#わたしをかたちづくったもの 5歳児の情報源

娘のオムツが外れて2年。彼女にとってトイレは、すっかり落ち着く場所になったように思う。私たち大人と同様に。

と、その理由を書くまえに、トイレのインテリア(?)についてすこし話をしたい。

たとえば、私の実家のトイレのインテリアは壁にぶら下がった「週めくりカレンダー」だ。
カレンダーには、1週間にひとつ “四字熟語” が書かれており、週の終わりには “今週の四字熟語” が、うっすら脳内にインプットされていることに気づく。
年によって “四字熟語” は “ことわざ” や “名言” にマイナーチェンジするので、年初めの帰省は「ああ、今年は “故事成語” なのね」と、私はトイレタイムがすこし楽しみ。

友人・知人宅でトイレをお借りするとき、無造作に置かれている本に思いがけず心を奪われてしまうこともある。
私がとく印象に残っている本は、「ご当地マンホール写真集」と「いばらぎじゃなくていばらき」。

トイレの掲示物や置き本には、住人の趣味嗜好が垣間見えておもしろいのだ。

しかし、残念なことにスマホの普及とともに、知識や雑学をぎゅうぎゅうに詰め込んだトイレは姿を消してしまった(私調べ)。わが家のトイレからも、「よつばと!」や「夢をかなえるゾウ」が撤去されてすでに5年以上がたった。
まあ、幼児のいる家庭では安全上トイレに何も置かないほうがよいのだけれど。

そんなトイレのインテリア(?)だが、平成から令和にかわる節目のこの年、わが家のトイレにひとつの変化がおきた。

これまでシンプルを貫いてきたこのスペースに、1枚のポスターを貼ることにしたのだ。

まずは実物を見て欲しい。

こちら、ビックカメラオリジナルの大判カレンダー(無料配布)。

初見の私の感想は「……でっか!」だけれど、その巨大さが写真から伝わるとうれしい。

もちろん大きいだけではない。その情報量は圧巻で、作成者の狂気すら感じる。

まず目にとまるのは、中央に配置されたどでかい日本地図。

ポスター右端には、ご親切にも「世界主要都市の緯度」まで書いてある。
用を足しながら「知床はウラジオストクよりも北に位置するのか……」と知らない土地に思いを馳せることだってできる。

また、日本主要都市の脇にはそっと「路線図」も添えられている。

「それにしても、なんで "浜松" や "新潟" の路線図があって "仙台" がないのかな?」

気になって夫に聞いてみると、

「あれって、ビックカメラがある場所の路線図だよね」

……なるほど。

情報を余すところなく詰め込んだと思っていたこのポスターにすこし人間味を感じて、いっそう可愛く思えてくるので不思議。

(世界文化遺産の場所も教えてくれるよ)

つぎに、こだわりのカレンダー部分も眺めてみたい。

当たり前のように、月には「英語」「和名」の両方が表記されている。和名には由来まであった。なんて丁寧!

日にちの小さな欄に目を凝らすと、「六曜」や「旧暦」から「月の満ち欠け」まで書かれている。なんて几帳面!

(当然のごとく、六曜の由来も記載)

と、このポスターについて語りたいのはやまやまだけど、このあたりでいったん切り上げて5歳児のトイレ事情に話を戻したい。

「9がつのえいごは?ってきいて」

そう言い出したのは、まだ娘が4歳だったほんの2か月前のこと。

ご要望のとおり「9月の英語は?」と聞くと、娘は「セプテンバアー」と誇らしげに答える。えーすごいじゃない。保育園で教わったの?と尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。

「え?トイレに書いてあったよ」

……うそでしょ。

急いでカレンダーを確認すると、“September” のうえに “セプテンバー” のルビ。まさか、これを読んで覚えたの??

「わたし、1月から12月までぜんぶ英語わかるよ」と娘が言うので、試しに暗唱してもらったところ、「ジャニュアリー、フェブラリー、マーチ・・・」とつっかえることなく口にする。そういえば、最近トイレから出てこないなあと思っていたけれど、これ、覚えていたの??

ほかにも、娘は私にいろいろと教えてくれた。

「お月見って満月じゃないの?」

そう言われると確かに!
お月見は旧暦の8月15日。今年は9月13日と「満月」に一歩届かず。

「なんで、赤い日や白い日があるの」

白い日は、今年だけのとくべつな祝日だよ。

「とうきょうってどこ?」

ここだよ。住んでいる場所に、マジックで印をつけておこうね。

娘が、日本語を発するようになって4年。
言語によるコミュニケーションが取れるようになって3年、オムツが外れて2年、ひらがなを習得して数か月。
いまの娘にとって「トイレ」はこわい場所ではなく、すっかり落ち着く場所になったように思う。

いつの間にか「トイレ」は、彼女の祖母と同様に知識を取り入れる場所、彼女の母と同様に知らない情報に興味をそそられる場所になっていたのだ。

私はこのポスターを眺めるたび、娘の成長に目を細める。

そう、いつも用を足しながら。

さいごに今年も残すところ4分の1なので、そろそろ年末の話をしてもよいでしょうか。

では、

「ビックカメラさん!来年もこちらのカレンダーの配布を、何卒、どうぞよろしくお願いいたします!!」

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今回のnoteは、あきらとさんの企画「 #わたしをかたちづくったもの 」に参加しています。

といっても、お題の「わたし」ではなく「わたしの娘」になってしまいました。スミマセン……。大目に見てもらえると幸いです。

娘にとってこのポスターは、人生の20パーセントの期間、毎日のように眺めているもの。大げさではなく、「いまの娘をかたちづくっているたいせつな一片」なので。

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