道草植物図鑑No.23「ヒメオドリコソウ」
テレビのニュースで、全国の学校の卒業式を目にするようになりました。
もう、春ですね🌸
こういうイベントごとがないと、
季節の節目をうっかり素通りしてしまいそうになります。
どこかの見知らぬ学生さんの節目に便乗して、
新しい季節を胸を張って、闊歩していきたい所存。
とりあえず春の草花たちを愛でに行かなければ...!
と近くの公園をお散歩しました。
地べたにしゃがみこんで必死にカメラを向ける
不審な人間に、
「綺麗な花、咲いてるねんな!」
と声をかけてくれる優しいおばあちゃん...!
「名前は全然分からんけど、綺麗な花いっぱい咲いてるな!」と。
「ヒメオドリコソウって言うんですよ、綺麗ですよね!」
と名前をお伝えすると、
「え〜、名前も可愛いわ!いいこと聞いた、ありがとう!」
颯爽と笑顔で去っていきました。
好きなものを、褒められると嬉しい。
やったー!ありがたやー!
おばあちゃんとの出会いのきっかけ
「ヒメオドリコソウ」
ヨーロッパ原産のシソ科植物です。
ほんのり色づいたふわふわの葉が、
フレアスカートのよう。
名前の由来は、在来のシソ科植物「オドリコソウ」に似ていて、オドリコソウより小さいからです。
生き物の名前で「ヒメ」とついていれば、それは大体「小さい」ことを意味します。
さらに花を拡大してみると、小さなハート型♡
そして何やら濃いピンク色の模様があります。
この模様は花粉を運ぶ昆虫たちに、蜜のありかを伝える看板のような役割を持っています。
さらに、お花の中によーく目を凝らすと
赤いラインが入っていますね!
これは「ガイドライン」といって、この先蜜がありますという道標になっています。
至れり尽くせりの看板と標識ですね。
ちなみにオオイヌノフグリの花弁の模様も、ガイドラインです。
またお花を真横から見ると、なんとも不思議な形をしていることが分かります。
このお花は唇形花(しんけいか)と呼ばれ、シソ科植物の特徴の1つです。
花弁が上と下に分かれていて、
唇のような形をしているのでそう呼ばれています。
上の部分を上唇(じょうしん)、下の部分を下唇(かしん)といいます。
さて、どうしてこんな不思議な形をしているのでしょうか?
謎を解明すべくお花を観察していると、ガイドラインにおびき寄せられたハナバチさんがやってきました!
花の奥の蜜を一生懸命に吸っていますね。
めっちゃ可愛い。
一生懸命なあまり、頭で上唇を押し上げています!
ためしに下から煽ってお花を見てみると、上唇に雄蕊がありました!
つまり、ハナバチさんは下唇の模様に引き寄せられて花を訪れ、
一生懸命に蜜を吸おうとして、
上唇の裏にある雄蕊に頭を擦り付けて花粉をくっつけ、
また別のヒメオドリコソウの蜜を吸おうとして、同じく上唇の裏にある雌蕊に花粉を運んでいる。
ということでしょうか?
手元にある本などで調べてみたのですが、直接的なヒメオドリコソウについての記載が見つかりませんでした。
代わりに、ヒメオドリコソウとよく似たお花
「ホトケノザ」に関しては記載がありました。
ホトケノザも同じくシソ科植物で唇形花をもち、
下唇はガイドライン兼、昆虫の着陸場所としての機能を持つようです。
そしてハナバチがその細長い花の奥の蜜を吸おうと花の中へ潜っていくと、
上唇にある雄蕊の花粉が背中にくっついて、
花粉が運ばれていくのだそうです。
恐らくヒメオドリコソウも、同じようにハナバチに花粉を運んでもらっているんじゃないかと思うのですが...。
外来種なのであまり調べられていないのかもしれません。
何かわかる人いらっしゃったら教えてください!
よろしくお願いいたします。
またヒメオドリコソウの種子には、「エライオソーム」という脂肪の塊がくっついています。
この脂肪をアリさんがご飯として運ぶので、
一緒に種も遠くに運ばれていくのです。
自分自身はその場から動けない分、
周りのよく動く者たちの手を上手に借りながら
分布を拡大している賢い植物なのです。
春は別れの季節であると同時に、
新しい出会いの季節。
慣れないことや上手くいかないことがあっても、
お互い手を貸し合いながらみんなで頑張っていきましょう!
ヒメオドリコソウ
Lamium purpureum
シソ科オドリコソウ属
ヨーロッパ原産
花時期 : 3月〜10月
生育地 : 路傍、空き地など
出典 : 身近な雑草の愉快な生き方/稲垣栄洋・
三上修
散歩が楽しくなる雑草手帳/稲垣栄洋
街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本/岩槻秀明
雑草・野草の暮らしがわかる図鑑/
岩槻秀明
美しき小さな雑草の花図鑑/多田多恵子・大作晃一