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残業をなくす

あなたは、1年で何時間働いているか考えたことがありますか?

もし、2000時間を超えているようなら、残業や休日出勤などの働き方を見直す必要があります。

残業が常態化すると、時間に余裕がなくなって思考力が低下したり、睡眠の質が下がってしまいます。

将来のために、副業など新しいことを始めたり、睡眠や運動など健康に気を使ったりすることも難しくなります。

しかし、日本の場合、人口減少や雇用形態など社会的構造から残業が少なくなっていくということは考えにくいため、会社に依存せず自分の意思で残業を減らしていかなければなりません。

この記事では、残業が多くて自分がやりたかったことに時間を使えないという人が、残業を減らして人生の満足度を上げるために必要な考え方やアクションプランをお伝えします。

残業が減らない日本の現状

働き方改革が進んで、日本人の労働環境は改善されているように感じますが、「日本の正社員は働き過ぎている」という実態は大きく変わっていません。

なぜ、法律が整備されても残業が減らないのかというと、そこには日本の人口減少雇用形態などの社会的構造が関係していると言われています。

つまり、この社会的構造が大きく変わらない限り、働き方改革が進んだとしても、過労死ラインで働く一部の人の就業環境は改善されるかも知れませんが、社会全体として残業がなくなることは考えにくいと言えます。

働き過ぎる日本の正社員

経済協力開発機構(OECD)が2021年に調査した結果によると、日本の平均総労働時間は1607時間と44カ国中27位と世界平均の1716時間より約100時間も少ないとされています。

しかし、実態としては、日本は労働者に占めるパートタイム労働者などの非正規雇用者の割合が多いため、正社員の総労働時間で見ると、世界平均よりも労働時間が長いことが分かっています。

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、令和4年のパートタイム労働者を除く一般労働者(正社員)の総労働時間は1948時間で、一番多い年であった平成8年の2050時間から比較すると、約5%ほど少なくなっていますが、ほぼ横ばいの状態です。

また、日本には「ブラック企業」という社風がまだあるように、サービス残業が常態化していて、事態としては統計資料よりも長く働いているということが懸念されています。

引用:厚生労働省 人口構造、労働時間等について

2015年に電通の新入社員が長時間労働により自殺したことを契機に働き方改革が進められ、「時間外労働の上限規制」や「勤務間インターバル制度」の導入など法律で厳しく規制されるようになりました。

しかし、「2024年問題」と言われるような「物流業界」「建築業界
「医療業界」など、社会インフラを支える産業が立ち行かなくなるという懸念もあるため、課題は山積しています。

残業が常態化する日本の社会的構造

日本の残業が常態化する要因としては、主に2つの社会的構造が関係していると言われています。

一つは、人口減少です。
少子高齢化と高齢化が同時に進む日本では、出生児数が死亡者数を下回る状態「自然減」の状態が続き、2007年以降日本の人口は減り続けています。

これにより、生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までが占める人口の比率も減り続けているため、現役世代に大きなシワ寄せがきています。

もう一つの要因は、日本の雇用形態にあります。
日本は、長く「年功序列」「終身雇用」を担保とした「メンバーシップ型」の人事システムを多くの企業が採用しているため、ITや法務など専門性の高い仕事であっても、外部から人員を調達するのではなく、内部で育成しようという傾向が強くあります。

当然、素人がプロの世界で通用するためには、膨大な時間を投下しなければならないため、長時間労働やハラスメントが蔓延しやすい環境が生まれてしまいます。

公務員のITリテラシーが低いのも、彼らの能力が低いのではなく、中途採用という制度がないため、専門性を持った職員を外部から調達しにくく、自前で育成しなければならないという制度上の問題があると言えるでしょう。

残業が及ぼす悪影響

最初に断っておきますが、僕は、残業することが全て悪いとは思っていません。

若い頃は知識も経験もないので、定時に帰っていたらいつまで経っても先輩達に追いつけなかったり、やりたい仕事もできません。

人よりも成果を出すためには、圧倒的な時間の投下が必要です。
その時間の投下方法が、セミナーなどの自己啓発なのか、飲み会などによる人脈づくりなのか、それとも残業なのかという違いであると認識しています。

