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道草植物図鑑No.13「セイバンモロコシ」
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大空に向かってすくっと伸びた、存在感のある草姿。
赤みを帯びた花も空の青によく映え、綺麗で目を惹きます。
名前は「セイバンモロコシ」
イネ科の多年草です。
私は植物のことを勉強するまで、イネ科の植物は全て「イネ科」というざっくりした認識でした。
実際には驚くほど種類が多いのです。
さらに、至極当たり前のことなのですが、
イネ科にも「花」があることは私にとってとても新鮮な発見でした。
「花=可憐な花びら」という無意識の思い込みですね。
イネ科の植物は至る所にたくさん生えていて、
毎日絶対目にしているはずなのに、意外と種類を知らないし、見分けるのも難しい!
そんな中で、セイバンモロコシはぱっと見て分かりやすいイネ科植物だと思います。
少し背伸びして手を伸ばし、セイバンモロコシの花に触れてみます。
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下にぶら下がっているのが雄蕊
上の方に見えている、わしゃわしゃしたのが雌蕊です。
イネ科にはいわゆる、花びらという器官はありません。
目立つ必要がないからです。
植物の多くは「虫媒花」といって、昆虫などの虫に花粉を運んでもらいます。
虫媒花は目立つ花弁や美味しい蜜を作って、花粉を運んでくれる虫たちを誘き寄せようとします。
一方でセイバンモロコシなどのイネ科は、「風媒花」といって、花粉を風で飛ばして運びます。
だから、虫を誘き寄せるための目立つ花弁はいりません。美味しい蜜を作る必要もありません。
受粉の効率は悪いようですが、とても省エネです。
花粉症の人にとってはつらい話ですが。
さて、セイバンモロコシが風媒花という話を踏まえてもう一度雄蕊と雌蕊を見てみます。
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雄蕊はぶらぶらと風で揺れて、花粉を飛ばしやすそうな格好。
雌蕊はわしゃわしゃしていて、飛んできた花粉をキャッチしやすそうな格好ですね!
うまくできてる!面白い!
ちなみに、セイバンモロコシの葉や実には青酸化合物が含まれており、食べることはできないそうです。
さらに、これを書くにあたり図鑑を読んでいて初めて知ったことがあります。
セイバンモロコシには花に「芒」と呼ばれる毛のあるものと、ないものがいるそうです!
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芒のないタイプは、ヒメモロコシもしくはノナギセイバンモロコシと呼ばれているそうです。
また、花の色も濃い赤と薄い赤がいるのですが、これは個体の差なのか、生活史による色の変化なのか、どちらなのでしょう?
詳しい人がいましたら、教えてください!
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セイバンモロコシ
Sorghum halepense
イネ科モロコシ属
地中海沿岸原産多年草
花時期 : 7月〜10月
生育地 : 荒地や道端など、日当たりの良い場所
出典 : 街でよく見かける雑草や野草がよーく
わかる本/岩槻秀明
イネ科ハンドブック/
木場英久・茨木靖・勝山輝男
美しき小さな雑草の花図鑑/
多田多恵子・大作晃一