道草植物図鑑No.22「アメリカネナシカズラ」
昨年12月、厚着の散歩は少し汗ばむくらい暖かい冬日和のある日。
のんびり河原を散策していました。
すると、視界の端になにやら見慣れぬものが。
ふと目をやると、一面に広がるオレンジ色!
なんじゃこりゃ!
ちょっとぎょっとしてしまう光景です...。
ビニールのヒモみたいなものがヨモギを締め上げています。
ぱっと見、人工物かと思うような
艶のある鮮やかなヒモですが、
近づいてみると可愛いお花が咲いています。
ヒモの部分の仰々しさとは対照的な、可憐で可愛い花!純白の花束のよう。
この植物の名前は「アメリカネナシカズラ」。
アサガオなどと同じヒルガオ科の植物ですが、
およそ植物だとは思えない造形をしています。
なんと、この植物は根っこも葉っぱも持ちません。
生きるために必要な栄養を全て他の植物に頼る、寄生植物です。
発芽後すぐは根っこがあるそうですが、寄生する植物を見つけると巻きついて根っこは枯れてしまうそうです。
巻きついているところを拡大してみると、
ぽこぽこしたコブがてきています。
根っこの代わりに、このコブのような「寄生根」が植物に食い込んで栄養分を吸い取ってしまうのだそう。
栄養が吸い尽くされたのか、
茶色く枯れ上がるヨモギさんと、
元気いっぱいたくさんの実をならすアメリカネナシカズラさん。
ヨモギさんが少し不憫な気もしますが、
寄生でこんなにもたくさんの実ができるんだ!驚き!
そして、完全に枯れてしまったヨモギさんと熟したアメリカネナシカズラさんの実。
この実から、種が落ちてまた次世代のアメリカネナシカズラさんが生まれます。
ちなみに、在来植物や農作物の生育阻害の懸念があるため、外来生物法で「要注意種」※に指定されているそうです。
絡みつくためのツルと、栄養を摂取するための小さなコブ。
そのシンプルな、無駄を削ぎ落とし過ぎでは?な構造で、たくさんの実をつくる。
惚れ惚れするくらいに潔い。
もしこんなことがあったらどうしようなんて考えて、持ち物がついつい増え過ぎてしまう。
人に迷惑かけてはダメだ!と身構え過ぎて、思考が複雑になってしまう。
確かに、全てを周りに頼りきりすぎるのはちょっとリスキーで怖い生き方ですし、
周りの大切な人たちを枯れ果てさせるような生き方はしたくないですが...
もっとシンプルに、潔く、周りに頼ることだって悪くないかもと思わされる生存戦略です。
アメリカネナシカズラ
Cuscuta pentagona
ヒルガオ科ネナシカズラ属
北アメリカ原産
花時期 : 7月〜10月
生育地 : 海岸、河原、荒地など
出典 : 身近な雑草の愉快な生き方/稲垣栄洋・
三上修
誰かに話したくなる雑草のふしぎ/森昭彦
街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本/岩槻秀明
雑草・野草の暮らしがわかる図鑑/
岩槻秀明
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