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「仲の町3バカトリオどたばだ奮闘記」 第1章出会い、そして入園  6


第1章出会い、そして入園  6
 
「せんせい、さようなら。皆さん、さようなら。」終わりの挨拶をすまし、僕とかずちゃんとさとる君は、3人の母親といっしょに家路につく。「なあ、今日も僕んちで遊ぶかん」僕は、かずちゃんとさとる君に呼びかけた。僕たちは幼稚園が終わってからほとんど毎日、僕んちか、かずちゃんちで遊んでいた。さとる君とこは、酒屋なので忙しいので、遠慮していた。「うん、遊ぼ。」「後から行くわ」とさとる君とかずちゃん。まもなく2人の悪ガキがやってきた。僕たちは落書き帳に、ロボットを書いたり、当時出ていた幼稚園という雑誌を読んだり、飽きてきたらまだ補助輪のついた自転車でユミネという駄菓子屋に行ったりした。5時のキンコーンカーンコーンがなるまでである。「なあ、腹へらへんか、たこ焼きくいたないか」僕が2人に聞いた。「ええねえ」食い物の話しは直ぐきまる。「おかあちゃん、たこ焼き買うから10円ちょうだい」まもなくたこ焼き売りのおばちゃんが来る時間だ。「はい、落としたらあかんで」僕たちの小遣いは1日10円だった。当時屋台で町内を廻るたこ焼き売りのおばちゃんがおり、僕たちはよく買っていた。使い込んだ木で出来た屋台。大きな車輪がついていて屋台の中にはたこ焼き用の鉄板、プロパンガス、水で溶いたメリケン粉(今メリケン粉っていうものおるんかな。要するに小麦粉のことね)の入ったバケツと手しゃく、きれいな水道水の入ったバケツ、鉄板の横には大きなカンカンに入った秘伝(ほんまかいな)のソースにはけ、青のりが入ったカンカン、鰹節の入ったカンカン、紅ショウガの入ったカンカン、つまようじの入ったカンカン、タコのぶつ切りの入ったタッパー、船型の竹の皮でできた入れ物、そして必殺仕事人が持っている千枚通し(たこ焼きくるくる棒)を置いていた。そして屋台のバケツの横には古新聞をある大きさに切った包み紙を置いていた。薄汚れた屋台にののれんには、たこ焼きと手書きで書かれていた。おばちゃんは、子供が小遣いでも買えるように、3個10円の物と大人用15個50円で売っていた。「たこ焼き~,たこ焼きいらんかいのし~、チリン、チリン」僕らは紅葉のようなかわいい手に10円握りしめて「うってー、おばちゃんうってー、たこ焼きうってー」と駆け寄る。「タケちゃんらいつもおおきによ。ちょっとまってなー。」おばちゃんには、僕らはもう常連さんだ。「おばちゃん、はよしてよー。腹減っておなかとせなかの皮くっつくわー」
「ほんまかいなー。おかあちゃんにくっついたのはがしてもらわなあかんがなぁ。がっはははは。」と言いながらカリカリに焼けたたこ焼きを船型の入れ物に乗せる。はじめに入れ物に、はけでソースを塗りその上にたこ焼き3コ、ソースをたっぷり塗り青のりをふりかけ、鰹節をかける。つまようじを1本立てる。
「はい、おおきによー。10円ね、こけたらあかんでー」「だいじょうぶやよー、おばちゃんおおきにー。あー。」僕は見事にこけてたこ焼きは、ばらばら。僕らには3秒ルールがあり落としたものは3秒以内なら大丈夫だが、なかなか立ち上がれない。僕が困って今にも泣きそうな顔をしているので「いわんこっちゃない、あほやね~。ほれ」と新しいたこ焼きをくれた。「おばちゃん、ほんまおおきにー。おおきによー」「あいよー」そう言っておばちゃんはまた屋台を引いて行ってしまった。僕たちは僕の部屋で、はふはふ言いながらたこ焼きをほおばるのである。追伸 おばちゃんの屋台は、夏になるとわらび餅も売っていました。10円で子供用買えました。   つづく。

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吉村 剛
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