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13月の残火

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2020年、2021年、2022年、詩作品
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2020年12月の記事一覧

没後二百年、慕情、他 【詩作4編】

  没後二百年 死にたい、 そうつぶやいたきみは、夜と同期する、 きみが眠っている間、深く深く眠っている間、 薬を飲んで眠る間、夢を見ている間、 きみは夜と同期するよ、 きみの情報は夜に流れて、 夜の静けさもきみに流れた、 きみは夜のことを知っていたし、 夜もまた、きみのことを知っていた。 人は死んだら夜と同化する、 だからきみが死にたいと思っても、 (思っていなくても) きみはいずれ夜と同化して、 僅かな光の美しさを教えてくれる、 ぼくはその一瞬の光を、静かに待っている。

海月、黒花斉唱、他 【詩作4編】

  海月 きみは前世に宇宙から飛び降りた星だった、 だから今のきみは太陽を目指して外に出て、 海を見たり花の匂いをかいだりご飯を食べて、 死んだときはまた、星に帰っていく、 たくさんの光を蓄えた、星になる。 五百億光年、 その先を目指す物語の途中のわたし達だから、 過去と同じだけの今があって、 今と同じだけの未来があった、 歴史は一粒一粒の雨になって、 雲の上で子供みたいに跳ねていた。 今さらきみに与えるものはないけれど、 きみに求めるものもないことが、 愛なのか、恋なの