深刻な欧州のエネルギー危機
1)米国シェールガスが救済に向かう
欧州では冬の電力供給不足に直面し、主要供給国であるロシアからの救済がほとんどない中、北西ヨーロッパの天然ガスは100万英国熱量単位(MMBTU)あたり約57.54ドルで取引されており、1週間前よりほぼ3分の1増加している。これは、アジア価格より約24ドル高く、米国のベンチマークであるヘンリーハブで販売されているガスの14倍以上となっている。
現在、輸送中の米国産LNG貨物76隻のうち10隻が欧州に仕向けられるといわれ、160万立方メートルの暖房・発電所用燃料用に供給されるようだ。さらに20隻のタンカーが推定330万立方メートルを積んで大西洋を横断し、欧州大陸へ向かっている。
2)エネルギー危機の中で、ドイツが原子力発電所を閉鎖
https://www.dw.com/en/germany-closes-half-its-remaining-nuclear-power-plants/a-60302362
欧州のエネルギー危機にもかかわらず、ドイツは3基の原子力発電所を閉鎖した。ヨーロッパが過去最悪のエネルギー危機に直面する中、ドイツは12月31日、Brokdorf, Grohnde and Gundremmingenの3つの原子力発電所を停止させた。
廃炉作業には20年かかり、1基あたり11億ユーロの費用がかかるといわれている。ニーダーザクセン州のEmsland、バイエルン州のIsar 、バーデン=ヴュルテンベルク州のNeckarwestheimの残り3基の原子力発電所は、2022年末に停止する予定である。
最近の調査では、ドイツ人の半数が、最近のエネルギー価格の上昇を理由に、原発停止を撤回することに賛成と答えているそうだ。フランスを含む他の欧州諸国は、原子力、特に小型モジュール炉の推進を続けている。
3)欧州のエネルギー危機の深刻さ
12月下旬、ポーランドとスカンジナビアを除くヨーロッパ全域で電力価格が300ユーロ/MWhを超えた。この衝撃的な価格は、フランスとドイツの論争もあって、欧州委員会が待望のグリーン税制リスト(Green Taxonomy List)の発表を延期したことに起因している。
EUの分類システム(Taxonmoy System)は、どの投資が環境的に持続可能かを判断し、「グリーンウォッシュ」の防止に役立てるために作られたものであるが、特に、天然ガス(ドイツが支持)と原子力(フランスが支持)を「グリーン」投資に含めるかどうかが争点となっている。
欧州委員会は、ガスと原子力をEUの「環境的に持続可能な経済活動の分類法」に含めることを認める規則案をようやく発表したが、反発にさらされている。
ドイツの経済・気候変動対策担当大臣は、この計画は「持続可能性のための良いラベルに水を差すものだ」と述べ、「このグリーンウォッシュが金融市場で受け入れられるかどうかさえ疑問視している」と述べている。
また、オーストリア政府は、この計画が進めば委員会を訴えるという脅しを繰り返している。フランスの欧州問題担当大臣は、この提案は技術的なレベルでは優れており、EUは原子力発電なしに2050年までにカーボンニュートラルの目標を達成することはできない、と述べた。