アンモニア発電、日本が技術支援 インドネシアと覚書
「政府はインドネシアの脱炭素への取り組みを支援する。燃焼しても二酸化炭素(CO2)が出ないアンモニアを使い、現地の石炭火力発電に活用する官民共同の事業に乗り出す。燃料としてのアンモニア普及と技術の確立をめざしながら、石炭火力をすぐにはやめることができないアジアでCO2排出量の削減につなげる。
萩生田光一経済産業相が9日から14日にかけて、インドネシアとタイ、シンガポールを訪問。インドネシアとは10日、脱炭素ヘの段階的な移行に日本政府として協力するための覚書を交わす。同国は2060年までの温暖化ガス排出量の実質ゼロを掲げる。
具体的な事業のひとつを三菱重工業が担う。インドネシアのスララヤ石炭火力発電所で、石炭にアンモニアを混ぜてCO2排出量を減らす「混焼」の導入に向けて、4月から調査に入る。実用段階になれば数千万ドルの事業規模になる見通しで、日本は官民で資金支援をする。
インドネシアでは、電力の約60%を石炭火力で賄っています。自国で豊富に賦存する資源を活用して経済成長に資するという発想はごく当然ですね。 こういう国は、世界を見回しても多いのですが、老朽化した発電設備を使っているところも多いようです。
そのためSOx、NOx、PMなどを排出しており、健康上の問題を引き起こしているという現実が残っています。
そういう国と我が国が連携し、我が国の先進的な発電技術を普及させていくことができれば、各国の経済成長を助けていくことができ、また、SOx、NOx、PMなどによる健康上の問題も解決することができます。
そうせずに、一足飛びにCO2を排出しないといわれる再エネによる発電に飛びついてしまえば、高コストであるために、電気代が高くなり、産業振興につながらない、一般の暮らしも苦しくなるという悪循環に陥ります。寧ろ、現状を直視しつつ、徐々に移行していく姿が正しい、現実的なアプローチでしょう。
IHIなどは中部電力などと協力して、石炭火力のアンモニア混焼技術の試験を実施して来ました。2025年3月期に20%まで高める実証実験に取り組むということです。
IHIは、アンモニア技術にもコストやインフラ面での様々な課題が残っていますが、アンモニアは水素と並び、日本がかねてから主導権をもって進めてきた分野であるため、我が国の強みに変えていきたいという方針のようです。
アンモニアを使う上での技術的な課題としては、
・副生するNOx排出抑制
・アンモニア生成過程で発生するCO2の取り扱い
CO + H2O -> CO2 + H2、H2 + (1/3) N2 -> (2/3) NH3
・その他
(IHI横浜事業所)
長い目で見れば、大量のアンモニアをどこから調達してくるのかという需給の問題が指摘されています。日本でアンモニア混焼を横展開する場合、アンモニアが年間1,500~2,000万トン必要だといわれています。日本国内でのアンモニアは、年産100万トン程度ですので、その10倍以上ものアンモニアをどこから持ってくるのかという点です。
アンモニアの用途は色々ありますが、世界的には、肥料/尿素肥料の原料としての用途が最大となっています。肥料は食糧問題につながるため、大量のアンモニアをエネルギー用途に振り向けることは難しいと考えられます。
そこで、どこから調達するのかという問題が浮上してきます。技術的な課題の他に、世界的な新しいアンモニアの位置づけを確立しておくことが不可欠です。いずれにせよ、アンモニア混焼事業は緒に就いたばかりなので、これからが頑張りどころではないでしょうか?
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