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よる
2020年8月8日 03:06
「わたし、結婚するんだ」 言葉は行くあてを失った。その辺に漂っては、今も還る場所を探している。それはそのうちに部屋の隅に吸い込まれた。僕はやっと彼女に視線を移すことができた。 けっこん、するって。 声にならなかった。あまりに唐突すぎた。いや、いつかこんな日が来るとは思っていた。でもそれは今日じゃない。今日じゃないと、彼女に顔を合わせるたびに僕は心の中で願った。甘んじていた。この状況が、ずっ