なので、自分を成長させるための「残業」は必ずしも悪いとは思っていません。

しかし、40歳を過ぎた人の多くが費やしている残業は、「自己成長」よりも「作業」の意識が強いため、マイナスの影響の方が強く出てしまっています。

残業が及ぼす影響としては、睡眠の質の低下、思考力の低下、生産性の低下などがあります。

こうした影響を天秤にかけた上で、残業する価値があるかどうかを冷静に考えなければなりません。

残業は睡眠の質を下げる

2021年に経済協力開発機構(OECD)が調査した結果によると、日本の平均睡眠時間は7時間22分と調査した33カ国の中で最も短く、平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男性が37・5%、女性は40・6%となっています。

日本の正社員の総労働時間が世界平均と比較して、年間約230時間も多いことを考えると、残業時間の長さが睡眠時間に影響していることは間違いないでしょう。

睡眠の質を高めるためには、単純に睡眠時間を確保するだけでなく、睡眠の2時間前に食事を済ませておいたり、睡眠の1時間半前に15分ほどお風呂のお湯に浸かることが効果的であるとされているので、帰宅してから就寝まで2時間くらいゆっくりできる時間も必要です。

つまり、7時間半の睡眠時間を確保するためには、最低でも起床時間の9時間半前から10時間前には帰宅してしないといけません。

通勤時間が往復で2時間かかる人は、1日2時間以上残業したら、睡眠時間に影響が出ていると考えられます。

睡眠時間を十分に確保できていない人は、残業時間を削るか、通勤時間を短くするといった根本的な対策が必要になります。

時間がなくなると思考力が下がる

「毎日時間がない」と感じる人は、思考力(IQ)が低下すると言われています。

上記のように、毎日通勤で2時間かかり、1日2時間残業している人であれば、自分のために使える時間はほとんどなくなります。

時間の余裕がなくなってくると、人はIQが低下し、目の前のやらなきゃいけないことばかりに目がいってしまい、「もっと仕事を効率化して早く終わらせよう」とか「残業を減らして自分のために時間を使おう」など前向きに物事を考えられなくなってしまいます。

その結果、残業時間は減らず、副業など新しいことを始めたり、睡眠や運動など健康に気を使ったりすることも難しくなります。

自分の時間を作ろうとして睡眠時間を削ると、記憶力や判断力が低下し、メンタル不調を起こす原因にもなるので、状況はさらに悪くなります。

残業を減らして、たとえ1時間でも自分が主体的に使える時間を確保できるようになれば、人生をコントロールしている感覚(自己決定権)を持てるようになり、人生の満足度は向上します。

残業は生産性を低下させる愚策

一昔前まで「残業が多い人=仕事ができる人」という印象がありましたが、最近では若い世代を中心に「残業が多い人=仕事の管理ができない人(組織)」という印象を持っている人が増えています。

これは、昔の僕にも言えることですが、日中は電話が鳴ったり会議に出たりするため、自分の仕事がなくなるので、就業時間後に時間をかけてやろうとして、終電で帰ること何度かありました。
結果的に、1時間で終わらせれるような仕事でも2時間、3時間と時間がかかり、時給で計算すると、半分以下の生産性しか出せていませんでした。

本来なら、ささっと帰ってしっかり寝て、翌朝早く出勤して仕事を済ませたり、隙間時間に集中して仕事に取り組めば、短い時間でもクオリティの高い仕事ができたのに、残業という楽な方に逃げることで、無意識に自分の時間単価を下げることをやっていたのです。

時間拘束される「物流業界」「建築業界「医療業界」などの業種は別として、ホワイトカラーと呼ばれるような会社員や公務員など業種では、本人がどれだけ意識するかによって、残業時間を減らすことはできますし、管理職であれば部下の生産性が上がるように導いてあげる必要があります。

