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本の感想「ことばの食卓」

「ことばの食卓」
武田百合子 画•野中ユリ
1991年8月22日 第1刷発行
2010年2月5日  第15刷発行
ちくま文庫

武田泰淳の妻で「富士日記」が有名
という事は知っていたが、読んだ事はなかった。

面白くて一気に読んだ。
「枇杷」は著者があとがきでもっとも愛着があると言っているが、果物嫌いの夫が、枇杷をめずらしく食べる描写と、それが思い出で、夫のその手と指を思い出す。
「牛乳」は子どもの時の思い出だが、ちょっと怖い。怪しい牛乳屋さんが出て来るし。
「キャラメル」
「お弁当」
「雛祭りの頃」
「怖いこと」
も子どもの時。小学校時代の夏休みの出来事や、友達の家へ遊びに行ったり、育ててくれたおばあさんとの思い出も。
無邪気な感じではなくてちょっと怖い。
「続牛乳」は戦争の色が濃い。「キャラメル」も兵隊さんが出て来る。

「誠実亭」 は鰻屋でアルバイトをした話。自分で申し出て、店で飼っている大きい犬の散歩までする。
「夏の終り」「京都の秋」「後楽園元旦」は成人した娘と出かけた話。
「上野の桜」はお花見の様子を観察している。
食べ物はいっぱい出て来る。食べ物の描写が匂いまでして来るようだ。
良い匂いだけではなく悪い匂いも。

幻想的でコワイ話。



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