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色のない夏

感傷にくちづける七月のこと
夏の香りを吸って吐いたジムノペディ
ノスタルジアが膨大な雲を食べて
わたしの胸にちいさくちいさく溶けてゆく
小鳥の眠りのようにちいさくちいさく

近いようで遠い雲が
突然アスファルトを濡らすと
生きている者の匂いがして
空からやさしい亡霊が
雲の上から見下ろしている
そんなまなざしを感じる

伏し目がちな夏の木蔭に咲く花は白くて
麦わら帽子が静寂の声に誘われて
ふわふわと話しかけてくる
その時の時間は止まってみえる
蝉しぐれにかき消された
空白の余韻がずっと居座っている

ああ夏なんだ
こんなにもわびしい夏は
薄化粧ものぼせた月の光りに
食べられてしまうから
汗がしたたるうちに
あなたへ手紙を書こうと思う

本当は色のない夏なんだ
どこまでも透明で
なにも鮮やかではない
そんな夏がちゃんとあって
本当によかった

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