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アドラーは子育て中の孤独の処方箋

「NHK『100分で名著』ブックス アドラー 人生の意味の心理学」(岸見 一郎 著)が、子育て中の孤独感に対する、よい考え方を教えてくれたので書き記したい。

私は育休に入ってから孤独を感じることが度々あった。
しかしそれは必然ではなく、私の心の持ちよう、すなわち「承認欲求」と「『生産性に価値がある』という価値観」によるものなのかもしれないと、この本は教えてくれる。


処方箋1.承認欲求からの脱却

承認欲求があると様々な問題が生じてきます。他者からほめられたり注目されないと、「なぜ自分は認めてもらえないのだ」と憤慨したり、「せっかくやったのにほめられないのなら二度とやらない」と考えるようになってしまうのです。
(中略)
他者にほめられたい、承認されたいという人は多いですが、承認されなくても何かをしなければならない場面は人生の中には多々あります。

「NHK『100分で名著』ブックス アドラー 人生の意味の心理学」

この「承認されなくても何かをしなければならない場面」の例として、筆者は育児や介護を挙げている。(筆者自身、育児や父親の介護を主体で行なった経験がある。)育児中、子どもから「(育児をしてくれて)ありがとう」なんて言葉をかけられることは期待できないからだ。

私だって、子どもから感謝されることなんて期待してはいけないと思っている。
しかし、子どもの代わりに夫に、私への感謝や褒め言葉を期待してしまっていた。
仕事だったら成果に対して周囲からの評価や報酬といった分かりやすい見返りがあったが、育児ではそれがないというのが辛かったのだ。

だがそれは健全ではなかったのかもしれない。
そういった「私をほめて」「認めて」という承認欲求を相手にぶつけることは、相手にとって負担になりかねない。

ではどうしたら良いのか?
本書はこう言う。
(※本文は介護の例をとっているので、親=こどもと読み替えていただきたい。)

介護も育児も「ありがとう」という言葉を期待するのをやめればいいのです。
感謝されようがされまいが、親に貢献できていると感じられれば、それでいいのです。
「ありがとう」を期待するのではなく、逆に、今日も一日、親と一緒に過ごせたことに対して「ありがとう」と思えればそれで十分なので、親から感謝されなければ満足できないというのはおかしいでしょう。

承認欲求が行動原理にあると、どれだけ与えてもらえるかに注目してしまうが、
人生は「ギブ&ギブ」と割り切って貢献感を持てるようになれば、承認欲求は消えるという。しかしそんな聖人のような考え方、私にできるだろうか?

そんな疑問を持つ私のような読者のために、本書は承認欲求から脱却するための方法として以下の3つを提示している。

  1. 他者に関心を持つこと。

  2. 他者は自分の期待を満たすために生きているのではない(と同時に自分も他者の期待を満たすために生きているわけでないない)ことを知ること。

  3. 課題の分離

詳細は省くが、2が特に自分には刺さった。
常に家族の都合優先で生きている母を見て育ち、その姿に反発を覚えながらも結局自分自身も誰にも文句を言われないようにと優等生ルートを辿ってきた私には、耳が痛い。

他者のためではない、自分のための自分の人生を生きていけば、承認欲求に振り回される必要がなくなるのだ。

処方箋2.生産性に価値がある、という価値観からの脱却

働く人もそうでない人も、誰もが生きているという点では同じであり、何もしていなくても、生きていることで他者に貢献しています。そう感じられる時、誰もが自分に価値があると感じることができます。
(中略)
働かないというのは、外で働かないという意味で、家で家事、子育て、介護などをしている人が働いていないわけではありません。
(中略)
マンションの一室から街のネオンを見て、結婚前の楽しみを今や経験できず、若くして結婚したことを悔やむ女性、また、出産、育児のために男性のように外で働けないことを残念に思っている女性も、生産性だけに価値を見出しているということになります。

はい、そう思っていました。

お金を稼ぐような仕事をしていないことや、赤ちゃんと1日過ごして、生産性のある会話を全くしていないこと、そんな毎日が続いていることに不安を覚え、早く職場復帰したいとさえ思っている私、またもや耳が痛い。

分かりやすい成果がないものだから、「私今日、何をしていたんだろう?」と不意に自己嫌悪になり、自信喪失につながっていく感覚。
育児、特にワンオべ育児をしている人なら分かってもらえるのではないだろうか。

しかし、それは生産性に重きを置くという自分の価値観によるもので、自分で自分を苦しめていたというのだ!
そして、生産性という尺度に依存せずに生きている充実感を持つには、「今ここ」を生きることが大切だという。
そのための方法が以下の3つだ。

  1. 人からどう思われるかを気にしない。(=他人の評価に依存しない)

  2. 自分や他者について理想を見ない。(=どんな自分であっても、この自分を受け入れ、理想から引き算してはいけない)

  3. 何かが実現すれば、その時初めて本当の人生が始まると考えると考えない。(=何かの実現を待たなくても、「今ここ」で本当の人生は始まっている)

3番目は私は昔からよくやる考え方であった。
「中学から卒業するまで我慢」「一人暮らしするまで我慢」「本社に行くまで我慢」などと、目の前の区切りの時期を見つけては、それまでの期間の辛抱と割り切って、ごまかしながら過ごし、将来のことや家族との関係、仕事への向き合い方など、大事なことと向き合うことから避けてきたようだ。

例えば仕事から離れて子育てをしている今が現実なのであり、決して仕事に復帰する前の時間が仮ではないということです。


「自分の人生を生きること」
そして
「『今ここ』を生きること」

これができれば、育児いかんに関わらず、人生を生き抜く上での最強のメンタルを手に入れられるのではないだろうか。


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