ウクライナ情勢とESG投資

最近、日本のメディアでは SDGsを取り上げテレビや新聞でSDGsの特集を行っていますね。その関係で、投資家もESG投資なるものにも関心を示しているようです。ESG、即ち、E:環境、S:社会、G:企業統治の面から企業を査定・評価して、企業活動を適正なものにしようという考え方がその根底にあります。

「企業が暴走しないよう企業の社会的な責任を問う」、そうした動きは、 昔からあることです。特に、環境に配慮した経営を行っている企業を中心に投資する投資信託というものが始まったのは、1990年代の後半まで遡ります。欧米で設定されたものが日本に導入され、日本で初めてのエコファンドが「日興エコファンド」でした。

環境問題に積極的に取り組んでいるなどの観点から、収益率や成長性など、従来の投資尺度にかかわらず、環境に配慮した製品を製造しているという基準で投資先を選んで投資している点が特徴です。広義には、社会責任(SRI:Socially Responsible Investment)投資に含まれます。

さて、ロシアのウクライナ侵攻との兼ね合いで、ブルームバーグは、ESGを次のように報じています。

・人類と地球の保護を目的としたはずのESG投資が、ウクライナに侵攻したロシアの独裁政権に資金を提供する形となっている現状が露呈している。「ESG」を冠した複数のファンドが、ロシア国営エネルギー大手ガスプロムやロスネフチ、同国の銀行最大手ズベルバンクの株式を保有している。 これらのファンドはロシア国債も保有しており、最終的にプーチン大統領の独裁政治の財源となる資金を提供している。

ESGについては、色々なコメントが出されています。
・ESGは効果的に利用されていない。投資家は企業のリスクだけでなく、システム全体のリスクを見極めるべきだが、実際には「楽な金もうけへの執着が全てに優先されている

・ウクライナの事案はこれまでで最も重要なESG案件の一つだ。これはエネルギーや人権、そして、われわれが民主主義の世界に生きたいのかという問いにとって、極めて重要な問題だ。

・ESGは環境、社会、企業統治に関連するリスクから投資資金を守るためのスクリーニングツールにすぎないというのが実態だ。

・いまだにサステナビリティーと倫理を混同している人々がいる。サステナブル・ファンドやESGファンドは道徳ファンドと同じではない

・今こそESG投資家にとって見直しの時期だ。われわれはロシア政府と、ロシア政府に関連する全ての企業に対してどう行動するかを決めなければならない。他の独裁政権に対しても、どうするかを決めねばならない。ロシアだけではなく中国の資産も同じだ。

・投資家として、企業そのものだけではなくその企業が事業活動を行う環境にも目配せしなければならない。中国にはESGのいかなる観点から見ても投資はできない。書類へのサインだけで北京の官僚が特定のセクターを全て消し去ることも可能だからだ。

ESG分野の先駆者の一人であるクレメンズハント氏は「独裁政治や横暴な政府というものの存在を織り込まないのであれば、すでにESGは失敗している」と指摘したということです。

別の報道では、EUのエネルギー危機、ウクライナ侵攻などの影響を受けて、天然ガス価格が高騰、副次的に石炭価格も上昇している。それを受けて、ESG投資の対象も石炭業界、事業者にシフト、つまりお金の流れが変わっているというのです。

石炭はパリ協定以降の脱炭素運動運動を受け近年逆風状態にあり、融資もしない、石炭火力設備等は座礁資産などと言われていました。それが、石炭需要が増大した石炭価格が上昇したという環境変化を受け、資金が回るようになったという事です。結局は、ビジネスだということでしょう。コメントの一つに、ESGは、「金もうけへの執着が全てに優先されている」ということです。お金儲けが目的ESGはその手段だと言っているようなものです。

ESGは空想的xx主義を実体化させるツールのようなものですから、そうなっても不思議ではないように思いますね。一方で、SDGsはどうなんでしょうか?

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