夜だけが見ていた

夢じゃないかと　不安な私に
おどけてみせる　あなたを憎めない
海を見下ろす　部屋で二人は
昔の愛を　抱き寄せ懐かしむ
　　吐息も汗も　変わらないけど
　　失ったものが　多すぎて
あの頃の二人を　夜だけが見ていた
甘すぎる痛みを　無意識に刻んだ

昔のままに　はしゃいだあなたは
あどけない眼で　私を悩ませる
休むことなく　部屋で二人は
無邪気さの罪　再び重ね合う
　　匂いも音も　変わらないけど
　　過ぎ去った日々に　還れない
若かった二人を　夜だけが見ていた
幻と嘘とを　繰り返し刻んだ

　　都会も空も　変わらないけど
　　煌めく星が　知らないふりをする
あの頃の二人を　夜だけが見ていた
甘すぎる痛みを　無意識に刻んだ
今ここで二人を　夜だけが見ている
過ちと知りつつ　この刹那　刻んで