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よる
2022年3月25日 01:18
突起を押すと、懐かしいチャイム音が鳴った。のそのそと迫り来る気配を感じて、無機質な音が立つと、内側から無邪気な顔が現れた。「いらっしゃい」 私はまだ熱をもった土産を片手にぶら下げながら、扉の向こうに滑り込んだ。 祖母は、”綺麗好き”という言葉から最も疎遠な人だった。汚いのが好きというわけでもないけれど、労力を費やしてまで生活環境をきれいに整えようとすることは一切なかった。だからいつも、床は