返済が迫ってくるからだ。
この状況をキケンだと感じた銀行は、1975年に突如NIKEとの取引から手を引くことを決断し、NIKEは経営破綻の危機に瀕した。その危機を救ったのが、日本の総合商社・双日の前身となる日商岩井であった。その時の責任者タダユキ・イトーとのやり取り。
リスクを嫌い、目の前に存在する数字だけで物事を判断するのではなく、事業の本質と経営者の情熱を評価した、イトー氏のクールな発言。
◆ビジネスとは
血の通わない無味乾燥なコトバとしてのビジネスなら、ナイト氏のやってきたこととは違う。
だが、ビジネスが以下の通りなら、彼は自分をビジネスマンだという。
◆彼が伝えたいこと
この本では、彼自身のダメなところ、非常識なところもさらけ出しているように思う。それは彼がひとえに、その人生の「浮き沈み」を後輩たちに知ってもらいたいからなのだろう。
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