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ある日の会話(24.9.13)


話し声が近くに聞こえて夢現からゆっくりとそちらに意識を向けていく。
聞こえるのはマスターと少年の声。
カウンターテーブルに突っ伏したまま重い瞼を薄く開いて声の方に焦点を合わせていると目の前が突然真っ暗になった。

「あっこら、ハワード…!寝てるヒトのジャマしちゃダメだぞ」

慌てたような少年の声とそれに返事をするような猫の鳴き声がして再び目の前が明るくなる。僕はゆっくりと瞬きをして呼吸を始めるとテーブルから体を起こし、肘をついて重たい頭を抱えて覚醒を待った。

「…ごめんなさい、起こしましたか?」

夢から覚めきらず回転の追いつかない頭で声の方を眺める。黒っぽい猫を抱いた金髪の少年が申し訳なさそうにこちらを見ていた。

「…だいじょうぶ……おきるところだった…」

僕は気にするなと手を振ってから視線をテーブルに戻しスマホの時計を見た。1時間半程眠っていただろうか…

深く呼吸をして脳に酸素を送り込んだ。
…が、駄目だ、うまく覚めない。
どろどろとした感覚に飲まれたままもう一度少年と猫を見る。
顔を合わせて「めっ」と叱った少年の鼻をハワードと呼ばれた猫が舐めて少年はくすくすと笑い出した。微笑ましいな、と思う。

…ああ、君たちはまた逢えたんだね。

カウンターにアイスコーヒーが置かれ、それを引き寄せストローを曲げて口をつける。冷たくほろ苦いブラックコーヒーが食道に流れ込み胃に沁みていく。

僕は暫くそうして少年と猫を眺めていた。




他愛もない今日のひととき

2024/09/13の記録




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