キリマンジャロ登頂記
2024/08/19
無事、アフリカ最高峰・キリマンジャロ(ウフルピーク 5,895m)に登頂しました!
結論から言うと、思ったよりずっとキツかった。
これまで、5000m峰2座(イラン・ダマバンド5,610m、トルコ・アララト5,137m)にそれほど苦労なく登ってきたので、楽勝だろうとタカを括っていた。
自分は高度に強い体質だと思っていた。実際、今回のツアーで標高約4000mのキャンプに3泊したけどSpO2値はいずれの日も90以上だったし、4700mのキャンプでも86だった。
しかし、やはり6000m近い高度は侮れないのだ。
今回の6泊7日のマチャメルートのツアーでは、Day6がsummit dayに当たる。この日は、標高4700mのBarafu campを夜中の12時に出発し、6時間かけて1200mの高度差を一気に登って登頂、3時間かけてBarafu campに戻って、さらに3時間かけて3090mのMweka campまで降りるから、結構ハードである。
Barafu campを出発した直後は身体も軽く、これなら楽勝で登頂できそう…と思っていた。
だが、出発してから2時間ほど経ち、標高5200メートルを超えたあたりから、猛烈な眠気に襲われ始めた。歩きながらしばしば意識が飛びそうになる。ほとんど寝ていないためだろうと思ったけど、実はそれが高度障害の始まりだったのだ。少しでも気を許すと呼吸が浅くなり、ふらついて倒れそうになるが、身体はなんとか動くので、休憩も取らずに容赦なく登っていくガイドに必死に食らいついていく。
フルマラソンよりキツくない、フルマラソンよりキツくない…、と呪文のように唱えながら喘ぎつつ登っていくと、いつしか5,756mのステラポイントに到着。キリマンジャロはなにしろ山がデカいので、5000mを超えてからが長いのだ。ステラポイントから最高点のウフルピークまで、クレーターの縁をさらに40分ほど歩かなければならない。
脳に霧がかかったみたいになり、夢か現実か判然としないような世界を、時に立ち止まって肩で息をしながら、思うように動かない身体を引きずって一歩一歩進んでいく。
ご来光とほぼ同時に、最高点であるウフルピークの看板が目に入った。その時、なぜか涙が溢れてきた。今までこんなことはなかったのに。
しかし、せっかく登頂したのに現実感がなく、うまく言葉を発することもできない。
山頂には10分ほど滞在して、すぐに下山。
下山時には右目と左目の焦点が合わなくなり、足元の岩場が二重に見えるという状況に陥った。どうも自分は疲れすぎているのではないか…と思ったのだが、5000mを下回るあたりまで降りてきたら、嘘のようにその症状が消えた。そして、身体は軽くなり、脳はクリアになり、世界は現実感を取り戻し、全て元通りになった。すべては高度のせいだったのだ。
マチャメルートはDay2からDay4にかけて標高4000〜4700mあたりを行ったり来たりするので、自動的に高度順応ができることになっている。だが、5000m以上の世界はsummit dayしか到達しないので、高度障害が出るのは当然かもしれない。頭痛とか吐き気とかの分かりやすい症状でなかったのは幸いだったが、高所で自分にどうなるのかがわかったのは収穫だった。
さて、次はどこに行こう?
キリマンジャロをクリアしたら次は6000m峰だ!と言いたいところだけど、ここからアメリカ大陸最高峰のアコンカグア(6,961m)に挑むまでには相当のギャップがある。
そもそも6000mを超える高度は、地球上にヒマラヤ周辺とアンデス、そしてデナリにしか存在しない。4000〜5000m級でも世界に面白い山はたくさんあるから、そんなに高みを追求しなくても良いのかもしれない。