残業を減らせるのは自分しかいない

前述したように、日本は人口減少とメンバーシップ型の雇用形態により人手不足が深刻な社会問題となり、正社員の就労時間が減るという将来は、当分訪れることはないと考えられます。

生成AIなどテクノロジーの進化により、人がやらなければならない単純作業が機械に置き換わっていくなかで、AIを導入している企業では人件費を削減して生産性を上げることができるでしょうが、ほとんどの企業や役所で問題とされている人手不足が改善されることは難しいでしょう。

では、残業から解放される日は来ないかというと、必ずしもそうではないと僕は考えます。

会社や組織が変わらなくても、残業を減らすためにあなた自身ができることはどこかにあるはずです。

そのため、ここからは残業を減らすためのアクションプランとして「退社時間を決める」ということと、「仕事を任せる」ということについてご紹介します。

退社時間を決める

まず実践していただきたいのは、「退社時間を決める」ことです。

先ほどの僕の経験でも言えることですが、人は締め切りまでの時間が長いとダラダラと時間を過ごしてしまいます。

これは『仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて使い切るまで膨張する』という「パーキンソンの法則」が作用しているためです。

夏休みの宿題が終わらないのも、プレゼン資料の仕上がりに必要以上にこだわるのも、「まだ時間がある」と脳が認識してしまっているからなのです。

逆に言えば、締め切りが短いほど、人は時間内に仕事を終わらせように自然と集中力を発揮するものなのです。

僕が所属する部署には育児のため時短勤務をしている職員が2人います。

どちらの職員にも時短勤務をしていない職員と同じ量の仕事が与えれれていますが、仕事はきっちりとこなして、残業は一切なしで15時半になったらスパッと帰宅していきます。

これは、彼女たちの能力が特別高いということではなく、(お迎えに行くなど)絶対に残業ができない理由があるからこそ、時間内に仕事が終わるようにセルフマネジメントして、集中力を発揮しているからだと感じています。

つまり、僕たちがやっている残業もほとんどは勤務時間内に終わらせようと思えば終わらせることができるのに、締め切り(残業を含めた退社時間)が先なので、集中力が発揮されずダラダラと過ごしてしまっているという訳です。

そうなれば、対策は一つ、「締め切り(退社時間)を決める」ことです。

ただし、「退社時間を決める」というのは自分の意思だけで継続できるものでもありません、継続できる仕組みをつくることが何よりも肝心です。

会社の照明やエアコンが切れると言う物理的な制限があれば最良ですが、多くの場合、自分に決定権がなく実効性は乏しいと思います。

それならば、セミナーや習い事に通うこと、子どもをお風呂に入れることや習い事の送迎を自分の役割にするなど、定時に退社しなければならない理由を自分で作ることが効果的です。

こうして、退社時間を設けることができれば、1日の中で自己決定権のある時間の使い方ができるようになり、人生の満足度も向上していきます。

仕事を任せる

40歳を過ぎている方の中には、すでに管理職を任されている人もいらっしゃると思います。

そうした管理職の方の中には、人手不足により係員としての仕事もこなしながら、部下のマネージメントも行う「プレイングマネージャー」というと立場で働いている方も多いのではないでしょうか。
僕もそのうちの一人です。

そして、近年問題となっているのが、「管理職の罰ゲーム化」です。

管理職になると、係員(プレーヤー)としての仕事を引き継ぎながら管理職(マネージャー)としての業務がのしかかるため、身体的負担が大きくなっています。
また、部下の悩み相談や仕事の責任が重くなるなどの精神的負担が重くなるのに対して、それ相応の給料が支払われないということで、管理職のなり手が不足しています。

管理職をされている方は、勤務成績が優良と認められ、組織からも今後を期待されているというプレッシャーがあるため、一人で仕事を抱え込んでしまい、残業が増えたりメンタル不調を発症してしまう方も少なくありません。

そうした方にぜひ実践していただきたいのが「仕事を任せる」ということです。

管理職をされている方は、責任感があり真面目な人が多く、係員時代にバリバリ仕事をこなしているので仕事の要領がいい人が多いです。

与えられた仕事を全て完璧にこなそうと考えたり、部下の仕事のクオリティの低さに我慢ができず、仕事を取り上げて自分でやってしまうということがよくあります。

しかし、それではいつまで経っても負担が楽にはならないし、残業も減りません。

大切なのことは、自分も相手もラクになる「正しい"丸投げ”」です。

このことは、山本 渉さん著『任せるコツ』でも紹介されていますが、「正しい丸投げ」は、個人の成長を促し、組織全体の幸せにも繋がります。

この本の中でポイントを抽出すると次のようなものがあります。
この中の一つでも実践してもらえれば、あなたの仕事の負担は少しずつ軽くなっていきます。

「感謝する」「褒める」「特別感を出す」
仕事を受ける側は「すべての仕事を面倒」と思っているという前提からスタートして、"やってみよう”と思ってもらう意欲を、依頼する側がつくり出しましょう。

リソースの提示とフォローの準備
仕事を任せる前に、時間や予算をどれだけ使っていいか、誰を頼っていいか、仕事を進めるための資料はどこにあるかなどのリソースを合わせて提示しておくことが重要で、困ったときに相談できるようフォローできる準備があることを伝えておきます。

最後まで相手を"信頼する”
信頼して仕事を任された相手は、なんとかその信頼に応えようとします。しかし、途中で自分のやり方を押し付けたり、仕事を取り上げたりすれば、やる気や成長機会が失われてしまいます。
一度仕事を任せると決めたら、相手を信頼して最後まで「任せ切る」という覚悟を決めましょう。

このほかにも、効果的に仕事を任せる方法がいくつも紹介されているので、気になる方はぜひ本書を手に取ってみてください。

まとめ

日本は世界平均と比較しても正社員の労働時間が長く、働き方改革が進んだとしても、人口減少やメンバーシップ型の雇用形態により残業が減るという将来が訪れる可能性が少ないと考えられます。

残業が多くなると、睡眠の質の低下、思考力の低下、生産性の低下などの影響があるため、こうした影響を天秤にかけた上で、残業する価値があるかどうかを冷静に考えなければなりません。

残業を減らすことは会社に依存せず、個人で対策を行うことが重要であり、そのためには「退社時間を決める」「仕事を任せる」などの意識を変えていく必要があります。

それでも残業がなくならない人に、僕が伝えたいことは「"忙しい”を逃げの口実にしないこと」です。

「新しいことを始めたくても、続ける自信がない人」
「家族との時間を作りたくても、家庭での居心地が悪い人」
「老後のために投資を始めようと思っても、面倒で手をつけれていない人」

こうした「やらないといけないこと」に対して、やれていない自分を「忙しい」という理由で正当化していないでしょうか。

こうした人は、残念ながらどんなに仕事を効率化しても、残業がなくなることはありません。
なぜなら、優先順位が間違っているからです。

もし、あなたの奥さんやお子さんが交通事故に遭って瀕死の状態になったら、仕事などせず病院に駆けつけますよね。

もし、医者にこのままでは1年以内に病気で死にますと言われたら、睡眠、食事、運動などに気をつけた生活を送ろうとしますよね。

大切なことは、「仕事を人生の最優先に考えないこと」です。

そう考えれば、残業を減らすことはそれほど難しいことではありません。

いきなり残業を0にすることは難しくても、少しずつ残業を減らしていくことで、自由になる時間は確実に手に入ります。

焦らずに取り組んでいきましょう。

次回は、「人生の目的を見つける“サバティカルタイム”」についてお伝えします。

僕のシリーズ記事『LIFE SHIFT 40歳からの人生戦略』では、人生後半を戦略的にデザインしていくために必要な「考え方やアクションプラン」について、30本ほどの記事で構成しています。

週1〜2本くらいのペースで記事を追加していくので、「記事が面白い」「次も読んでみたい」と思っていただいた方は、ぜひフォローをお願いします。

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